いま、そこにある危機は靴下

数年前の話。食料品店で買物を終えた後、左肩に引っ掛けていたリュックを背負おうとして、もう片方の紐を右手で探っていると、ない、ない、紐がない。右手をいったりきたり動かしてみたものの、手に紐が触れてこない。そう、もはや五十肩。多分、探していた紐の位置から右側にずれて、右手をブラブラさせていたに違いない。


何故かこの時はなかなか紐に手が触れなくて、ちょっとちょっと、どこへいったんだ紐!! もしや、右側の紐を左肩に引っ掛けていたりなんかして〜、などと考えたその時、いきなり手の平に紐が入ってきた。なんていうか、手の中に紐が飛び込んできた感じ。うっそ、紐から私の方にやってきた!! 超能力者だったのか、私!! しかもかなりショボイ能力系の!!


後ろを振り返ると、見知らぬおじさんが、無言で私の右手に紐を手渡してくれていた。アンタ誰!? 驚いたんですけど!! コワイんですけど!! 背筋がゾゾッとしたんですけどー!!


オジさんは使用済のカゴを集めて回っている係の人だった。あまりに私がモタモタしていたのか、見るに見かねて手伝ってくれたと思われる。分かんないけど。いやー、ビックリした。このオジさんは、紐を右手に持たせてくれた上に、リュックを背負わせてくれた。


そして、昨夜。ちょっと急いでいてリビングを走り抜けようとして、と、言っても家は狭いのでほんの3歩くらいの距離なんだけど、2歩目を踏み出した瞬間、靴下のかかとが滑ってツッルー!! 人生が走馬灯のように流れて見える間もなく、右肩から床に落っこちた。


「いっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいんですけどー!! 」


年寄りが自宅で転んで骨折するというのが良く分かりました。私が自宅内で派手に転んだのは、これで3度目。いい加減、骨を折るぞ。右肩から右肩甲骨の辺りまでモーレツに痛い。肩、上がんないんですけど!! 風呂で髪の毛を洗うのに四苦八苦なんですけど!! リュックを背負うのに、右手が回らないんですけどー!!


というワケで、あの時、私にリュックを背負わせてくれたオジさん。コワイなんて思って悪かった。今、ふたたび介助の時がきたので、右手が上がらなくてリュックを背負うのに苦労している私を見かけたら、是非とも紐を持たせてやってください。あー、もう、ほんと肩痛い。