ネタバレ劇場「ミスト」

注:だいたいのところを思い出して「オチまで」テキトーに書いているあらすじです。


 『ミスト』-The Mist-
[監][製][脚]フランク・ダラボン 
[原]スティーヴン・キング『霧』(扶桑社刊『スケルトン・クルー1 骸骨乗組員』所収)
[出]トーマス・ジェーン/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ネイサン・ギャンブル/ローリー・ホールデン 
2007米/ブロードメディア・スタジオ [上映時間] 125分・R-15


この子と約束した
必ず守ると──


メイン州西部の田舎町が、かつてない激しい雷雨に見舞われた、翌朝。描きあげたばかりのハリウッド映画のポスターを、アトリエの窓を突き破った大木に台無しにされコンチクショーの主人公デイヴィッド(トーマス・ジェーン) は、自宅前の湖の上を、風上に向かって這うように進む不自然な霧に、言い知れぬ不安に駆られる。不審な霧といえば悪霊だ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏、成仏してチーン!!


火花が散る電線が蛇のようにのたうち回る庭も酷い有様だったが、亡父のボート小屋を狙い打ちでペチャンコに潰していた大木を目の当たりにし、怒りがこみ上がる。境界線トラブルの裁判でデイヴィッドが勝訴した事もあって険悪な関係となった、隣人で高慢ちきの弁護士ノートン(以下、隣人弁護士/アンドレ・ブラウアー) に、再三、伐るよう頼んでいたからだ。庭だけで100坪以上はありそうな超ゆったり仕様なのに、ご近所トラブルが!!


早速、保険の内容を聞くためコンチクショーで隣人弁護士宅へ向かうと、彼の愛車も大木でペチャンコになっていたのを知り、デヴィッドの怒りも遠退いた。でかした、嵐!! そして、5才の息子ビリー(以下、息子/ネイサン・ギャンブル) を連れて食料の買い出しへ行こうとしていたデイヴィッドは、バツの悪い顔をしている隣人弁護士が気の毒になり、彼も乗せてやる事にする。いやいやいやいや、買い物に行ってる場合じゃないのでは!!


雷雨の爪痕も生々しい通りをゆっくりと車を走らせ、隣人弁護士とのぎこちない会話も続かないデイヴィッドは、カーラジオで情報を得ようとするが雑音ばかり。“アローヘッド計画”という名のみが噂される、軍の極秘基地近くにある地元ラジオ局も入らない。ほらきた、軍の極秘基地だ。なんか余計な事をしやがったに違いない。


胸騒ぎを覚えたデイヴィッドは、スーパーマーケットへ着いてすぐに、自宅へ残してきた妻と連絡を取ろうとするが、そんなもん繋がるワケがなくて公衆電話は使えない。やっぱり!! 多くの住民が買い出しに来ており、いや〜な予感がむんむんと付きまといながらも、一刻も早く自宅へ帰るため停電中の店内で買物を急ぐ。レジもクレジットカードも使えないので会計も大混雑だ。


デヴィッドと隣人弁護士が会計を待つ長い列に加わった頃、帰宅前にスーパーに立ち寄った兵士3人を探しに来たMPが基地へ戻るよう促す。そして、けたたましいサイレンが鳴り響いたと同時に、濃霧がサーッと街を覆い始め、霧の中から現れた鼻血ブブブブブブーのジジイが、「霧の中に“何か”がいる。ドアを閉めろ・・・ドアを閉めろ!! 」と店内へ駆け込むむ。駐車場にいた人たちの姿が霧に消えて行く。


鼻血ブージジイの只ならぬ様子に、反射的に入口付近にいた人々がガラス扉を閉めた次の瞬間、霧がスーパーを覆い尽くし、店を揺るがす衝撃波に、商品棚が倒れ、電灯が落下し、人々が膝からくず折れる。やがて、ゆっくりと立ち上がり窓に近づいた人たちは、目の前に停まっているはずの車すら見えない濃霧に言葉を失う。変わり者で有名な骨董品店店主のミセス・カーモディ(以下、狂信的ババア/マーシャ・ゲイ・ハーデン) は、霧と揺れだけでもう結論が出ていて、小さく呟く。「死よ・・・」ホントかよ!!


