1月鑑賞の映画感想

■『ソーシャル・ネットワーク』-The Social Network- ★★★★★


2003年秋、ハーバード大学の2年生マーク・ザッカーバーグ(ジェシー・アイゼンバーグ) は、ボストン大生の恋人エリカ(ルーニー・マーラ) に振られ、酔った勢いで短時間で作ったサイトにアクセスが殺到、一躍有名人となるが女子学生から総スカンを食らう。その実力に目を付けた資産家の息子でボート部のウィンクルボス兄弟から、ハーバード大生専用のコミュニティサイト製作の協力を求められたマークは引き受けるが、経済学部の友人エドゥアルド(アンドリュー・ガーフィールド) と2人だけで実行に移す。


マークの僅かな友人とともに大学の学生寮で始まったソーシャル・ネットワーキング・サービスFacebook」は、他校へと爆発的に拡大していく。しかし、ネット配信の革命児ショーン(ジャスティン・ティンバーレイク) と出会った事で、マークとエドゥアルドの関係は変化していく・・・。利用者が5億人に上る世界最大のSNSサイト「Facebook」誕生の裏側を描いた、創始者未公認(※)の物語。デヴィッド・フィンチャー監督、121分
(※)鑑賞した本人のコメントによると、服以外は全てフィクションとのこと。


冒頭、常識人エリカとの会話がまるで噛み合わないまま、他者の価値観を尊重しないマークのマシンガントークが炸裂。目に入った字幕を脳みそが処理する間もなく、一瞬で物語に引き込まれる。1を聞いて2から10まで休まず答えを出すマークの並外れた集中力が疾走し、急速に広がるFacebookを体感する高揚感が堪らない。自分の才能に正直な姿は、人と向き合わない不愉快な人間性を超越して惹き付ける。観客にはFacebookの最低限の情報だけ示して人間を描き、最後まで軽い興奮状態の緊張感が続く。


社会通念を意に介さずコミュニケーション下手なマークも、その才能に振り回されるエドゥアルドも、すっかり道化と化すウィンクルボス兄弟も、登場人物の誰もが本心を明かさない。誰にも肩入れしない映画のスタンスが、能力や努力ではどうにもならないファイナルクラブへの憧れと、自転車置き場までしか通されない屈辱、ウィンクルボス兄弟とは違うクラブだが、入会を許可されたエドゥアルドへの羨望と嫉妬など、言葉にしない感情を観せる。CSI:の変人ホッジスがチョイ出演。5億人もの人々を繋げた青年の、ぞっとするほど孤独な余韻が後を引く。


■『アンストッパブル』-Unstoppable- ★★★☆


ペンシルベニア州の操車場から、大量の化学薬品とディーゼル燃料を搭載した39両編成の貨物列車が、無人のまま走り出す。作業員の怠慢でブレーキは作動せず、最小限の金銭被害に留めようとする本部の対策は全て失敗、やがて時速は100kmを越える。列車の進行方向で待機していた、リストラで早期退職を迫られたベテラン機関士のフランク(デンゼル・ワシントン) と、新米車掌のウィル(クリス・パイン) は、家族が居る住宅地での脱線を回避するため、指示を無視して貨物列車を追走するが・・・。列車暴走事故の実話に着想を得たフィクション。トニー・スコット監督、99分


いまどき、人質を取られている訳でもない貨物列車の暴走というショボイ設定が、トニー・スコット監督の派手なカット割と、強引な見せ場で充分盛り上がるから面白い。ミスをした作業員が食いしん坊のデブで、のろのろ走る貨物列車にあとちょっとで乗り損ねる冒頭から、キュキュキューッと列車が傾くエンディングまで、分かっちゃいるのに思わず力が入る。


猛吹雪の如く飛んでくる穀物シャワーに包まれたり、激しい急カーブの高架下にタンクが並んでるなどという、見せ場のための状況もバッチリ用意。普段から危ないだろう。妻に先立たれ2人の娘に頭が上がらないフランクと、愛する妻子に接近禁止令を出され注意散漫なウィルの家庭事情などは申し訳程度に流され、複雑な人間ドラマなど完全放棄。この潔さも痛快。



■『ロビン・フッド』-Robin Hood- ★★★★☆


12世紀末。獅子王リチャード1世率いる十字軍遠征隊で戦った弓の名手ロビン・ロングストライド(ラッセル・クロウ) は、部隊を離れて仲間4人ともに帰還に途につく。道中、今際の際の英国人騎士ロクスリーより、家宝の剣を故郷へ届けるよう託されたロビンは、ロクスリーの父で領主のウォルター(マックス・フォン・シドー) とロクスリーの妻マリアン(ケイト・ブランシェット) の待つノッティンガムへ向かう。一方、フランスと通じている国王の腹心ゴドフリー(マーク・ストロング) の策略により、内戦の危機に揺らぐ英国へフランス軍が迫っていた・・・。リドリー・スコット監督、140分


もの凄く人が死ぬけど残酷描写はなく、幅広い年代が楽しめそうな劇場で観て大正解の超オススメ。義賊となるまでの物語にしては、ラッセル・クロウケイト・ブランシェットも年を食ってるのはご愛嬌。パッとしなかったケヴィン・コスナーと違い、俺様なロビンがいちいち派手に立ち回る。マックス・フォン・シドーが笑いも涙も全てかっさらって、ハラハラするほど活躍。重量感のあるアクションの見せ場に次ぐ見せ場の連続と、完璧な映像と編集で140分間スクリーンに釘付けにする。「グラディエーター」を期待すると、軽さに落胆すると思う。