7月鑑賞の映画

■『アイ・アム・ナンバー4』-I Am Number Four- ★★★


[ストーリー] 凶暴な種族“モガドリアン”の侵略により、故郷を追われた9人の子ども達は世界各地へ散らばり、それぞれの守護者1人とともに、その素性を隠して、街から街へと移り住む生活を送っていた。逃げ続ける人生に鬱屈するジョン・スミス(アレックス・ペティファー) は、人里離れた地に隠れ住んでいたナンバー3の死を感じ取り、次は“ナンバー4”である自分の番だと予見する。


全ての痕跡を消し、オハイオ州の田舎町へ移り住んだジョンは、父親代わりの守護者ヘンリー(ティモシー・オリファント) の忠告を聞かずに高校に通い始める。登校早々トラブルを起こすが、他人と距離を置くサラ(ダイアナ・アグロン) に強く惹かれ、父親が消息不明のサム(カラン・マッコーリフ) と友情を深めていく。やがて、ジョンの秘められた特殊能力が覚醒し、彼らを執拗に抹殺しようとするモガドリアンと、単身で仲間を探し続けるナンバー6(テリーサ・パーマー) がジョンの所在を突き止めるが・・・。D・J・カルーソ監督、110分。


[コメント] つい最近、こんな設定の映画がなかったっけ? と思い浮かぶ、出だしはヘイデン・クリステンセン主演「ジャンパー」+大筋はクリス・エヴァンス主演「PUSH 光と闇の能力者」。設定だけで突っ走る、こういう大雑把で緩い映画は大好きだ。偽名と髪を染めるだけで全120話も逃亡生活したキンブル博士と同じく、偽名と髪を染めるだけで正体を隠してるつもりか!! のジョンの派手な容姿と特殊能力は、現代のアメリカでは動画投稿サイトで映像が流れまくり、正体バレまくり。多分、鑑賞者の誰もがイラつくと思う「米国ドラマのパイロット版」みたいに中途半端なまま終わるので、映画としてはもの足りないんだけど、「HEROES」とか「4400」とか、“選ばれし者たち系”が好きな人ならオッケー。短時間で観られる映画は楽なので嬉しい。ハナから続編前提で、今作に登場するのは熟練した女戦士ナンバー6だけ。謎を残したままこれっきりになる作品が多いので、1作目が成功してからにして欲しい。


ところで、人類を皆殺しにする予定のはずのモガドリアンたちは、優れた科学力と身体能力を持ち合わせているはずなのに、オタクにジョンの居場所を聞き出したり、乗用車とトラックでのんびり向かう。似たようなモノならその辺で手に入れられるのに、わざわざスーパーに立ち寄りちゃんとお金を払って買ったりするのだ。レジに並んで買ってる場合か!! そして、几帳面にも9人をナンバー順に殺していこうとする。ジョンの特殊な能力は、今のところ車のエンジンをかけたり、車を持ち上げたり、エネルギーを注入したり出来るんだけど、手から出る蒼白いビームが懐中電灯代わりになる時が1番役立つ。干し草の荷馬車に乗ってお化け屋敷を巡る「ホーンテッド荷馬車」の場面が楽しい。主演のアレックス・ペティファーは、5年前には「アレックス・ライダー」で陰のあるワイルドな少年だったのに、イヤ〜な感じの広告モデル顔(モデルもやってるそう) に成長していてかなり微妙。


■『ラスト・ターゲット』-The American- ★★★★


[ストーリー] スウェーデンの人里離れた雪原で、殺し屋のジャック(ジョージ・クルーニー) は、何者かの襲撃を受けるが射殺、一緒に滞在し関係を持った女も撃ち殺す。ローマへ飛んだジャックは、組織の連絡係が指示した潜伏地を避け、小さな町“カステル・デル・モンテ”に移り住む。他者との関わりを避ける日々で、彼を気遣う神父との静かな交流や、娼婦のクララ(ヴィオランテ・プラシド) と親しくなるものの、常に疑惑と警戒がつきまとう。組織から狙撃銃の改造を依頼され、女殺し屋マチルデ(テクラ・ルーテン) がジャックの元を訪れてくるが・・・。マーティン・ブース「暗闇の蝶」原作、アントン・コービン監督、105分。


