ネタバレ劇場「スルース」

※だいたいのところを思い出してオチまでテキトーに書いているあらすじです。


『スルース』-Sleuth-

[監][製]ケネス・ブラナー 
[原]アンソニーシェーファー 
[出]マイケル・ケイン/ジュード・ロウ
2007米/ハピネット [上映時間] 89分・PG-12


男の嫉妬は世界を滅ぼす。


著名な推理作家アンドリュー・ワイク(以下、ジジイ。マイケル・ケイン)が暮らす、ロンドン郊外の豪邸。監視カメラが、広大な敷地へ滑るように入ってくる、中古のシトロエンを追っていく。ジジイの妻と同棲中のイケメン俳優マイロ・ティンドル(以下、俳優。ジュード・ロウ)が、ゴネていたジジイからついに離婚の意思を伝えられ、約束通り1人で訪れたのだ。見るからに殺されるパターンだ。


新車のベンツの隣にチンケな中古車が止まる様を監視カメラは捉え、妻を寝取られた男と、寝取った間男が初対面する。ジジイですら見惚れる、剃り込み型危険領域突破の若ハゲでも色男の俳優は、現在は失業中で、顔色がみのもんたばりに澱んで目が死んでるジジイを見ても、離婚してもらえると信じている、不穏な空気を読めない甘ちゃんだ。


全てがリモコン操作のハイテク屋敷に、モダンアートの美術館のような内装は、妻のデザインによるものだという。スケスケのエレベーターがあるにはあるが、ヘタに転んだら脳天カチ割りそうで、年寄りの足腰には辛かろう。


一目で軽薄な俳優を値踏みしたジジイの自慢や世間話が延々と続き、初めのうちこそ下手に出ていた俳優だったが、ちくちく繰り出される嫌味と尊大な振る舞いに次第にイラつき、のらりくらりと話をはぐらかされているうちに、もしかして、離婚する気がないのでは? と思いはじめる。やっと気がついたか。


そうと分かれば、恋人(ジジイの妻)から聞かされていた、ジジイの自尊心を粉微塵にするセックスに対する不満を教えて優位に立ち、とっとと離婚に合意しやがれコンチクショーと迫る。ところが、ジジイは、「離婚はするが、贅沢三昧の妻を養うには売れない俳優では大変だろうから、金庫にある100万ポンドの宝石を君が盗み出し、自分が指定する質屋で還元してはどうか? 」と持ちかけるのだ。胡散くさっ!! ものすっげ胡散くさっ!!


ちなみに約2億円。バカでも引っかからないような突拍子もない申し出に、さすがに能天気な俳優も、自分を泥棒にして罠にかけようとしていると疑うのだが、「保険に入っているから安心していい。自分はこれから愛人と暮らす」という、全く信用出来ないジジイのご親切な提案を受け、ほんの数秒迷っただけで、妙に納得させられてしまうのだ。もう、分かりやすいほど、顔がその気になっている。救いようのない単細胞だ。


早速、無線でジジイの指示通り、豪邸の外壁に梯子をかけ、命からがら屋根に上がった俳優は、警報装置のない天窓をブチ破る。ガシャコーン!! 天井から不安定な縄梯子を使い、必死に降りる俳優の滑稽な姿を、監視カメラの映像でジジイが冷たく眺める。室内へ戻った俳優は、それらしく演出するためという理由で拳銃を持たされ、夫婦の結婚記念日だという暗証番号で金庫を開けてもらい宝石を受け取り、拳銃を返す。2億円って、どんだけスゴイ宝石なのか想像もつかない遠い話で、石鹸くらいバカでかい石がどーん!! かと思いきや、カラフル〜な小さい石びっしりのネックレス、ブレスレット、イヤリングの3点セット。なんだか10万円と言われても分からない。


宝石を手に取り無邪気に振り返った俳優は、無表情のジジイが構える拳銃に凍り付く。ほらきた。呆然と立ち尽くす俳優から、宝石を奪い返したジジイはそれを丁寧に金庫へ戻し、俳優をベッドの上に立たせて威嚇発射し震え上がらせた。相手はジジイなんだから1発食らう覚悟でブチのめしたれ!! 二度と彼女と会わない事を誓う俳優に、ジジイは2発目の威嚇発射。恥も外聞もなく、必死に命乞いを繰り返す俳優に3発目が発射され、その身体が崩れ落ちた。上映時間の残りはどうなる!!


それから3日後。自分の作品を映像化したテレビドラマを眺め、余裕かまして寛いでいたジジイの屋敷に、小汚い隙っ歯に腹ブヨブヨのむさ苦しい刑事が現れ、俳優がジジイとの約束を記したメモにあった日から、行方不明だと告げる。刑事の顔をはっきりと映さないが、左頬の2個のホクロで変装した俳優なのだが、そうとは気づかないジジイは刑事が1人で来て、令状もなく勝手に屋敷内を歩き回る事も疑問に思わず、ジジイも知らない血痕や俳優の衣類一式を指摘され激しく動揺。刑事は拳銃を見つけ出すとジジイに銃口を向けて、壁の銃痕を示し厳しく問い詰める。


刑事に恫喝され、グイグイ羽交い締めにされたジジイは、俳優に撃ったのは空砲で失神しただけだと白状。殺してないなら堂々としてればいいのに、ジジイ狼狽えまくり。ぶるぶる震える無様な姿をさらし、ジジイの威厳も見る影なくなったところで、カッカッカッ!! と高笑いの刑事が顔から腹からヒゲからヅラから次々と変装を解き、俳優が正体を明かす。ヅラを取ると、より一層若ハゲだ。ていうか、俳優はこの演技と美貌で、何故、仕事がないのか。


血痕や自身の服は昨夜、忍び込んで仕込んだものだと勝ち誇る俳優と、自分が貶めた男に醜態をさらし銃口を向けられる立場となったジジイ。ジジイの素直な賞賛の言葉も、脅され、命乞いをし、空砲で気絶した屈辱を拭いされない俳優は、宝石泥棒を逆の立場で再現させ、ジジイに宝石を身につけさせてからかう。あーあ、単純な能天気さが魅力の俳優も、すっかり屈折してしまった。


ジジイに屈辱感を与え満足した俳優は、「これで1対1」になったと突きつける。あんたたち、バッカじゃないの。3セット目の始まりを告げる俳優に、もともと妻の事などどうでもいいジジイは「2人でこの屋敷で暮らし、潤沢な財産で世界を旅しよう」と提案。またかよ!! ジジイの提案に思案する俳優。ああもう、また騙されそうだ。


ジジイの提案を受け入れ、ベッドに横たわりその身をジジイに預ける俳優。なんでいきなり!! 傷つき繊細な姿をさらけ出した俳優にジジイが近づき、優しく顔から髪をはらう。と、唐突に俳優がジジイを罵倒。なんだ、どうした。狼狽えるジジイに、今のは演技で、ジジイの破廉恥さを罵る俳優。彼は屈辱感を与えたかっただけだっだ。ジジイ、ショックでかし!!


少し前に彼女(ジジイの妻)から電話を受けた俳優は、彼女がジジイの元へ戻ると言っていたと教え、2人で仲良く暮らすよう吐き捨てる。ジジイは妻など愛してはいないと必死に引き止めるが、俳優は拳銃を置いて背を向け、拳銃を掴んだジジイが発砲、俳優が倒れた。


妻の運転する車が敷地内へ入り、俳優の死体を乗せたエレベーターが降りて行き、孤独を露呈させたジジイの目から涙が零れ落ちる。おしまい。オリジナル「探偵スルース」(72)は未見。★★