ネタバレ劇場「ミラーズ」

注:オチまでテキトーに書いているあらすじです。


『ミラーズ』-Mirrors-

[監][脚]アレクサンドル・アジャ
[総]キーファー・サザーランド
[製][脚]グレゴリー・ルバスール
[出]]キーファー・サザーランド/ポーラ・パットン/エイミー・スマート/キャメロン・ボイス/ジェイソン・フレミング
2008米/FOX [上映時間] 111分・R-15


感じる。その奥に秘められた存在を──


“見えない存在”から逃れるように、地下道を必死に走り続けている、出番1分で殺されそうな薄幸顔オヤジ(ジョシュ・コール)が、ロッカー室へ駆け込む。なんでそんなところに!! 誰もいない静まり返った室内に、人間ではない邪悪な者の意思が満ちていく。くるよ、くるよ、くるよ、きたー!! ズラリと並んでいる縦型ロッカーの扉が次々と開き始め、扉の裏の鏡が恐怖に脅え立ちつくす薄幸顔オヤジの顔を、一斉に映し責め立てる。もう、オヤジ泣きそう。すがるように洗面スペースの大きな鏡に向かって許しを乞うが、撥ね付けるようにヒビが走る。怒ってるよ、怒ってるよ、怒ってるよ!! 割れた鏡を元通りにすると提案し、慌てて床に落ちた破片を拾い集めようと屈むが、大鏡には薄幸顔オヤジの姿が映ったまま。自分がいないのに!!


ナイフのように尖った鏡の破片を拾って顔を上げた薄幸顔オヤジは、鏡の中から冷酷な眼差しで見返してくる自分に戸惑う。微妙に自分と動きが合ってない。勝手に動き始めた鏡の中の薄幸顔オヤジが、尖った鏡の破片を自身の首に突き立て大きく切り裂く。と同時に、現実の薄幸顔オヤジの首から、刃物で切られたように血が吹き出した。


1年前に同僚を誤って射殺し停職処分中のニューヨーク市警の刑事、ベン・カーソンキーファー・サザーランド)は、5年前の放火によって大勢の死者を出し、廃墟と化したメイフラワー・デパートの夜警の仕事に採用される。過去に苛まれアルコールに溺れていたベンは、妻・エイミー(以下、ベンの妻/ポーラ・パットン) と、幼い2人の子ども(以下、ベンの娘と、そばかす息子) と別居し、若く美しい女性アンジェラ(エイミー・スマート) のアパートに居候している。うまい事やってんなコンチクショーと思っていたら、妹だった。


6番街にひっそりと佇むゴージャス博物館のようなメイフラワー・デパートは、一歩も入りたくない薄気味悪い威圧感。全然無理!! 霊感とは無縁な顔の日勤の警備員ジジイがベンを案内しながら、保険会社との交渉が難航し放置されたままになっている、と説明してくれる。館内には焦げて崩れかかった石像や、豪華な調度品の残骸が散乱していた。仕事は2時間に1回、巡回するだけ。気味は悪いが簡単な仕事で、周囲を見回していたベンは、フロアの中央に立っているダブルベッドくらいの大きさの鏡に目に止まる。朽ち果てた館内にあって、この巨大な鏡だけは傷ひとつなかったのだ。キャー!! 怖いので叫んでみた。「前の夜警の男が、毎晩、欠かさず磨いていたからな」と、日勤の警備ジジイが呑気に笑う。


そばかす息子の誕生日にベンは我が家を訪れるが、ベビーシッターの速攻のチクリ電話で妻が帰宅。子どもたちと自由に会う事もままならない。妻はベンを愛しているが精神的に不安定なベンを支える事ができず、仕事が決まったという報告にも距離を置く気持ちは変わらない。苛立ちに思わず感情を爆発させたベンに、妻は不信の眼差しを向け、子どもたちを脅えさせてしまう。ぜんぜん信用できないだろうよ。


そして、初仕事の夜。メイフラワー・デパートのエントランス横のキャピンが警備員の待機所となっており、棚に残されていたウイスキーの誘惑には屈せず、所定の時刻に見回りを開始。新しい仕事は失った妻の信頼を取り戻し、再び愛する家族との暮らしのための、社会復帰へのリハビリとなるはずなのだ。ああもう、コンビニの店員とかにしておけばいいのに!! 日中に訪れた時とは違い、禍々しい空気に満ちた館内に、ベンが足を踏み入れる。やたら大きな音で鳩がバサババサー。驚かせやがってコンチクショー!!