「知人が霧の中にいた“何か”にさらわれた」とショック状態の鼻血ブージジイの狼狽ぶりと、携帯電話が通じず、情報が一切入らない状況に、店内にいる80人ほどの人たちは店から出る事を躊躇う。何かってなにー!! 待ってましたとばかりに皆へ向け、聖書を出して「この世の終わり」を説く狂信的ババアは嘲笑を浴びるばかり。


幼い娘と息子を自宅に残して買物に来ていた若い母親(以下、若い母親) は、店内にいる者たちに自分を送ってくれるように頼むが、息子を抱きかかえ断るデイヴィッドを含め、顔見知りの誰もが彼女から目を逸らす。当たり前だ。皆は霧が晴れるまでここで待つよう説得するが、 「あんたたち、地獄へ堕ちろ」と、自分が子どもを置いてきたクセして逆ギレ!! 1人で帰れバカ!! 外なんか出られるかバカ!! 憎しみの眼差しを向けた若い母親は霧の向こうへ消え、店内は安堵と重苦しい空気に包まれる。


ママに会いたいと恐怖に脅える息子に熱があると気づいたデヴィッドは、顔なじみのでこっぱち副店長(以下、でこっぱち副店長) に声をかけ、新任女性教師(以下、女教師/ローリー・ホールデン) と知人バアさんに息子を預け、毛布を取りに1人で奥の倉庫へ入って行く。主人公じゃなければいきなり死ぬとこだ。


倉庫内には冷蔵装置を動かしていた発電機の異臭が充満しており、デヴィッドがスイッチを切ると、シャッターに“何か大きな生き物”が激しくぶつかる音に思わず息を飲む。ドシャーン!! なに? ドシャーン!! なに? ドシャーン!! なにーーーーー!? 相当な力が加わったシャッターは内側に大きくたわむ。つーか、店舗正面に行けばガラス窓なのに!!


毛布どころではなく店内へ駆け戻ったデヴィッドは、でこっぱち副店長、生意気な若者店員、オヤジ労働者2人に説明するが、バカにされるだけで誰も信じない。その目で見ろコンチクショーと彼らを連れて倉庫へ戻るが、シャッターは静まり返ったまま、外に何かがいる気配はない。いまぶつかってこい、コラー!! オヤジ労働者に大卒のチキン野郎とすっかりバカにされ、彼らの関心は悪臭の原因となった発電機の排気の詰まりへと移り、デヴィッドの制止も聞かずに、若者店員が倉庫の外へ出ると軽〜く請け負った。この状況で、何で外へ出ようとするか!!


頑に“何か”の存在を受け入れようとしないオヤジ労働者2人は、未熟な若者店員を焚き付けて行くように仕向け、必死で止めるデヴィッドを振り切り、若者店員がシャッターを開け外へ出ようと屈んだ・・・瞬間、大きなヌルヌル生物の触手が若者店員の足を絡めとり、勢いよく引き倒した。どうやら、静かに待っていたらしい。


腿肉を深くえぐる傷を負った若者店員が叫びながらシャッターの淵にしがみつき、咄嗟に駆け寄るデヴィッドの目の前に、ひと抱えはあるギザギザの触手が、パックリと口を開けて襲いかかる。ヌラヌラした灰色の巨大な昆布怪物!! 次々とシャッターの下から入ってくる触手を避け、若者店員の上半身を抱きかかえるデヴィッドが手伝うよう叫ぶが、オヤジ労働者2人は固まったまま動けない。このバカ!! 手伝うかシャッターを閉じるか何かしろバカ!!


