ネタバレ劇場「シャッターアイランド」

※だいたいのところを思い出してオチまでテキトーに書いているあらすじです。


■『シャッターアイランド (超日本語吹替え版)』-Shutter Island- ★★★★
[監] マーティン・スコセッシ
[原] デニス・ルヘイン「シャッター・アイランド 」早川書房
[出] レオナルド・ディカプリオ/マーク・ラファロ/ベン・キングズレー/ミシェル・ウィリアムズ/マックス・フォン・シドー
2時間18分/2010年アメリカ映画/パラマウント ピクチャーズ ジャパン/PG-12


全ての“謎”が解けるまでこの島を出る事はできない


精神を病んだ犯罪者だけを収容する孤島“シャッター・アイランド”。1954年9月、この島に建つアッシュクリフ病院の鍵の掛かった部屋から、レイチェル(以下、失踪女/エミリー・モーティマー) という女性患者が忽然と姿を消した――。


この孤島を舞台にした密室ミステリーを捜査すべく、自ら志願しボストンから船で18時間かかる島へ向かう、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ) 。額には絆創膏が貼られており、水が苦手で船酔いに苦しむ。詰まるから洗面所でゲロゲロしちゃいかん。すっきりしたところで、新たな相棒チャック(以下、相棒男/マーク・ラファロ) と船上で初めて挨拶を交わす。この悪人ヅラは犯人だと思う。ホントかよ。


シアトルから先週配属されたばかりだと話す相棒男は、キャリアが上のテディを「ボス」と呼び敬語で話す。テディは大きな事件を解決した有名な捜査官なのだ。「島には嵐が近づいていると新聞に出ていた。かなりでかくなるそうだ」と相棒男。島に閉じ込められるというお決まりのパターンだ。テディのタバコはいつの間にかポケットから無くなっており、ライターは持っていない。「乗船した時には確かにあったはず」と訝しむテディ。大丈夫か。ボケ老人か。相棒男からタバコを1本もらい世間話をする中で、テディの留守中のアパートメントの放火で、妻ドロレス(以下、妻/ミシェル・ウィリアムズ) は亡くなったと言葉少なに話す。2年前の出来事で、2人の間に子どもはいなかった。


切り立つ断崖に囲まれた島で唯一の出入口となる波止場には、凶悪犯罪者を出迎えるが如く、過剰なまでの警備員たちが武器を携えて待ち構えていた。政府の命令で武器の常時携帯を要求するテディの抗議もむなしく、警備員は規則通り2人の拳銃を没収するが、相棒男はホルスターの留め具が外せずもたついてしまう。とんだ不器用野郎か、相棒は。ぎこちない手つきで拳銃を手渡す相棒男を、警備員たちは何も言わずに見つめる。


入れられたが最後、二度とシャバには戻れない雰囲気の高い塀に囲まれた病院の前で、テディはフェンスの上の鉄線には電流が流れていると相棒男に教える。厳重な警備の敷かれた病院の中庭へ入ると、足枷をはめられ掃除をしていた無垢な表情の男性患者が、愛想よくテディに手を振る。知らない、知らない。頭髪がほとんど抜け落ち、首に横一線の生々しい傷跡の残る女性患者は、通りすがりのテディをじっと見つめ、指を1本立ててそっと唇に当てる。ホラー映画か!! テディが振り返ると、彼女は静かな狂気を宿した眼差しで微笑み見つめ返す。そうとうヤバイ所へ来たようだ。


精神医学の権威であり、病院の責任者コーリー医長(以下、ハゲ医長/ベン・キングズレー) は、大仰な笑顔でテディを出迎え、捜査の協力を惜しまないと約束。この目が全然笑ってない悪人ヅラのハゲは犯人に間違いない。ホントかよ。彼は収容されている犯罪者たちは、囚人ではなく“患者”だと捉えており、彼らの人生にある程度の安らぎをもたらすと話す。ハゲ医長の案内で、テディと相棒男は失踪女の部屋へ向かう。