館内の見回りを終え、メインフロアに戻ってきたベンは、あの大鏡に手形の跡がついている事に気づく。日中警備のオヤジと来た時にはなかったのに、いつの間に!! ピカピカに磨かれた鏡面にべったり残る手形の跡は大人のもので、近づいて見てみると、鏡の上の方へ向かって、ペタペタペタペタと続いてる。ていうか、近づきすぎ!! もう鏡から離れて、離れて。ベンは警備服の袖口で手形を消そうとする。なんで!! バカか!! 放っとけ!! しかし、その手形はいくら擦っても取れないのだ。まるで、鏡の向こう側から手を触れた跡のように。コワー!! 今すぐ逃げて、走って逃げて。訝しむベンは手形の上にそっと自分の右手を合わせてみた・・・なんで!! バカか!! 止めとけ!!


ベンが触れた瞬間、 強烈な痛みに襲われて鏡から手を離すと、右手の平がパックリと裂けて血がだらだら出ている。鏡を見るが傷などは見当たらない。なんで!! すぐに警備員の詰所へ戻って消毒すると、いきなり場面が変わっていて、もう翌日。ええ!? 怪我はしたが、それ以外は何事もなく自宅(妹のアパート) へ帰れたらしい。ホントかよ!! しかし、洗面所の鏡を覗いたベンは、自分の顔の左側がぐにゃりと崩れたため腰を抜かして驚く。恐る恐る鏡を見ると何ともなっていない。ベンの叫び声に妹が駆け付けるが、いま見た事は話せない。そりゃそうだ。


そして、その夜も仕事へ向かうベン。昨日も、今朝もヘンな事があったのに、まだ働くなんてあんたバカ? 日中警備員ジジイとの引き継ぎで、ベンの前任の夜警男の自殺体が発見されたと知らされる。首を切り裂いて自殺したというのだ。その夜の巡回を始めたベンは、ひとつひとつの部屋を丁寧に見て確かめる。真面目な人だよ。昨夜、ベンに怪我を負わせた鏡に変わったところはないが、鏡に映る自分の姿への違和感を拭いされない。ベンが目を逸らした瞬間、ビミョーに動きが違う!! が、しかし、見ている時は同じ動き。そして、目を逸らすと、鏡の中のベンが邪悪な笑みを浮かべる。いま見て!! いま見て!! いま見て!! 遅い!!


ベンが鏡に手を伸ばす。まだ触るか、このバカは!! 軽く触れた瞬間、ピシッとひび割れが走る。うそー!! ヒビは鏡を縦に裂くように上部へ広がっていき、ベンの背後で病院患者たちが断末魔の叫びを上げる。ていうか、誰!! しかし、ベンが振り返ると、そこには誰もいない。再び、鏡を見ると、ベンの背後で燃え盛る炎の中で人々が叫び声を上げている。火事、火事、火事ー!! 焦って振り返るが、やはり火はない。それなのに、目の前の鏡では、ベンの背後で激しく炎が上がっているのだ。どうなってんだよ、コンチクショー!! 鏡に映っている炎に困惑しているうちに、鏡に映るベンの足に火がつき、同時に現実のベンの足が燃えている。自分が火事!! 自分が火事!! 自分が火事!!