ジリジリと若者店員の身体が外へ引っ張られると、全く頼りにならない風貌のでこっぱち副店長が触手を飛び越えて壁に走り、ケースをブチ破って斧を取り出し、猛ダッシュで駆け寄り触手に斬り掛かる。やるよ、でこっぱち!! しかし、太い触手は斧でも切断できず、また数が多すぎて近づく事もままならず、上映時間的にかなり長い時間頑張ったが、ついにマジ泣きの若者店員が勢い良く霧の向こうへ連れ去られた。でこっぱち副店長がシャッターを閉じる。向こう見ずな若者を行かせた大人たちの軽卒さに怒りを抑えきれず、オヤジ労働者を殴り続けるデヴィッドの腕を、でこっぱち副店長が優しく止める。閉じたシャッターで千切れた触手と血痕を残し倉庫に静寂が戻る。


恐怖と罪悪感に苛まれ、ビールをがぶ飲みするオヤジ労働者2人を横目に、冷静になったデヴィッドはでこっぱち副店長と相談し、まずは信頼されそうな隣人弁護士に話をして、皆に外に出ないよう説得してもらおうと考えた。ところが、労働者の多いこの街で余所者の隣人弁護士は、デヴィッドらが自分をからかって笑い者にしようとしていると決めつけ化け物の話を信じない。ニューヨークの敏腕弁護士である彼は、非現実な話を信じる事を自分に許さないのだ。外へ出てみろバカ!! 帰りは車に乗せてやらないぞバカ!!


隣人弁護士作戦に失敗したデヴィッドは、でこっぱち副店長とともに触手の部分はぼかして、外に出ては危険だと皆に訴えた。鼻血ブージジイも「確かに“何か”がいた」と同意し、酔っぱらいオヤジ労働者2人も話は本当だと言うが、皆の反応は鈍く、店の隅で隣人弁護士が鼻で笑う。でこっぱち副店長から店舗正面のガラス窓を指摘され一刻を争うデヴィッドは、店長だけを連れて倉庫へ戻り、この世の生き物とは思えない触手を見せる。店長が棒で突ついた途端に触手は溶けてシュルルルル〜。いやいや、見てから消えてくれて助かった!!


店長が皆へ警告した事で、デヴィッドに賛同する客たちが協力し合い、店舗正面の窓ガラスを塞ぐためペットフードを積み上げた。そんなものでは到底防げない事を知るデヴィッドも、他に方法がなく、後は女教師の護身用の拳銃と弾が24発あるだけ。しかし、でこっぱち副店長が射撃の州チャンピオンになった事があるいう、その場にいた全員が失礼なくらいに驚いた希望もある。誰よりも弱々しげなでこっぱちが一番の頼りだ。


軍隊が救出に来る気配もなく、いつの間にか化物の存在否定仲間を集めていた隣人弁護士が、ここを出て行くと言い出す。ああもう、行くなら自分だけで行け!! せっかく彼との関係を修復できると思っていたデヴィッドは引き止めるが、隣人弁護士の決意は変わらず「助けを呼んできてやる」と豪語。お前が助けてくれって叫ぶ方だろ!! デヴィッドは「せめてどこまで行けたか」を知るため腹部にロープを巻かせてくれと頼み、勇気ある1人のジジイが快諾し、7〜8人の男たちが霧の向こうへ消えて行く。あーあー。


ゆっくりと減っていくロープの残りから彼らが進んだ距離を計り、期待を込めてデヴィッドらが息を飲んで見つめる中、短い叫びとともにもの凄い力でロープが引っ張られ、でこっぱち副店長らが必死に店内へ引き戻す。いやいやいやいや、引き戻したら恐ろしい状態になってるから、手を放した方がいいって!! と脳ミソが考える間もなく、引かれては、引き戻し、引かれては、引き戻してを繰り返し、唐突に抵抗のなくなったロープを恐る恐るたぐり寄せると、べっとりと血が絡み付いている。ひえー!! もう止めとけというのにまだまだ引っ張り、スパーンとキレイな切り口を露にしたジジイの腰から下だけが、ゴロンゴローンと店の前に転がってきた。ジーパンが無傷なのが恐ろしい。


これで外へ出ようとする者はいなくなり、静まり返った店内で、狂信的ババアが神だ、罪だ、犠牲が必要だと、益々熱弁を振るい始める。お前がその身を捧げとけ、ババア!! 「夜になれば襲って来る」と大威張りで予言し、その他大勢の人たちをビビらせる。そんなの私だって言えるし!! 母親を求め指しゃぶりを始めた息子を抱きしめるデヴィッドには、妻と連絡する手段がない。そもそも、アトリエの窓が大木で割れたまま、家を出てきてしまったのだ。


