11月鑑賞の映画

『2012』 ★★★
地質学者のエイドリアン(キウェテル・イジョフォー) から、活発化した太陽フレアにより地殻変動が迫っているとの報告を受けた米国大統領(ダニー・グローヴァー) は、2009年のG8で各国のリーダーに人類救済極秘プロジェクトを立案。そして2012年。ロシア人実業家の雇われ運転手ジャクソン・カーティス(ジョン・キューザック)は、別れた妻と暮らす2人の子どもを連れて、イエローストーン国立公園を訪れる。しかし、元妻との思い出の湖は干上がっており、同居している元妻の彼氏を慕っている息子は心を開かない。その夜、政府の陰謀説を警告し続けているDJのチャーリー(ウディ・ハレルソン) から、「地球の滅亡が迫っており、政府は密かに“宇宙船”を造っている」と聞かされ一笑に付すジャクソンだったが、カリフォルニアの壊滅的な地震発生と時を同じくして、それを裏付ける話を聞き、元妻と子どもたちを連れて船がある場所を目指す…。


ニコラス・ケイジ主演『ノウイング』よりも現実的ではある「種の存続のための取捨選択」は、これじゃ人類のお先真っ暗だってのに、上から目線ってやつで完全放置。度肝を抜くインパクトを期待した“方舟”は全然フツーで肩透かし。上映時間は長いが感情移入する深みはないキャラクターがコロリと死に続け、主人公一家だけが人のふんどしでちゃっかり勝ち抜け。クライマックスの余計な惨事は主人公のゴリ押しのせいで、速攻死ぬと思ってたのに寝間着で大活躍した元妻の彼氏などお気の毒すぎる。


■『母なる証明』 ★★★★★
静かな田舎町の漢方薬店で働く母親(キム・ヘジャ) は、女手ひとつで育て上げた、子どものように純真無垢な息子(ウォンビン) と2人暮らし。ある日、女子高生の死体が町を見渡せる建物の屋上に晒される事件が発生。現場近くで見つかった名前の書かれたゴルフボールだけを証拠に、息子が容疑者として逮捕される。事件を解決させた無能な刑事や、精神病者として刑期を短くしようとする弁護士に業を煮やした母親は、自らの手で真犯人を探す決意をする…。


暗い感情の波打つ胸苦しさが余韻をひく濃密サスペンス。1つの答えは示されるものの、それが「真実」かどうかは、もはや誰にも分からない。畳み掛けるようなクライマックスまで緊張感が途切れず、浅はかで愚かな母親の孤独を前にして途方に暮れる秀作。


■『スペル』 ★★★★★
銀行のローンデスクで働くクリスティン(アリソン・ローマン) は、3度目のローン延長を求めるロマの老婆(ローナ・レイヴァー) の担当になる。自宅を失う老婆を気の毒に思い逡巡するが、昇進して資産家の彼氏(ジャスティン・ロング) の両親の心象を良くしたいクリスティンは申請を断った。その際の態度に激昂した老婆に呪文(スペル) を浴びせられたクリスティンは、導かれるように霊視者(ディリープ・ラオ) を訪れる。クリスティンには、3日間の悪夢の後に、魂を地獄へ引きづりこまれる呪いをかけられていたのだ。その日からクリスティンを恐ろしい怪現象が襲う…。


ロマの老婆を撥ねた巨漢の主人公が、呪いの一言でひたすら痩せていく恐怖を描いた、スティーヴン・キングの『痩せゆく男』と、7日後の死の謎を解くため奔走する『リング』を足して、ホラー史上最凶の逆恨みババアを盛り込んだ、恐さを素通りして爆笑必至の怪作。ババアの逆鱗に触れた「怒りのポイント 」の言いがかりの理不尽さは、これぞモンスターカスタマーの極み、モンスターシルバーの最前線といったところ。ちなみに、地獄の番犬ならぬ番獣より恐ろしいババアの執念が本作の面白さのほぼ全て。婆さんもこれだけの力があるならローンくらい何とかできるだろう。そして、銀行勤務のクリスティンも1万ドルくらい貯めておけ。驚かせ音が大きく耳が痛くなった。


■『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』 ★★★★★
2009年6月25日のマイケル・ジャクソンの突然の死により、幻となったロンドン公演“THIS IS IT”。その長時間に及ぶリハーサルを記録した映像を基に、クリエイティブ・パートナーを務めていたケニー・オルテガ自ら監督として幻の公演を再現する音楽ドキュメンタリー。


冒頭から半ベソかきながら鑑賞。もっと踊れないと思っていたし、もっと歌えないと思っていたけど、完成した本番はどんなに素晴らしいものだったのかと思いを馳せてしまう。


■『ムーンウォーカー』 ★★
世界征服をたくらみ、子どもたちを麻薬漬けにする計画を進める“ミスター・ビッグ”の存在を知ったマイケルが、子どもたちを守るために立ち上がる。マイケル・ジャクソン原案・製作総指揮・本人役で出演。


…って、そんな内容だったか!? という疑問は置いといて、絶頂期の眩いばかりの輝きを垣間見る事ができる、とんちんかんな編集と内容皆無のSFファンタジー。『THIS IS IT』の半券で千円になったので鑑賞。


■『ホワイトアウト』(PG-12) ★★★★
1957年、乗員同士の殺し合いによって旧ソ連の貨物機が南極へ墜落した。
現代の米国南極観測所アムンゼン・スコット基地。零下55度のこの地で働く唯一の連邦捜査官キャリー(ケイト・ベッキンセール) は、キャンプ地から離れた氷床で、装備もなく殺害されていた地質学者の捜査を開始。過酷な冬の到来で半年間の施設閉鎖を前に、帰国の最終便が3日後と迫る中、キャリーは操縦士のデルフィ(コロンバス・ショート)、国連調査員のロバート(ガブリエル・マクト) とともに氷の下に隠された貨物機を発見、何かが入っていた“6本の筒”が奪われている事を知るが…。


取りあえず、冒頭の貨物機の乗員のアホさに驚愕。アホだけで重要なモノを運ばせちゃいかん。で、『遊星からの物体X』みたいな、南極で地球外バケモノ系が、主人公は後回しにして襲いかかるB級パニックものかと思いきや、ポイントを押さえたリアル路線のサスペンスアクション。骨の髄まで凍り付くホワイトアウトの攻防など地味だけど面白い。これからはチョッキーン!! と響く乾いたハサミの音と、カラビナを見る度にこの映画を思い出す。ホントか。果たして、6本の筒の中身は? という最大の関心事は「それだけぇ〜?」と肩透かしで、これも現実的。雨中で闘うプレデタープレデリアンの如く、どっちがどっちだか分かんなくなるので防寒服をはっきり色分けして欲しいのと、黒幕の心情に寄り添う時間があればと思う。