火はあっという間に上半身に届き、上着を脱ぎ捨て床を転がりながら必死に火を消すベン。煙に呼吸困難になりながらやっとの事で火を消したベンは、自分の身体も、脱ぎ捨てた制服も、どこも燃えていないと知り呆然。確かに燃えてたのに!! その時、床に落ちていた財布を見つけ、警備員の詰所へ持ち帰る。ドロボー!! その財布はベンの前任の夜警で自殺した男のものだった。財布の中にはメモが入っており、そこには「エシィカー」と謎の言葉が書かれていた。


こんな大変な事があったわりに、無事に家に帰れた翌日。鏡への執拗な不安を拭いされないベンは、アパートにあるガラスや鏡を全て覆い隠す。いや、ここ妹の家なんだけど。そして、ベン宛の宅配便が届く。中身はメイフラワー・デパートの火事に関する新聞記事を集めたもので、前任の夜警の男が死の直前に発送していたものだった。なんで!!


そして、その夜も仕事へ向かうベン。辞めるだろ、フツー。巡回を始めたベンが、複数の鏡がある試着室が集まっている部屋へ入ると、閉じられたカーテンの向こうから、火傷の苦痛にうめく声が助けを求めてくる。うそー!! ベンがゆっくりとカーテンに手を伸ばす・・・開けるなよ!! ところが、そこには燃えた試着室があるだけ。しかし、鏡には火傷を負った女性の足が映っている。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、成仏してチーン!! 5年前の火事で火傷を負った人間が、ここで苦しんでるわけないだろよ、と脳ミソが判断する間もなく、すぐ助けると約束し振り返るベン。しかし、直接、試着室を見ても誰もいない。居たら居たでコワイんだが、居なきゃ居ないでどうする!! 鏡越しには火傷の人間が見えるが、実際にはいないのだ。


火傷の女性の幻はそれきり現れず、翌日。ベンは検屍官である妻に強引に頼み込み、ベンの前任の夜警男の死亡報告書を見せてもらう。死体発見現場の写真には、彼が自らの首を切ったという鏡の破片を握っていたが、その破片には血がついていない事に気づく。しかし、ベンがあまりにも興奮してるためベンの妻は特に気にしない。それどころか、取り憑かれたようなベンを哀れに見つめるベンの妻。これじゃ当分、一緒には暮らせない。ベンは遺体を見せて欲しいと強硬に頼み、保管していた引き出しを開けた瞬間、遺体がベンの方を振り向く。「エシィカー」。トゥルー・コーリング(※)かっての!! ベンも腰を抜かして驚いた。そう見えたのは自分だけだったと知るが、またしても謎の言葉「エシィカー」。エシィカーだけじゃ分かんないよ。
※検屍局でアルバイトしている主人公トゥルーに、死者が「助けて」と頼むFOXドラマ。


ベンはメイフラワーデパートでの怪現象と前任の警備男の不審な死について妹に打ち明けるが、服用している薬の副作用で済まされてしまう。そしてベンは仕事へ。まだ働くのか!! 帰宅したベンの妹は、バスルームで身支度を終えバスタブへ浸かるが、鏡にはベンの妹の姿が映ったまま。しかも目が冷たい。鏡の中のベンの妹は、おもむろに両手で自分の口を上下に開き、バスタブに浸かっていたベンの妹が、自分の口の異変に気づく。なんか分かんないけど、アゴが外れそうなんだけど?
鏡の中のベンの妹が更に力を込めて口を開き、現実のベンの妹の口がメリメリと裂けていく。勝手にアゴが裂ける恐怖に、ベンの妹が口が裂けながら絶叫!! 避けていく自分の顔面を両手で必死で抑えるが、鏡の中のベンの妹は更に力を込めて口を引き裂き、力を失ったベンの妹は血の海となったお湯の中へ沈んでいく。もっと楽に殺してくれよ!!


両親の死後、親代わりとなって育ててきた愛する妹の無惨な亡骸と対面したベンは泣き崩れ、メイフラワー・デパートの鏡の仕業だと確信。ベンの妹の死亡時刻にはベンは夜勤中でアリバイがあり疑いは晴れたため、ベンはメイフラワー・デパートへ乗り込む。怒りに任せ鏡に向かって何度も椅子を叩き付けるが、ヒビひとつ入らない。拳銃を抜いて、弾を打ち尽くすまで発砲しても、弾痕はみるみる消えていき、鏡の表面は元通りになっていく。「何が望みなのか」と鏡に問いかけるベン。もう、鏡が何をどうしたいのかさっぱり分からない。すると、鏡にヒビが入り始め、ひとつの言葉を現した。そこには「エシィカー」と書かれていたのだ。だーかーらー、エシィカーだけじゃ分かんないんだってば!!