夜になり駐車場のライトが点灯しても、已然霧は深く何も見えない。デヴィッドと仲間たちが交代で正面のガラスの見張りを続けていたが、置いていたランタンの明かりに吸い寄せられるように、30センチはある虫が次々と張りついた。うげっ!! 黙示録を唱える狂信的ババアがイナゴの襲撃だと叫ぶ。取りあえず、めんどくさいこのババアを外へ放り出しとけ!! デヴィッドの指示で皆がランタンを消したが間に合わず、今度は大人の身長くらいはありそうな怪鳥が、デカ虫を丸飲みし霧の中を飛び交う。ホントかよ!!

ついに破れた窓ガラスからデカ虫が入り込み、デヴィッドが棒でブン殴る、ブン殴る、ブン殴る、ブン殴る、レジ係の若い女が喉を噛み付かれ絶叫。店内へ侵入した怪鳥が、男性の腸を喰いちぎり、パニックに陥った人たちが狭い通路を我先に逃げ惑う。デヴィッドがモップに引火しやすい液体(ガソリン? 分かんないけど店にあったもの)を染み込ませ松明代わりに振り回しても、デカ虫たちは火に怯まない。それどころか、彼に続いてモップに火をつけようとした男がバケツを蹴飛ばして火だるまになる。なにやってんの、もー!! デカ虫が飛び、怪鳥が飛び、燃え上がる通路で火だるまの男が転がり、手のつけられない状態にデヴィッド呆然、店内騒然。もう、成す術なし。


そこへ、でこっぱち副店長が冷静に拳銃を構えて怪鳥を追いかけ撃つ、撃つ、撃つ。お前が頼りだ、でこっぱち!! がしかし、弾を使い過ぎ。節約して、節約。デヴィッドが忙しいため1人で逃げていた息子に怪鳥が襲いかかる寸前、でこっぱち副店長が撃ち殺す。喉を噛まれたレジ係の若い女性は、スイカのように顔を腫らして死に、腸を喰われた男も既に死んでおり、火だるま男は全身に酷い火傷を負う。


生き残った者たちに恐怖が蔓延する中、狂信的ババアだけが目を爛々と輝かせ、聖書と現状をこじつけ、神の言葉を伝える者として話し続ける。うるさくて眠れないだろバカ!! ついに、1人の女性が彼女に救いを求めたその夜、女教師とともにデヴィッドを見てくれていた知人のバアさんが、薬の過剰摂取で自殺した。店内には鎮痛剤しかなく、このままでは激痛に苦しむ火だるま男は死ぬ。デヴィッドは責任感から薬を手に入れるため、スーパーの入口からほんの10mくらい隣にある薬局へ行く決意。死も覚悟し息子を女教師に託す。


でこっぱち副店長の懸念通りに、翌朝には狂信的ババアの信者が数人に増えていた。口に出せない皆の恐怖が狂信的ババアの糧となり、その生命力は増し、見た目も若くキレイになっている。うっそ、ちょっと羨ましいぞ。勢いを増したババアは、薬局へ行くというデヴィッドらの行為が、店内にいる者たちを危険にさらすと激怒。恐怖と疲労に思考力を失った者たちは、なんだかババアの言い分が正しいような気がして、彼女に賛同する者が目に見えて増えていく。だー、もう!!


