8月鑑賞の映画

■『30デイズ・ナイト』★★★☆
雪に閉ざされた北米最北端の地、アラスカ州バロウ。30日間太陽が昇らない“極夜”を前に、住民たちの大半が街を出て行く中、焼かれた複数の携帯電話や、犬ぞり用のハスキー犬が無惨な姿で発見される。トラブルを起こし投獄された余所者のお歯黒男(ベン・フォスター)は「ヤツらがやって来る」と愉しむ様子を見せ、停電と電話も不通となってしまう。そして、極夜に乗じて現れたツルッパゲリーダー(ダニー・ヒューストン)率いるヴァンパイア集団が、住民たちを次々と襲い始めた。互いに未練を残したまま離婚する保安官エバン(ジョシュ・ハートネット)は、街から出て行き損ねた妻ステラ(メリッサ・ジョージ)や、他者との関わりを拒絶しこの街へ越して来たヒゲもじゃら(マーク・ブーン・ジュニア)、吸血鬼と見紛う色白のエバンの弟(マーク・ケンドール)、すぐにも殺されそうな若い女、ダイナーのオバちゃん、緊迫感漲る認知症のジイちゃん、その息子、その他2人のチョイ役男とともに屋根裏へ身を潜め、吹雪を利用して脱出を図るが…。


隣町まで128キロ離れている陸の孤島と化した街で、動きがチョッ速、残忍で凶暴、唯一の弱点の太陽もなく、飢えた集団が襲いたい放題!! 生き残るのは死んでも無理かと思いきや、ヤツらは五感が鈍いという致命的な手緩さで、姿さえ見つからなければ全然大丈夫。脳天に響く奇声は相当やかましく、知能は高く狡猾でも、主人公にあっさり見抜かれる程度。ここぞという場面で効力を発すると思われた、紫外線ライト、トラバサミ、ダイナマイトは軽くスルーし、無音の閉塞感に支配される緊迫の篭城戦が展開。


『96時間』★★★
離婚した妻レノーア(ファムケ・ヤンセン)が富豪と再婚し、孤独な日々を過ごす元CIA工作員ブライアン(リーアム・ニーソン)。17才の娘キム(マギー・グレイス)が、友人アマンダ(ケイティ・キャシディ)と2人きりのパリ旅行の許可を求め反対するが、レノーアから過保護を責められ渋々受け入れる。そして、到着早々、ブライアンとの電話中に何者かが2人を誘拐。奪還のタイムリミット96時間以内に娘を救い出すため、ブライアンは犯人へ宣戦布告しパリへ向かう…。


殺し屋と殺人鬼以外の生身の主人公としては異例の、殺して、殺して、殺しまくる、ぶっちぎりの殺人記録。「燃える男」のクリーシィばりの執念で、もはや野放し厳禁の処刑人と化し大暴走する強引さは痛快。ところが、中盤から大雑把感がハイパー加速し、丸腰で敵地へ突っ込む主人公には次々と拳銃が手に入り、ことごとく悪党どもをぶち殺す無敵のセガール状態。家庭に居場所のないショボくれたオヤジの妄想のような大願成就で、誘拐の目的の絶望感とは対照的に呑気なエンディングに脱力。


■『ナイトミュージアム2』★★★
夜間に展示物が動き出す自然史博物館の窮地を救った元夜警のラリー(ベン・スティラー)は、発明家として成功し忙しい日々。ハイテク化によって不要となる展示物の仲間たちが、スミソニアン博物館の倉庫へ移されると知り気に病んでいた矢先、石版の魔法の力で甦ったカームンラーが、ナポレオンやアル・カポネと手を組み世界征服を企んでいた。ラリーは監禁された仲間たちを救うため石版を取り戻そうとするが…。


絵画まで動き出すドンチャン騒ぎの中で、数が増えた分キャラクターの存在感が薄まり妙に小じんまり。伝説の女性パイロットでアメリア・イヤハート役のエイミー・アダムスは魅力的。


■『宇宙へ。』★★☆
1958年に設立されたNASA(アメリカ航空宇宙局)。マーキュリー計画ジェミニ計画アポロ計画を経てスペースシャトルへと繋がるその50年に及ぶ歴史を振り返るドキュメンタリー。


ロケットを打ち上げて打ち上げて打ち上げて!! スペースシャトルを打ち上げて打ち上げて打ち上げて!! と成功も失敗も打ち上げ場面ばかりが続くせいか、メリハリに欠けてだらだら長い。内容は先日観たディスカバリーチャンネルと同じで、音響のいい大スクリーンのメリットもいまひとつ。宮迫博之のナレーションは「アース」の渡辺謙より良かった。


■『トランスポーター3 アンリミテッド』★☆
卓越した運転技術と格闘術に長けたフランク・マーティン(ジェイソン・ステイサム)は、ワケありの品物を時間厳守で目的地へ届けるプロの運び屋。ある依頼を断り、代わりに紹介した知人がフランクの自宅で爆死した直後に、彼の車に乗っていた謎の赤毛の女ヴァレンティーナ(ナターリャ・ルドコワ)とともに拉致される。目覚めると爆死した知人と同じブレスレットが腕にはめられており、依頼主のジョンソン(ロバート・ネッパー)は、車から20m離れると爆破する装置だと告げる。荷物2個を運ぶよう強要されたフランクは、赤毛の女を連れて出発するが…。


自らの仕事に課した「3つのルール」が完璧に意味を成していないのはお約束としても、フランクに荷物を運ばせる必然性が皆無で驚く。映像的に面白かった2は強引なアクションに釘付けになったけど、どうにも小物感漂う敵ボス(プリズンブレイクティーバック)は中途半端で、ベッソン作品で見飽きた感のあるヴァレンティーナのキャラクターと相まってかなりデジャブー。どうでもいいが、ヒロインの顔中のそばかすには釘付けだった。


■『G.I.ジョー』★
NATOがガンの特効薬として大金を投じた「ナノマイト」が、代々続く武器商人デストロ(クリストファー・エクルストン)の手によって、あらゆる金属を侵食し尽くす最強のウィルス兵器として実用化。移送の任務に就いた米軍兵士デューク(チャニング・テイタム)は、未知の武器を有する悪の組織「コブラ」の襲撃を受け、かつて結婚を約束した恋人バロネス(シエナ・ミラー)の姿に衝撃を受ける。世界屈指の精鋭で構成される最強の国際機密部隊G.I.ジョーの救援によりその存在を知ったデュークと同僚リップコード(マーロン・ウェイアンズ)は入隊するが、ナノマイトを奪ったコブラは、手始めにパリのエッフェル塔を破壊しようとしていた…。


機密部隊G.I.ジョーの存在を全世界が知ったと思われる迷惑千万な破壊ぶり。パッとしない俳優揃いだけど、各チームのキャラクター分けはバッチリで両者入り乱れても混乱なし。見なくても分かる程度の過去を、いちいち挿入してきて水を差す。元ネタのアニメはちょっと観たけど、映画もえらく古くさくて格好悪い。そして極めつけは、常時キメ顔のイ・ビョンホンが気色悪くて参った。今年のワースト候補。