失踪女は自らの子ども3人を自宅近くの湖に沈めて殺しここへ収監されたが、自分が精神病院にいるとは思っていないらしい。患者たちの部屋は24時間監視され、窓には鉄格子、ドアには鍵が掛かっている。「何故、彼女は理解出来ないのだろうか」というテディの問いに対しハゲ医長が教える。「もし自分ひとりが真実を知っていると信じこめば、まわりの人間すべてが嘘を言ついていることになる。そして、まわりの人間すべてが嘘をついているなら、彼らがどんな真実を語ろうと、それは嘘になるのだ」と。さすがジジイ。上手い事言う。


部屋の中には一時的にも身を隠す場所はない。失踪女はいまから24時間前に、誰にも見られずに岩だらけの施設の外へ裸足で出て行ったと考えられた。足裏の皮が厚いか、足ツボも痛くない健康な女に違いない。というより、失踪から24時間しか経っておらず、島からの逃亡も難しい状況にも関わらず、18時間も掛かるこの島へ保安官が到着してるって早すぎるだろう。ベッドとロッカーしかない簡素な部屋を調べるなか、見つけやすいように床板に隠されていたメモをテディが発見する。そこには「4の法則。67は誰?」と書かれていた。分かるように書けちゅうのに。


テディと相棒男は島内の捜索に同行するが、警備員らのおざなりな様子にうんざりし、職員を一同に集めて失踪時の状況を聞くものの、落ち着き払った彼らは、判で押したように同じ証言を繰り返すばかり。全員がグルか、全員が呑気な人だと思われる。看護婦の顔をズタズタに切り裂いた男性患者や、自分もテディたちも俳優だと思い込んでいる女性患者たちとの面談を始めたテディは、「アルドルー・レディス(以下、放火魔)」という名の患者の事を繰り返し尋ねる。オイオイ、失踪女の聞き込みはどうした。明らかに動揺している患者たちは「知らない」と答えるだけ。斧で夫を叩き殺した女性患者は相棒男に水をもってくるように頼み、彼が席を外した隙にテディの手帳に急いで書き記す。そこには「逃げて」と書かれていた。出たな、何でも知ってるけどはっきり教えない人。そして、この女性患者が飲もうとした水の入ったコップが消える・・・らしいが見逃した。チクショー。


島には男性患者収容のA棟、女性患者のB棟、テディたちの立ち入りが制限された凶悪犯罪者用のC棟の建物がある。嵐による停電で独房の扉が開いた時の事を考え、ネーリング医師(以下、ジジイ医師/マックス・フォン・シドー) は凶悪犯罪者たちに常時足枷をつけさせるべきと提案するが、ハゲ医長は浸水での溺死を危惧し異を唱える。「過去には溺れ死んだ者もいた」とテディに探るような視線をおくるが、彼は何の反応も示さない。


島の中央の古い城に住んでいるハゲ医長に招かれたテディと相棒男は、掃除が大変そうなバカでかい大広間に驚嘆を洩らす。トイレへ行くにも、いちいち面倒くさかろう。第ニ次世界大戦で連合軍としてポーランドに派遣されていたテディは、ダッハウ収容所で副司令官の部屋にあったものと同じレコードプレーヤーを目にし、あの時と同じマーラーの音色に心がざわめく。累々と屍が重なり合う悪夢の光景がフラッシュバックし、テディの顔が歪む。ハゲ医長とともにこの城で暮らす、ドイツ系アメリカ人のジジイ医師に押し殺した怒りをぶつけるが、悪どい事やってそうな顔したジジイ医師はテディの言葉を軽く受け流し、病院職員と患者名簿の提出を頑に拒む。失踪女の主治医ドクター・シーハンは、テディたちと入れ違いに予定通りの休暇で島を離れてしまっていると言う。折しも接近中の嵐の影響で彼とは連絡がつかない。ウソくさー!!