狂信的ババアはシカトして、デヴィッド、でこっぱち副店長、オヤジ労働者2人、元教員バアさん、鼻血ブージジイ、レジ係の若い女の彼氏だった青年兵士(以下、彼氏兵士)、火だるま男の弟、あと死にキャラの2人の合計9人でスーパーを出る。自分の姿すら見えない深い霧の中、ゆっくりと壁に沿って進み、薬局の前でデヴィッドの足が竦む。停電となり、薬局では扉を開け放っていた。もう、化物が入りたい放題だ。霧が押し寄せた時に薬局にいた者たちは一人残らず死に絶えており、とにかく大急ぎで薬をかき集めていた彼らが異変に気づき壁を見ると、霧が迫る直前に兵士を迎えに来たMPが、生きたまま白い糸で壁に捕われていた。今度は蜘蛛もどきだ。


「全ては自分たちのせいだ・・・」と洩らすMPの身体が硬直し、白目を剥いてガタガタ激しく痙攣。出るよ、出るよ、何か出るよー!! 皆が来るのを待っていたかの如く絶妙なタイミングで破裂した身体から、ミニミニ蜘蛛もどきがザバザバーと溢れ出した。おっと、予想外に小さかった。


そして、奥に潜んでいた1メートルほどの大蜘蛛もどきがのっしのっしと姿を現し、蜘蛛の糸をピューッ!! 蜘蛛の糸をピューッ!! 蜘蛛の糸をピューッ!! ミニミニ蜘蛛もどきが男に襲いかかり、その小さい歯で肉を喰いちぎり、全身を覆い尽くす。オヤジ労働者の1人の口が糸で塞がれて窒息死し、火だるま男の弟の腿に大蜘蛛もどきの酸を含んだ糸が絡み付き、肉が溶け絶叫。うぎゃー!! でこっぱち副店長が大蜘蛛もどきに発砲、撃つ、撃つ、撃つ。いやいや、無理、無理、無理!! 火だるま男の弟を抱きかかえ、出口へ向かったデヴィッドらの前に大蜘蛛もどきが現れ、元教員バアさんが殺虫剤とライターの即席火炎放射器で炎がゴーーーーーーーッ!! 大蜘蛛が死に、次に襲いかかる大蜘蛛もどきに、槍を手にした鼻血ブージジイが一発で刺し殺す。さすが年寄りコンビは肝が座ってる。


顔面真っ青けで死んでいた火だるま男の弟を薬局に残し、死にものぐるいで逃げたデヴィッドらが、スーパーの店内へ駆け込む。狂信的ババアを増長させるように、薬局へ行った者たちは6人に減っていた。女教師は生け贄が必要だと演説を繰り返す狂信的ババアを前にしても「本当の悪人などいない」と人間を信じて疑わない。バカか、この女は。「僕を怪物に殺させないで」と息子が訴え、「必ず守る。必ずお前を守ってやる」とデヴィッドが強く抱きしめる。怪物とは霧の中に潜むものなのか、それとも人間なのか。取りあえず狂信的ババアを一刻も早く黙らせないと!!


デヴィッドはMPが残した言葉の意味を聞き出すため、彼氏兵士とともに他の2人の兵士を探し、倉庫で首を吊っていた彼らを発見。彼氏兵士を問い詰めても「アローヘッド計画で、何かトラブルがあった」としか分からない。店内へ戻った彼らを狂信的ババアらが取り囲む。オヤジ労働者が薬局でのMPの言葉を狂信的ババアに報告していたのだ。いまや、店内のほとんどの人間を味方にしていた狂信的ババアは他の者たちを煽動し、リンチを受けた彼氏兵士が「アローヘッド計画とは、“窓”を通して異次元を観察するもので、事故によりその窓が開いてしまった」のだと白状。なんじゃそら!!


ツッコミどころは気にしない狂信的ババアは、戦争から中絶話まで持ち出し熱弁を振るう絶好調で、神の怒りを鎮めるため、彼氏兵士を神に差し出すよう言い放つ。デヴィッドらは男たちに取り押さえられて動けず、この街で生まれ育った皆が知っている彼氏兵士を、精肉売り場のオヤジが包丁で腹を突き刺し、オヤジ労働者が背中を突き刺し、別の男がもう1度腹を突き刺し、その身体を抱え上げ、スーパーの外へ放り出した。ガラス扉を叩く彼氏兵士に、中にいる者たちの視線はぞっとするほど冷たく、血の掌の跡を窓に残し、勢い良く霧の中へさらわれ短い叫びが途絶える。