そして、何事もなく翌日。妹が殺され、次は妻子の身が危ないと気づいたベンは自宅へ急行。家の中の鏡という鏡、写真立て、額縁など、反射するもので取り外せるものは全て家の外へ出し、動かせないものには姿を映さないようにペンキを塗りたくる。これがやたら鏡が多い家で、しかも大きい鏡ばかり。ベンの娘とそばかす息子と家政婦は脅えて遠くから見守るだけ。コワイよ、お父ちゃん!! 家政婦からの緊急連絡を受け、すっ飛んで帰宅したベンの妻は、一心不乱にペンキを塗りつけている夫の姿に呆然。妹の死でついに気が狂ったか、夫よ。鏡を家の外へ運び出すベンと話し合おうとするものの、ベンは「鏡が自分たちを殺そうとしているが、これで大丈夫だ」と意味不明。当然、妻に理解してもらえるはずがなく、自分を見つめる妻の正気を疑う眼差しに愕然。そりゃそうだ。自分が正しいと証明しようと、ちょうど運び出した鏡に向けて、拳銃を発砲、パンパンパンパンパーン!! アンタ住宅街でいきなり!!


メイフラワーデパートの大鏡のように、弾痕が消失していく様を見せようとするベンは、「鏡を見てみろ 」と指を差す。元通りになるワケないだろ!! そして、鏡は銃弾で割れたまま。ベンは一向に変化しない鏡に困惑し、「こんなハズでは・・・」と、しどろもどろ。そんなはずもこんなはずも、当たり前!! 妻の哀れみの眼差しに耐えきれず、ベンは車に乗り込み走り去る。家から出した鏡はをそのまま放ったらかし。片付けていけ!!


信じられない事にまだ仕事を辞めていないベンは、この夜もメイフラワー・デパートへ。日勤のジジイは仕事を辞めて妻とのんびり暮らす、とそそくさと帰宅してしまう。怪しすぎるぞ、日勤ジジイ。ベンはニューヨーク市警のヒョロリ顔の同僚(ジェイソン・フレミング) に頼み、「エシィカー」について警察の記録を調べてもらうが、人物名では見つからない。次に5年前の放火犯について調べてもらったベンは、仕事中に抜け出してその同僚から資料を受け取る。同僚のうすら怪しい笑顔が胡散くせー!! と思ったが、何も関係なくこれっきり出番なし。紛らわしいんだよ。


この日のメイフラワーデパートには異変はなく、翌日の日中。ベンは同僚から受け取った資料にくまなく目を通し、「妻子を殺害」した放火犯男の事情聴取のビデオを再生。そこには、極限まで追いつめられ「炎でもあの鏡を破壊する事が出来なかった」と繰り返し、「エシィカーなど分からない」と懇願している放火犯の姿があった。お前もか!! 放火犯の男もまた、ベンの前任の夜警男と同じく、エシィカーの謎に囚われていたのだ。だからエシィカーってなに!!


「鏡の中に女の人がいるよ」と、そばかす息子から聞かされたベンの妻は、子どもの空想と取り合わない。コワイだろうが!! ここ数日間で次第に無口になり、様子のおかしい息子を心配するものの、父親(ベン)の奇怪な行動による一時的な情緒不安定だと考える。ああもう!!