偏頭痛持ちのテディは断続的な稲光に頭痛が酷くなり、ハゲ医長に貰った薬を飲んで眠りにつく。夢の中で明るい家の中にいるテディの前にびしょ濡れの妻が現れ、お腹から大量の血を流す彼女を抱きしめるが、灰となって散り散りに消えていく。悪夢に飛び起きたテディは水に濡れた両手に激しく狼狽。寝小便をやらかしたか!! ただの雨漏りだと分かり緊張を解く。雨漏りする場所にベッドを置くなというのに。


のらりくらりと体よくあしらう病院側の非協力的な態度に苛立ちを募らせたテディは、捜査を止めて帰ると強気の姿勢を見せ、奴らが油断している隙に、相棒男を連れて島内の捜索へ出る。これが全然油断しておらず居場所はバレており、あっさり迎えに来られて手掛かりも得られない。おまけに服がずぶ濡れとなったため、小太りに見えるもっさりした看護衣を借りるはめになり、相棒男も濡れてしまったタバコの代わりに職員からタバコを貰う。テディの偏頭痛は酷くなる一方で、飲みたくはないが相棒男に促されてハゲ医長の薬を飲んで眠りにつく。アンタ、一服盛られてるよ!! 夢の中に現れるテディの妻は、悲痛な表情を浮かべて許しを請うように謝り続ける。


2日目。テディの手帳に“逃げて”と書き記した女性患者がハゲ医長と談笑し、テディの胸に疑念が芽生えはじめる。ほらきた。会議では危険な患者をどうするかが議題で、他者に危険を及ぼす患者に、ロボトミー手術を施すべきとするジジイ医師ら旧学派と、薬で患者をおとなしくさせようとする新学派とで意見が分かれていた。ロボトミー手術を受けた者は、問題行動を起こさなくなり従順になるが、人間性を失ってしまう。現在は製薬会社から入る裏金で新学派が優勢になっている。ハゲ医長の考えを問うテディに、彼は「どちらでもない方法で治療を試みる」と答える。


聞き込みをするテディが「アルドルー・レディス」という名の患者の事ばかりを聞くため、不審に思った相棒男が問いただす。顔に大きな傷のあるその男こそ、アパートメントに放火しテディの妻を殺した犯人なのだ。テディは放火魔がこの島に収容されていると知り、彼を捜すために失踪女の捜査に志願したと告白。戦争で多くの死を見てきたテディは二度と人を殺すまいと誓い、放火魔に復讐をするつもりはないが、アッシュクリフを訪れる口実を待ち続けてきたのだ。そして、彼は自分たちが制限されているC棟にいるに違いないと確信していた。しかし、不可解な職員の態度に消えた女性患者の手がかりさえつかめず、テディはこの島は“何かがおかしい”と考えるようになっていた。ここでは人体実験を秘密裏に行っているのではないか、と疑う。いーや、もっとすんごいオチじゃないと許さん。


テディは自ら捜査を志願したと思っているが、それは全て仕組まれた罠だったのではないか。彼らに誘き寄せられたのではないかと相棒男が疑問を洩らす。なんとそうきたか。この病院の資金は非共産党が設立した基金が元手となっており、実験施設として知られている。過激な治療法を実践していてもおかしくない。まったく正気の人間が幻覚を見始めるのだ。ハゲ医長もジジイ医師も職員も秘密を共有するみんなグルに違いない。外部との連絡は遮断されたまま一向に回復せず、島から出るには船しかない。テディの体調は悪化する一方で、病院が何を行っているにせよ、真実に迫る自分たちはこの島から逃げられない、と相棒男。ていうか、さっぱり真実に迫ってないと思う。ほどなくして、失踪女が戻って来たとの報告が入る。しかし、彼女は失踪中の事は何も語らず、テディを戦争で死んだ夫と間違えており、勘違いに気づいてパニックになり暴れたため職員に取り押さえられてしまう。このやろ〜、私も勘違いしたふりして抱きつくぞ。


3日目。失踪女が戻ってきた事で事件は解決したと厄介払いされたテディは、嵐による停電の混乱に乗じ、相棒男とともにC棟へ向かう。病棟内は闇に包まれていたが、迷わず歩いていくテディを相棒男は見失う。テディはパンツ一丁で鬼ごっこをしていた患者男を危うく絞め殺しかけ、相棒男が警備員と現れ2人を引き離す。困惑の表情を浮かべる相棒男は、パンツ一丁男を診療室へ連れて行く。