次は息子が犠牲になると確信するデヴィッドは、息子、でこっぱち副店長、女教師、鼻血ブージジイ、元教員バアさん、店長、あとオヤジ1人の8人で、霧からの脱出を試みる事を決意。デヴィッドの車は7人しか乗れないが、出たトコ勝負だ行ってしまえ!! ていうか、車までそんなに辿り着けるワケがない。でこっぱち副店長が密かに食料をレジ台の下へ用意しており、比較的、虫の襲撃も少ない翌朝早くに出発を決める。いやもう、でこっぱち副店長は馬車馬の活躍だ。


翌朝、ほとんどの者たちがまだ寝ている店内を、デヴィッド一行が静かに入口に向かうと、レジ台の下に隠した食料を抱え、瓶入りの牛乳をゴクゴク飲んでいる狂信的ババアが寝ずの番で出迎えた。その牛乳、発電機が止まって腐ってるんじゃないかと思うが、ババアはお構いなしだ。デヴィッドは努めて冷静に「自分たちはここを出て行く」と告げるが、狂信的ババアは「私たちの食料を盗もうとしている」と大声で皆を呼ぶ。いつからお前の食料になったんだ、このババア!!


仕方なく食料を諦め、相手を刺激させず出て行こうと急ぐが「生け贄を出て行かせるわけにはいかない」とババアが指示し、精肉売場男やオヤジ労働者たちが包丁を構えて、デヴィッドを取り囲む。うそー!! 狂信的ババアが生け贄を捧げよと皆を煽り、デヴィッドらを取り囲む輪がジリジリと狭まる。ああもう、なんで!! なんで!! なんでー!!


パーン!! 乾いた音とともに牛乳瓶が割れ、驚愕の表情を浮かべた狂信的ババアが、血の広がる自分の腹を見た。でこっぱち副店長が撃ったのだ。ああもう、でこっぱちサイコー!! 彼は躊躇わずにもう1発撃ち、狂信的ババアの眉間を撃ち抜く。カーッ!! よくぞ殺してくれた。あー、清々した。


人を殺したショックに混乱するでこっぱち副店長を「自分たちを救ってくれた」のだとデヴィッドが抱きしめ、拠り所を失った者たちは振り上げた凶器を手放し、出て行くデヴィッドらを静かに見ている。デヴィッドの車は20メートルくらい先に停めてあった。ああもう、入口近くに停めておけよバカ!! 拳銃を構えたでこっぱち副店長を先頭に、息子を抱きかかえたデヴィッド、女教師、年寄り2人と走り、殺されるの間違いなしのオヤジと店長が遅れて続く。


一寸先は霧で何も見えないというのに、迷わずデヴィッドの車に辿り着いたでこっぱち副店長が次々とドアを開け、絶叫とともにその身体が持ち上がる。シルエット的にはバルタン星人のような生物に、恐ろしい目に遭っているらしき音が、バキボキバキボキ、血しぶきがどぱしゃー!! 拳銃だけがボンネットに落ちた。鉄は食えないらしい。呆然と立ち尽くしていたデヴィッドが弾かれたように息子を車に乗せ、女教師、年寄り2人が乗り込む。方向を見失ったオヤジが襲われ血がどぱしゃー!! その叫び声を聞いた瞬間、店長は即座に店へ駆け戻り、中にいた者がガラス扉を開く。みんな正気に戻ったか。


運転席に座ったデヴィッドはボンネットの拳銃に一瞬躊躇い、女教師が必死で止めるのも聞かず、ドアを開けて身を乗り出し拳銃を掴み取る。自分たちに必要になる事が分かっていたからだ。助手席には息子を膝に乗せた女教師、後ろに鼻血ブージジイ、元教員バアさんを乗せ、車が動き出す。ペットフードのバリケードが消え一面ガラス張りが露になったスーパーマーケットの前を、ゆっくりと車が通り過ぎていく。もはや頼るものすらない絶望的な者たちと、微かな希望に懸けたデヴィッドたちの視線が絡み合う。しかし、拳銃に残っていた弾は4発。1発足りなかった。あの時、ババアを1発で仕留めておけば!!