この期に及んでもまだ夜警の仕事を続けているベンは、メイフラワー・デパートをくまなく調べていき、水漏れ水没中の地下をズブズブに濡れながら奥へ奥へと突き進む。そこで水漏れしていた壁を見つけ、ハンマーを持ってきて勝手に壁を崩し始める。ガンガンガン、ドカーン!! なにやってんだ、この男は。水漏れしていた壁の向こうには、ここがデパートになる前の、50年前に閉鎖された精神病院の特別病棟が封じ込められていた。そして、ベンはその奥に隠されていた、鏡張りの部屋と拘束具つきの椅子を発見する。


この夜も何事もなく、翌日。寝ている時間がないがモーレツに元気なベンは、精神病院について調べ、“アンナ・エシィカー”という患者がいた事を突き止める。やっと分かったよ、コンチクショー!! アンナは尋常ならざる凶暴性により家族によって自宅に幽閉されていたが、精神病院の医師がアンナの症状に興味を持ち入院させる。やがて精神病院では患者同士で殺し合う事件が発生し封鎖され、記録によれば当時14才(だったような)のアンナもその時に亡くなっていた。腑に落ちないベンは記録を注意深く調べ、アンナは事件の3日前に退院していたと知る。


その頃、そばかす息子を呼びに部屋へ入ったベンの妻は、鏡に向かって話し続けていた息子がその場から離れたにも関わらず、鏡の中からこちらを見据えて微笑んでいる息子から目が離せず、恐怖に立ちつくす。鏡の前に息子がいないのに、鏡に息子が!! 電光石火でベンが警告していた怪現象を信じたベンの妻は、すぐさまベンに連絡。「うちの中に何かがいる。」疑ってごめんよ、夫!!


駆け付けたベンとベンの妻は、家の中にある鏡や反射するもの全てにペンキを塗り始め、窓には新聞紙を貼付け覆い隠していく。自分の話を妻に信じてもらえたものだから、張り切るベンは絶好調。ベンは家族を巻き込んでしまった事を詫び、離れていた2人の心が再び通い合う。ホントかよ!! 冗談じゃないだろ、こんな夫は。ベンはテレビの画面もペンキで塗りつぶすと、自宅の方が安心だと妻を説得し、1人でアンナの実家へ急ぐ。全然無理!!


すっかりジジイのアンナ弟が、いきなり現れたベンに全部説明してくれたところによると、獣のように荒れ狂う少女アンナに手を焼いた両親は、彼女を小屋に監禁していたが、精神病院の医師が実験的な「鏡の治療」を申し出たため了承し、アンナは入院。鏡張りの部屋の中心の椅子にアンナを拘束ベルトで縛った上に目隠しをさせて残し、アンナの内に棲む悪魔を鏡に転移させる、とかそんな感じで。その実験的な治療をしていたのが、ベンが地下室で見つけた鏡張りの部屋。実験を何度も繰り返して行くうちにアンナの凶暴性は薄れていき、それまでの記憶を一切を失くし、他の子どもたちと変わらなくなったという。そして主治医はアンナを退院させたが、アンナに執着する鏡の異変を感じた主治医は、記録を改ざん。アンナを鏡のない世界へ逃がすため、現在、彼女は修道院に身をおいているのだ。患者同士が殺し合いを始めた事で主治医は逮捕され、既に死亡している。


アンナ弟に修道院の名前を教えてもらったベンは車で急行。ていうか、鏡の向こうでエシィカーを探している“何か”は、50年も経ってから放火犯や、夜警の男や、ベンを巻き込んでないで、アンナの家族を脅せば、話は早かったのに!!


修道院では約束のないベンの面会は断られてしまうが、そんな事を気にするようなベンじゃないため、「家族の命が危ないんだ」と妻子の写真をグイグイと突きつけて強引に訴え、年老いたアンナ(以下、アンナ婆さん) と面会を果たす。アンナ婆さんは精神病院を退院する前の記憶はなかったが事情は知っており、ベンの家族には気の毒だが、と前置きした上で、自分に執着する悪魔を鏡に封じ込めておくために、自分は死ぬまでここから出る事はできないと断る。悪魔もアンナじゃなくてもいいだろうと思うが、映画的にそういうワケにはいかないのだ。


そんな事はお構いなしの家族第一暴走男ベンは、拳銃をアンナ婆さんに突きつけ、家族のために「何があってもメイフラワー・デパートへ連れて行く」と逆上!! いやいや、悪魔がこの世界に出てきたら困るんですけど。ベンはまたもや妻子の写真をアンナ婆さんにグイグイと強引に見せつけ、家族を救うために協力してくれと脅迫。凄惨な少女時代を経て、今も苦しむアンナ婆さんを家族を救うために追い込む、恐るべし暴走男ベン。写真の中の幼い姉弟の姿に、アンナ婆さんの心が揺らぐ。揺らいじゃいかん!!


