2月鑑賞の映画

■『パラノーマル・アクティビティ』★☆
デイ・トレーダーのミカ・スロートと、大学生のケイティー・フェザーストンは、一軒家で暮らす若いカップル。8歳の頃から就寝中に何者かの気配を感じていたケイティーは、この家に越してから再び始まった異変に怯え、ミカは寝室にビデオカメラを設置する。そこには怪現象が映っていた…。


わずか1万5千ドルの製作費で全米興行収入1億ドル! これ以上怖い映画は作れないとスピルバーグがリメイク断念!! との宣伝文句の投網にまんまと引っかかり鑑賞。スパナチュのウィンチェスター兄弟を呼べば1話45分で解決するような超コンパクトな話で、自力で原因を究明しようとするミカの奮闘により出演者はたった3人。そんな状況にも関わらず毎夜爆睡できる2人に驚きつつ、寝ているだけの蒼いビデオ映像をひたすら観せられる。怖い映画かといえば、怖くはない。画面が揺れに揺れて頭が痛くなる。


■『ラブリーボーン』★★
1973年12月6日、米国ペンシルヴァニア州。野生生物写真家になる夢を持ち、温かい家族に囲まれ幸せな生活を送っていた14歳のスージー・サーモン(シアーシャ・ローナン) は、学校からの帰り道に近所に住むミスター・ハーヴィ(スタンリー・トゥッチ) に殺された。この世に未練を残す彼女は、天国と地上との間に存在する“中間の地”へ辿り着く。ここでは何でも願いが実現したが、地上の人たちへ思いを伝える事だけは叶わない。スージーはここから愛する家族や、初恋の相手レイ(リース・リッチー) の姿を見守り続ける。


行方不明の娘の死を受け入れた父親ジャック(マーク・ウォールバーグ) は、彼女のために窓辺に明かりを灯し続け、妻アビゲイル(レイチェル・ワイズ) とそりが合わない、クレイジーな彼女の母(スーザン・サランドン) を呼び寄せ、12歳の妹リンジーと4歳の弟バックリーは日常生活を取り戻す。捜査に進展のないまま11ヶ月の時が流れ、犯人探しに妄執するジャックは残された家族の心を見失い、ついにアビゲイルは家を出てしまう。やがて、スージーが撮り溜めていたフィルムから、ジャックは風変わりな隣人ミスター・ハーヴィが犯人だとの確信を抱き、秀才のリンジーも彼に違和感を抱くが…。


原作もヘンな話だったけど、大胆な脚色を期待した映画もいまひとつヘンな話。とりあえず、凡人の私には理解しがたい原作の場面は全てカットされ、あれでは観客の共感を得るには無理だと監督も判断したのか無難な仕上がり。伏線を張りながらもサスペンスが展開しない点は同じ。ジャック以外の家族の心情はなおざりで、『殺された女の子の妹』と思われたくないリンジーが名字を隠したり、バックリーが父親に怒りを爆発させる場面はない。天国の映像は素晴らしい。


普遍的な家族の絆を描く定石通りの心地よさはなく、深く傷つきバラバラになった家族が再生する過程や、自らの死を受け入れるスージーの純粋な心の成長を期待すると、桁外れにガッカリすると思う。あと、傷ついた家族は、スージーがいないところで大きく成長した“愛すべき骨”(ラブリーボーン) であって、字幕の“美しい骨”じゃワケ分かんないですよ、戸田奈津子先生。


■『Dr.パルナサスの鏡』★★★★☆
2007年、英国ロンドン。悪魔(トム・ウェイツ) と取引を交わして“不死”となり、生も根も尽き果てた枯れた老人1000歳の座長パルナサス博士(クリストファー・プラマー) 率いる、彼の理解者である小人症の男(ヴァーン・トロイヤー) 、博士の美しい娘ヴァレンティナ(リリー・コール) 、彼女に思いを寄せる曲芸師のアントン(アンドリュー・ガーフィールド) の貧乏旅芸人一座。人が心に隠し持つ欲望の世界を、鏡を通った者に実体験させる“イマジナリウム”を出し物にしていたが、世知辛い日常を生きる現代では、チンケなペラペラの鏡が生み出す夢物語になど誰も興味を示さない。悪魔に娘を引き渡す取引期限が3日後に迫りパルナサス博士の苦悩が深まる中、一座はある夜、橋の下で首を吊るされていた記憶喪失の男トニー(ヒース・レジャー) を救う。彼こそが取引の重要な鍵だと思えたパルナサス博士だが、何も知らないヴァレンティナはトニーに心奪われる…。


ヒース・レジャーの急死で4人1役となった事が絶妙なスパイスとなって、次々と味が変化する変わり玉キャンディーのような新鮮さをキープ。腐れ縁の悪魔とのやり取りや、鏡の中の迷宮でのちょい毒の匙加減が楽しく、ほろ苦い喜びと小さな希望に包まれるエンディングが好き。スペシャルゴージャス助っ人となったジョニー・デップジュード・ロウはそつなくこなし、近年コントロール不能コリン・ファレルはちゃんと仕事してた。スーパーモデルのリリー・コールは、艶かしいカエル顔の目ヂカラと、まんまるオッパイの吸引力で観客を丸飲みする存在感。


■『パーフェクト・ゲッタウェイ』★★★
地上の楽園ハワイに新婚旅行にやってきた、駆け出しの脚本家クリフ(スティーヴ・ザーン) と、シドニー(ミラ・ジョヴォヴィッチ) 。“神が創った美しい袋小路”と呼ばれるビーチを目指して2泊3日のトレッキングに出発した2人は、イカレたヒッチハイカーのカップルのケイル(クリス・ヘムズワース) とクレオ(マーリー・シェルトン) を置き去りにし、好印象でアウトドアに長けたニック(ティモシー・オリファント) とジーナ(キエレ・サンチェス) と出会い行動を共にする。しかし、オアフ島カップルを殺害した男女2人組が、この島へ来ているという噂を耳にしたクリフとシドニーは不安を募らせ、携帯電話の電波も届かなくなる…。


ピッチブラック」「アライバル-侵略者」「ビロウ」と、一風変わった世界観と魅力的なキャラクターでガッチリ心を掴むも、どうにもあと一歩感が漂うデヴィッド・トゥーヒー監督の新作は、大筋は面白いが小筋は超テキトーで、やっぱりあと2歩くらい惜しい。誰もが分かる場面になってやっと真相に気づく、脚本家喜ばせの勘の鈍い私としては、なんですとー!! のちゃぶ台ひっくり返しの展開で、視点が変わる中盤からスリリングな肉弾戦へ突入。後半のスティーヴ・ザーンは「くしゃおじさん」の如く顔が上下に縮み、とにかく、痛い、痛い、リアルに痛い場面のつるべ打ち。