1月の読書感想

■『アンドロメダ病原体』-The Andromeda Strain- マイクル・クライトン ハヤカワ文庫 1976年10月(1969年)★★★★★

米国の無人衛星が人口僅か48人のアリゾナ州ピードモンドへ落下した。極秘裡に着地点へ向かった回収チームが見たものは、通りで死に絶えている住人たちの姿だった。彼らとの交信が途絶え、ただちに地球外生物による汚染危機に対応するワイルドファイア・プロジェクトが発令。核爆発装置を備えた隔離研究施設へ、細菌学者、病理学者、微生物学者、ある理由で選ばれた外科医の4人が招集される。ピードモンドからは胃潰瘍を煩う老人と、赤ん坊の生存者2名が救出され、未知の病原体は、“アンドロメダ”と名付けられた。


うっそ読んでなかったの? というワケで、今更かよ!! シリーズ第一弾。極めて映像的な文章センスと、徹底した科学者目線、何のドラマも展開しない淡白なキャラクターが、ちんぷんかんぷんな専門用語の羅列の中でリアル感を生み、事態が収束するまでの緊迫の5日間に釘付けになる。恐ろしくめんどくさい検疫隔離手順が面白い。40年も経っているのに古さを感じないのは本当に凄い。ていうか、さっぱり進歩していない今にがっかりする。'71年公開の映画「アンドロメダ…」が、ここまで原作に忠実だったと知り驚いた。リドリー&トニー・スコット兄弟版「アンドロメダストレイン」は、やたらと人を殺して無駄に陰謀説に発展した愚リメイク。購入無用、図書館で。


■『復讐病棟』-Fatal- マイケル・パーマー ヴィレッジブックス 2006年10月(2002年)★★★

エスト・ヴァージニア州ベリンダでクリニックを営む内科医マットは、父親を炭坑の事故で、愛する妻を非常に珍しい癌で亡くして以来、地域経済の要である炭坑会社の化学物質の汚染を疑い、当局への通報を続けている。ある日、精神錯乱に陥った作業員によって炭坑で事故が発生、その作業員の顔には、1年前前に死んだ作業員とよく似た神経繊維腫があったのだ。炭坑、怪しすぎ!!


ボストンの検屍局で働くニッキは、人格が変貌し行方不明中に事故死した親友の葬儀のため、彼女の故郷ベリンダへ向かう。その帰路で暴漢に襲われたニッキは一命を取り留めるが、再び、病院から拉致されてしまう。ベリンダ、怪しすぎ!!


孫娘がワクチン接種の副作用と考えられる重い障害を負ってから、ワシントンD.C.を中心に活動する<ワクチン教育を主張する会>のボランティアをしている元理科教師エレンは、夫の再選を視野に入れた米国大統領夫人が推奨する、スーパーワクチン接種の義務化を前に強い疑念を持つ。大統領夫人、怪しすぎ!!


と、いうワケで、マイケル・パーマー10作目の本作は、最初から半分出来ていて完成図が見えているパズルのような分かりやすい展開。目新しいものではないけど、どどーんと風呂敷を広げて664pのボリュームを飽きさせない。とはいえ、優秀だが頑固な主人公と、2人の聡明でタフなヒロイン(ニッキとエレン婆ちゃん)以外のキャラクターが弱い。主人公たちが強運すぎて、敵役はボンクラばかり。ありえないドジを踏む残忍な殺し屋に頭を抱えたくなる。「復讐病棟」というトンチンカンな邦題は、内容とかけ離れていて意味不明。パーマーは自身の息子の障害も予防接種の副作用と考えているらしいが、現時点では先天的な脳障害というのが主流。購入無用、図書館で。


■『スロトレ』石井直方/谷本道哉 高橋書店 2008年9月 ★★★
食事制限や激しい運動で長続きしないダイエットではなく、短時間の簡単な動きで引き締まったカラダを手に入れるスロートレーニング法を紹介。


このテの本はどれもめんどくさくて、始める前からやる気をなくしてしまう私も、これだけでいいなら、と思えるコンパクトな内容が素晴らしい。なんたって、やるのは16ポーズだけ!! とはいえ、ちゃんとやるとなると結構キツイし、緩みきった身体には8ポーズくらいが精一杯で、手を抜きまくりで継続中。3日もやれば覚えられるので、購入無用、図書館で。


■『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』細谷功 東洋経済新報社 2007年12月 ★★★

地頭力(じあたまりょく)」の本質とは、結論から考える仮説思考力、全体から考えるフレームワーク思考力、単純に考える抽象化思考力をの3つの思考力である。インターネットで検索した内容をそのまま「コピー&ペースト」するコピペ族が増殖する現代に必要な、考える力を持った地頭力を鍛えるには、安易には算出困難な数値を算出する「フェルミ推定」が強力なツールとなると推奨する。


地頭力というものを理解するにはとても分かりやすく書かれてあるものの、各章のまとめを読むだけで充分な感じなので、購入無用、書店の立ち読みで。


■『スウェーデンで家具職人になる!』須藤生 早川書房 2008年5月 ★★
ドイツで生まれ2才で日本に帰国した著者は、パイプオルガン職人の父親の工房でものづくりを始め、最高の技術の習得を目指し25才でスウェーデンへ。カール・マルムステンが創立した工芸校「カペラゴーデン」と、「カール・マルムステンCTD(木工技術デザインセンター)」での課題や創作過程などを紹介しながら、スウェーデンの家具職人資格の取得までを綴る。


芸術的なスウェーデンの風景と、家族への愛情溢れる写真が素敵な著者のブログを2年くらい前から読んでいるが、この本は終始「です・ます・ました」調の、丁寧な作文のような言葉が続くため飽きてしまう。当たり障りのない内容は頭に入ってこない。もっと本音が聞きたい。購入無用、図書館で。


■『「できる人」は地図思考』吉田たかよし 日経BP社 2003年1月 ★
NHKアナウンサー、医師、衆議院議員の公設第一秘書として、3つの異なる分野を経験した著者が、右脳の働きを最大化する「地図思考」の実践法を説く。


既知の情報をくどくどと並べ、大雑把で、強引で、経歴と同じく脈略のない内容が全然面白くない。購入無用、図書館で。