反射するものは残らず覆い尽くしたはずのベンの自宅で、そばかす息子の姿を映すドアノブが音もなく開く。そんなモノまで!! 子どもたちを抱きかかえ居眠りをしてしまったベンの妻は、そばかす息子の姿がない事に焦り廊下へ。床に数センチの水が溜まるほど、蛇口という蛇口から勢い良く水が出ており、家の中じゅう姿を映す水だらけ。しかも、鏡やテレビの画面などのペンキが削ぎ落とされている。ピーンチ!!


キッチンの蛇口を閉めたベンの妻の背後をチョロチョロと動く人影。そばかす息子は覆い隠したガラス板のペンキを無表情で包丁で削ぎ落としている。キーッって嫌な音がするから止めて。そばかす息子は逃げ出し、ベンの妻が追いかける。椅子の下に隠れているそばかす息子の姿が、床に溜まっている水に映り込み、ベンの妻が手を差し出すが包丁で切りつけられ顔から血が!!


ひとりぼっちで目が覚めたベンの娘は、部屋にはいないのに鏡に映っている、いつもと雰囲気の違う母親に呼ばれ掴み上げられる。ニセベンの妻は持っていたハサミで、娘の首をごく浅ーーーーーく切りつけ、血がツーッ。ベンの妹の恐ろしい死に様に比べて、この手ぬるさはどういうワケだ。


逃げたそばかす息子を探しながら、ジャージャー出ている浴室の蛇口を閉めたベンの妻は、浴槽に映り込む自分の背後にそばかす息子が立っているのが見えて振り返る。そばかす息子の姿はなく、次の瞬間、浴槽の水の中から伸びた手がベンの妻の腕を掴み、水の中に引きずり込む。ゴボゴボゴボゴボゴボー、死ぬ、死ぬ、死ぬ!! ゴボゴボゴボゴボゴボー、死ぬ、死ぬ、死ぬ!! ゴボゴボゴボゴボゴボー、死ぬ、死ぬ、死ぬ!! 必死に腕を振り回し、意識を失う寸前に浴槽の栓を引き抜く。危うく、ありえない自殺と思われるところだったよ、コンチクショー!! すぐさま、水に濡れて胸元スケスケのお色気スタイルで娘の部屋へ駆けつける。鏡の前で宙に浮いている娘の首の傷と、鏡に映る自分が娘の首にハサミを突きつけている様を一瞬で見て取ったベンの妻は猛ダッシュで、娘を鏡の前から引き離す。


妻子が大変な事態となっている頃、ベンは、家族を救いたいという彼の強引さに根負けしたアンナ婆さんとともに、メイフラワー・デパートに到着。メインフロアーの壁という壁から、悪魔に殺された病院患者やデパートで焼死した客たちが蠢く姿が浮かび上がる。悪魔祓いの専門家を連れてきた方がいいのに、ベンが持っているのは拳銃一丁だけ。そんなもんが何の役に立つか。地下の鏡張りの部屋へ入ると、ベンはアンナ婆さんの指示通りに中央の椅子の拘束ベルトで縛って目隠しして、部屋から出た。


ベンの妻は娘をクローゼットに隠れているように言い聞かせると家中を探しまわり、そばかす息子を見つけ出す。正気を取り戻したそばかす息子は、居間の僅か数センチの水溜まりにストーンと落下。底なしリビングか、ここは!! 溺れる息子を掴もうと手を伸ばすが、ベンの妻の手は床材に触れるだけ。フローリングの下へ落ちたそばかす息子の姿は見えなくなってしまう。