放火魔男を探し回るテディの耳にささやく声が聞こえる。「レディス…」
独房の暗がりにいたのは、テディも知ってる元学生男ノイスだった。彼は大学生の時に心理学科の人間と話すようになり、小遣い稼ぎで臨床実験を受ける事に同意した。まったく普通の人間だった彼は、1年後に完全な分裂病患者として退学した。そして、暴行事件を起こしアッシュクリフのC棟へ収容されるが、島を出て2週間後に3人を殺害し、刑務所でテディと面会した事があったのだ。元学生男の顔は殴られて腫れ上がり、恐怖に震えている。「この傷はお前がつけたものだ。レディス(放火魔)はここにいる。お前は迷路に入ったネズミのようだ」とテディを嘲笑う。


C棟で放火魔を見つける事が出来ないまま、テディは相棒男に合流。医務室で放火魔のカルテを失敬した相棒男は「奴はここにいる」と手渡すが、テディは内容は読まずにポケットへ突っ込む。なんで仕舞う!! 苦しむテディを見た相棒が、話すように促す。野ざらしで積み上げられたユダヤ人の死体が脳裏に焼き付いて離れず、幼い女の子の幻影がテディに「どうしてもっと早く助けてくれなかったの」と責めたてると言うのだ。そして、死んだ妻が度々夢に現れ、テディを苦しめる。苦悩に顔を歪めるテディに、相棒男は憐憫の眼差しを向ける。


警備員たちに見つからぬよう遠回りしながら病院へ戻る途中、廃墟となった灯台が見える崖へ出た。病院が密かにロボトミー手術を行っているとすれば、厳重警備なこの灯台しかない。ホントかよ!! 中を調べようと急かすテディに対し、疲労が滲む相棒男は露骨にめんどくさがり同行しようとしない。しびれを切らしたテディは1人で向かうが、満ち潮で海を渡る事ができない。来る前に気付け。


相棒男の元へ引き返すとそこに相棒男の姿はなく、自らの意思で崖から降りたかのように、吸いかけのタバコが淵に置かれている。崖と見れば、人間が落ちるのがサスペンス。胸騒ぎしながら身を乗り出して覗き込むと、崖下で横たわる相棒男の姿が。やっぱり!! ピクリとも動かない相棒男の元へ決死の崖下りするテディ。ここを死ぬ気で降りたにも関わらず、確かに見たはずの相棒男の身体がない。せっかく降りてきたのに周囲はネズミの大群のネズミ王国。気持ち悪ー!! 困惑し立ちつくすテディは、崖の中ほどの洞穴から漏れている明かりに気づく。ネズミをかき分け、ネズミをかき分け、ネズミをかき分け、崖をよじ登りその穴の中へ入ると、目が落ち窪んだ中年の女性(パトリシア・クラークソン) が潜んでいた。


目が落ち窪み女は、自分が本当のレイチェル(失踪女の名前) だと言う。なんですと!! 彼女はアッシュクリフ病院の医師だったが、病院がもみ消す患者に対する不正の数々を告発しようとして、自分が患者にされてしまったため逃げ出したと言う。テディの置かれた状況をすっかり分かっている目が落ち窪み女は、病院で出された食事、水、タバコ、全てに薬が仕込まれており、テディの頭痛と幻覚の症状は、それが原因だと教える。「島に来てから本当にひとりになったことがある?」と聞かれて言葉に詰まるテディ。相棒男を信じているが、この島に来る前の彼の事を何も知らないのだ。「あなたに友人はいない」と。相棒男もグルだったのかコンチクショー。