自宅へ辿り着いたデヴィッドは、ガラスの砕けたアトリエの近くの壁に、蜘蛛の巣に巻かれ息絶えた妻を見つけ涙ぐむ。ガソリンが続く限り走り続ける。霧が晴れるかも知れない。軍隊が救出に来るかも知れない。しかし、“その時”が来たら、安らかな死を迎えられるように拳銃を使うと、デヴィッドが女教師と年寄り2人に約束する。


横転した車が続く通りを、少しでも長く走れるように走らせ続けていたデヴィッドは、下から突き上げるような大きな振動に車を停める。一定間隔で大きさを増して行く、足音による振動の度に車が弾む。車内に戦慄の沈黙が満ち、無言のまま空を仰いだデヴィッドらは、高層ビルのようにそびえ立つ6本の足の上に、東京ドームの何個分かサイズの、無数の触手が蠢くとんでもなくバカでかい昆虫系の生物に息を飲む。デカすぎだろ!! うすら長い足が繰り出す一歩が大きいため、あっという間に去って行ったが、この圧倒的な存在を前に人間が生き残れるわけがなかった。


スーパーを後にしてからどのくらいの時間が経ったのか、ついにガソリンが尽き、車が止まる。こんなところで!! 女教師は抱きしめている息子に悔しさを滲ませ、鼻血ブージジイと元教員バアさんは「やるだけの事はやった」と納得し、デヴィッドが4発立て続けに発砲。ていうか、あまりに早撃ちなのに驚いた。


弾の尽きた拳銃をくわえ胸をえぐる慟哭の後、車外に出て異次元の生物に呼びかけ無惨な死を待ちわびるデヴィッドの耳に、それらの気配や足音に代わって、別の音が近づいて来る。僅かに薄くなった霧の向こうから、軍の車列と歩兵隊員が見えた。
ええええええええええぇーーーーーーーー!!

デヴィッドらが来た方角からみるみる霧が晴れていき、軍のトラックの荷台には生存者たちが乗っていた。

ええええええええええぇーーーーーーーーーーーーーー!!

スーパーで地獄へ堕ちろという捨て台詞とともに霧に消えたあの若い母親が、幼い男の子と女の子を両脇に抱き、デヴィッドに皮肉な眼差しを向ける。
ええええええええええぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


立ち尽くすデヴィッドの横を車列が通り過ぎ、上空にヘリコプターが飛び交う。おしまい。


ちなみに、原作ではスーパーを脱出したのは、デヴィッド、息子、女教師、元教員バアさん、店に逃げ帰るジジイの5人で、店長は職務を全うすると店に残る。最後まで霧は晴れず、生存者と会う事もなく、巨大生物との“遭遇”の後、どこかの建物で皆が寝ている間に、自宅に近づけなかったため安否不明の妻を思い、ガソリンの尽きるその時に思いを巡らせ、日記に全てを記すところでおしまい。他には、地獄へ堕ちろの若い母親はスーパーを出たところで死に、彼氏兵士のエピソードと異次元の窓のくだりはそっくり映画オリジナルで、原因は明らかになっていない。


キングの小説を映画化した「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」のフランク・ダラボン監督による3本目。「ザ・フォッグ」や「サイレント・ヒル」と比べると、霧はいまひとつパッとしなかったけど、ホラー監督とは全く違う心理描写を丁寧に描いて感動すら覚える“恐怖”の説得感。コレ、コレ、キングの面白さはコレなのよー!! と映画が終わった瞬間、叫びたいくらい面白かった。


が、宣伝コピーにもあった“震撼のラスト15分”に、うなだれて劇場を後にする人たちの足取りの重いこと、重いこと。原作に付け加えられたラストは、犯罪とは無縁の善良で責任感の強い主人公の「正しいと思う行動」が、死ぬ事以上に苦しめられるキングの小説の流れを汲んでいて、むしろ原作より好き。狂信的ババアが死んでくれて良かったと、心底胸を撫で下ろしている自分を思い知らされる。どのキャラクターも魅力的で深い。冒頭、アトリエにあったデヴィッドが描いたポスターは、狂信的ババアの眉間を撃ち抜く場面への伏線で、「ペイルライダー」ではないかと。