アンナ婆さんを取り囲む鏡からも殺された者たちの苦悶の姿が浮かびあがる。かつて鏡に転移させ封じ込めた悪魔がアンナ婆さんに襲いかかり、身体の輪郭が曖昧になっていく。・・・次の瞬間、全ての鏡が勢いよく破壊、がっしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!! 破片でアンナ婆さんの身体は一瞬で千切れ飛び、メイフラワー・デパート内部で、次々と爆発が続く。壁がどかーん、壁がどかーーん、壁がどかーーーん、メインフロアの大鏡ががっしゃーーーーーん!! ・・・なんで爆発!?


爆風でぶっ飛んたベンがよろよろと鏡張りの部屋へ戻ると、鏡の枠と椅子だけが残っており、拘束ベルトは締まったままアンナ婆さんの姿はない。さっき鏡で粉々に千切れ飛んでたんだよ。と、思いきや、ドームに張りついていた敏捷な何者かがベンに襲いかかった。さすがにアンナ婆さんにはできないので、真っ黒けの小柄な人。アンナ婆さんの肉体を手に入れた悪魔とベンが取っ組み合いの激闘へ。殴り合いの首締め合いの末、近くの配管を引き剥がして蒸気を悪魔に喰らわせる。蒸気で怯んだ悪魔が再び襲いかかり、ベンが拳銃を立て続けに発砲。動かなくなったが、またもや襲いかかる悪魔との取っ組み合いとなり、崩れ落ちた天井が悪魔の脳天をカチ割り、今度こそブチ殺す!! 実体を持った悪魔は恐ろしく弱かった。


僅か数センチの水たまりの中から必死に我が子を探し続けていたベンの妻の前に、そばかす息子がぽっかり出現。すぐさま心臓マッサージを繰り返し、そばかす息子が息を吹き返す。


翌朝。娘と息子を両腕に抱きかかえたまま床の上で目覚めたベンの妻は、穏やかな朝の光に目を細め、子どもたちを強く抱きしめる。ベンの事は完璧に忘れてる。
瓦礫の下から這い出したベンは奇跡的に怪我もない。悪魔だって死んだのに。
粉々に砕け散っていた大鏡を見つめた後、ふらつきながら建物の外へ出たベンの横を、救急隊員たちが通り過ぎていく。悪夢は終わったのだ。


自分に話しかけてくる者はおらず、消防車や野次馬を見渡していたベンは、ニューヨーク市警の警官と話し合っている日勤のジジイをぼんやりと眺め、胸元の名札が目に止まる。日勤のジジイの名前は反転していたのだ。なんで!! パトカーの文字も鏡に映した文字を見るように、逆さまになっている。なんで!! 救急車両の前を走る車の運転手が、バックミラーで見て読めるようになっている「AMBULANCE」が、反転文字になっていない事に気づく。なんで!! 左右が逆になっている自分の両手の平を呆然と眺め、自分が鏡の向こうの世界に囚われたと知る。なんでーーーーーーーーー!!
無人の街を駆け抜け、カフェの窓ガラスに手を当てて、誰もいない店内を覗き込んだベンの掌紋が、客たちで賑わう現実世界の店の窓に残る。おしまい。


日本未公開の韓国映画『Mirror 鏡の中』のリメイク。恐ろしい目に遭いながらも、いつの間にかアパートへ戻っていて、夜になるとまた仕事に行く生活を繰り返すベンに、取りあえず仕事は辞めろよ!! とツッコミまくるも、自己完結で暴走し、他人の理解を失う男を演じさせたらFOXチャンネル1番のキーファー・サザーランドならありえるなぁと妙な説得力。銃を構えた姿はジャック・バウワーにしか見えず苦笑。中盤まではまあまあ面白かったけど、後半の悪魔との肉弾戦はやりすぎた。とんだとばっちりの妹とアンナ婆さんが気の毒で、オリジナル版と同じらしいラストは良かった。