4日目。病院へ戻ったテディは手の震えが益々酷くなり、シャワーを浴びてシャッキリ目を覚ます。密かに彼に注射を打とうと潜んでいたジジイ医師の注射器を奪い取って注射を打ってやり、ジジイ医師は昏倒。ハゲ医長の車に火を付けるため、愛する妻から誕生日に貰ったネクタイを使う。ホントは趣味じゃなかったようで。爆発の瞬間、亡き妻と収容所の少女の幻影がテディを見つめる。ネクタイを燃やすから化けて出たよ。何も車を燃やさなくてもいいのに、警備員たちの注意を逸らした隙に病院の外へ逃げ出し灯台へ急行。この時間も灯台まで陸続きではなかったが、迷わず海にドッポーン!! 水が苦手だというわりに全然平気でクロール、クロール、クロール。岸へ辿り着くと、警備員の頭をガツンガツンとブン殴りライフルを奪う。


灯台の中へ入るやいなや、螺旋階段を駆け上がり2階に踏み込む。何もない。3階、4階、5階までグルグルと駆け上っても、ベッドも、医療器具も、医師も、患者も、何もない。ていうか狭い。困惑するテディが最後の扉を開くと、デスクの前で彼を待ち構えているハゲ医長の姿が。いつから待っていたんだ。意図が掴めず銃口を向けるテディに対し、ハゲ医長は落胆の色を滲ませながら、「ライフルには弾は入っていない」と教える。そして、ゆっくりと、冷静に、彼の脳ミソに刻みつけるよう話す。「テディ・ダニエルズという人物は存在しない。君の本当の名は“アンドルー・レディス(放火魔の名前)”なのだ」と。なんですとー!!


ハゲ医長が電話をかけてから少し経ち、相棒男が入ってきた。相棒男は「私はドクター・シーハン。2年間、君の主治医だ」と言う。失踪女の部屋に隠されていたメモの「四の法則」とは、劇を演じる主人公の名前(テディ)、67番目の患者の名前(レディス)、失踪した患者の名前(レイチェル)、死んだ妻の名前(ドロレス) のことだとハゲ医長。なんだそりゃ、分かるか!! テディはレディスの、レイチェル(失踪女)はドロレス(テディの妻) のアナグラム(文字を並べ替えて別の言葉にする) で、全てはテディの妄想の産物だと教える。なんですとー!! 薬で手が震えたのではなく、飲まなければならない薬が切れたから 手の震えが酷くなったのだ。


Edward Daniels(テディ・ダニエルス)=Andrew Laeddis(アンドルー・レディス)

Rachel Solando(レイチェル・ソランド)=Dolores Chanal(ドロレス・シャナル)


全ては暗号解読に長けたテディへのヒントだった。患者名簿の提出を拒んだのはテディのカルテがあるからだ。テディはこの病院で22ヶ月間治療を重ねたが、自分が創り出した物語で主人公を演じ続け、妄想から醒めて回復しても、また、同じ状態にリセットされてしまう。この辺りの説明は映画ではなかったが、レイチェル・ソランドという名前の患者が失踪し、テディ・ダニエルズという名前の自分が捜査する。信頼できる相棒が姿を消し、崖の洞窟で真相を知る女医に会い、そして最後は病院の陰謀を暴くため灯台へ行く、という物語が何度も繰り返されてきた。


ハゲ医長がテディのカルテを差し出す。「67は誰?」の67番目の患者はテディの事。テディが手にしていながら、何故か読もうとしなかった記録。レディスの名前、年齢、収容日、そしてシーハン医師のコメント。


“患者は極めて知的で極度の妄想を抱いている。暴力的な性向が認められ、極端に苛立っている。
自分の犯罪が起きたこと自体を否定するので、自責の念はない。高度に空想的な一連の物語を作り上げていて、そのために現時点では、自分の真実の言動に直面しないですんでいる”


ハゲ医長や、職員や、偽レイチェルが現実に繋がるヒントを与え続けたが、テディが気づく事はなかった。ナチスの収容所での体験が本当かは不明だが、頭がきれて、軍隊経験のあるテディは職員や他の患者へ暴力を振るう「危険な患者」だった。2週間前にも元学生男に対して暴力を振るい彼を殺しかけた。テディの事を「レディス」と呼んだからだ。遂に病院は、テディをロボトミー手術するしかないとの結論を出した。薬物や外科手術を行わずに回復させたいハゲ医長は周囲を説得し、テディが「創り上げた物語」を現実に体験させる事で状況を認識させようとした。舞台に欠かせない嵐がやってくる「この4日間」に合わせて望みを託したのだ。いい人だったよ、ハゲ医長。


彼らが真実と語る内容を受け入れられないテディは、デスクの上にあった、最初の日に没収されたテディのイニシャルの刻印のある拳銃をつかみ取り、ハゲ医長に発砲。その身体がみるみる血に染まっていく・・・しかし弾は出ないし、ハゲ医長に怪我もない。拳銃は偽物だからだ。島へ到着した時の警戒感を露にした警備員たち、ホルスターの扱いに慣れていない相棒男、顔見知りのようにテディに手を振った患者、ありえない状況での失踪事件、職員や患者の証言、全てはテディのための芝居だった。ホントかよ。みんな演技がウマすぎるだろうと思ったが、患者や職員たちはプラスチックのバッヂをちらつかせるテディの妄想に、2年間付き合ってきていた。そりゃ慣れるよ。


テディは逃げ続けた“真実”を思い出す。思い悩んでいた妻の話を真剣に取り合わず、妻はアパートメントに放火した。医師の勧めでテディは妻を連れて湖の近くに引っ越したが、ある日、テディが仕事から帰ると、妻はずぶ濡れでポーチに座っている。3人の子どもたちの声は聞こえない。ていうか、湖の側に引っ越しちゃダメだろう。妻の濡れた身体に状況を察知したテディは湖へ向かって駆け出し、水面に浮かぶ3人の子どもたちを目の当たりにして叫ぶ。湖に飛び込み娘に近づき、収容所の幻影で見た少女の身体を抱え上げ、必死で人工呼吸を繰り返す。2人の息子と娘の遺体を岸へ上げ、丁寧に寝かせるテディに、妻は苦しみからの解放を求めすがりつく。妻がテディの銃に手を伸ばす。テディは銃をホルスターから抜き、愛する妻の下腹へ押し当て抱きしめる。そして、引き金を引いた。妻のお腹から血が溢れ出し、テディの慟哭が心を切り裂く。


病院の入口の階段でぼんやり佇むテディに相棒男が声をかける。「妻と子どもたちを救う事が出来なかったのは、君のせいではない」。しばしの沈黙が続いた後、テディは「これからどうする」と問いかけ、「ここから抜け出して家へ帰ろう」と笑う。“チャック”と名前を呼ばれた相棒男の表情が固くなり、ジジイ医師らと話し込んでいたハゲ医長に目配せし、落胆の表情を浮かべたハゲ医長の指示で看護助手らがテディの元へ向かってくる。また、記憶はリセットされたのだ。これだけ大掛かりにやってもダメかよコンチクショーだ。もはやロボトミー手術しか道はない。テディが正気の眼差しを相棒男へ向ける。「善人で生き続けるか、モンスターとして死ぬか」と。自ら進んで看護助手の元へ歩いて行く彼に、相棒男は「テディ」と名を呼ぶが振り返る事はない。その後ろ姿を相棒男が複雑な表情で見送る。おしまい。


※原作では、看護助手たちがテディの方へ歩いてくるところで終わり。テディの正気を匂わすような言動はなく、記憶がリセットされてしまっている。


※原作からの補足
1) ドロレス(テディの妻) は躁鬱病
2) 娘(夢に出てくる少女) からも、「ママがおかしい」と聞いていたが、テディは取り合わなかった。
3) 子どもたちも、ドロレス本人も危険だと精神科医師に警告されていたが、テディは無視した。
4) ドロレスが子どもたちを殺めた日の朝、テディが彼女の薬の管理を怠り大量に服用していた。
5) 「相棒が姿を消し、崖の洞窟で真相を知る女医に会う」のはテディの妄想の筋書き通り。
6) レイチェル(失踪女) は看護師