[コメント] のっけから息を詰めてしまう緊迫感の中、トーシロかよ!! と思う殺し屋たちに、ゴルゴを読んで出直して来いと心配したけど、これはこれで現実的だと思えてくる。ラストまで緊張が途切れず、心地よく疲労困憊。人物の背景を一切描かず、観客に感情移入させる渋い演出がいい。地味とも言えるので好みが分かれそう。追跡する者が丸分かりの石畳での追跡劇、狙撃銃の改造場面&試し撃ち、七変化の美貌の暗殺者マチルデ、疑心暗鬼になる主人公の焦燥と葛藤がバッチリ絡み合う。この映画に出てくる殺し屋たち全員が、若干がっかりするくらいに仕事が甘いので、派手なアクション映画を期待すると完全に外すと思う。補正とか透け防止とか垂れ予防とか一切気にしない、ピクニックの時に着ていたクララの服に驚くこと必至。なんだかんだで、格好いい男にしか見えないジョージ・クルーニーが主演でなければ、あと★半分は上がったかも。邦題は酷い。ラストは原作と違う。


■『Super8 スーパーエイト』-Super 8- ★★★★★


[ストーリー] 1979年、夏。4ヶ月前に母親を亡くした少年ジョー(ジョエル・コートニー) は、仕事人間で保安官の父ジャクソン(カイル・チャンドラー) と、オハイオの小さな町で暮らしていた。ジョーと仲間たちは、スーパー8カメラで自主映画の撮影を続けていたが、その夜の無人の駅舎での撮影にはアリス(エル・ファニング) も加わり、エリア51から“何か”を運んでいた貨物列車の脱線事故に遭遇する。すぐさま軍によって隔離された現場から逃げ帰ったジョーたちは、誰にも話さないと誓い合うが、その日以来、町中の犬が一斉に消え、盗難事件が相次ぎ、行方不明者が続出する。町の異変に気付いたジャクソンは、軍のネレク大佐(ノア・エメリッヒ) が隠す事実を探ろうとするが・・・。J.J.エイブラムス監督、111分


■『127時間』-127 Hours- ★★★★


[ストーリー] 週末にブルー・ジョン・キャニオンでキャニオニアリング(峡谷探索) していたアーロン(ジェームズ・フランコ) は、岩とともに滑落し、右腕を岩と壁に挟まれ身動きが取れなくなってしまう。誰にも行き先を告げておらず、軽装の上に不十分な装備を頼りになんとか脱出を試みる中、家族との関係や自分の人生を振り返るが・・・。登山家アーロン・ラルストンの自伝『奇跡の6日間』原作、ダニー・ボイル監督、94分。


[コメント] 広大な大地を疾走する眩いばかりの躍動感と、秘密の場所で自然を謳歌する無限のエネルギーに満ちた序盤から一転、自由を奪われ、生命の限界となる5日と7時間の苦闘を描く。1人ぼっちで半径2mの動きの僅かな状況で、中弛みなく最後まで惹きつける監督の手腕に脱帽。所持品のビデオカメラが映し出す、アーロンの記憶、妄想、願望、痛恨が問答無用で共感を呼び、壮絶な決断を実行する姿が胸を熱くする。本人が生きているんだし、最後は「それしかない」と想像して観ないつもりの人の為に言うと、たった1本しかないナイフが、よりにもよってバターナイフのようになまくら!! 腕を切ろうとしてもかすり傷ひとつ出来ないので、是非とも劇場で。ところで、腕を挟まれるとかそれ以前に、視界360度に自分ひとりしか居ないという、渓谷のだだっ広さに戦慄してしまう。幼い子を連れたハイカーもいて仰天。携帯も繋がらないのに!!


■『マイティ・ソー』-Thor- ★★★


[ストーリー] 神の国<アスガルド>で最強の戦士のソー(クリス・ヘムズワース) は、神々の王で父でもあるオーディン(アンソニー・ホプキンス) の命令を無視し、ソーを護衛する三銃士(うち1人が浅野忠信) と女戦士シフ、弟のロキ(トム・ヒドルストン) を伴い、氷の巨人の国ヨトゥンヘルムへ攻め込む。自惚れが強く、無用な戦乱の危機をもたらしたソーにオーディンは怒り、彼の力と最強の武器“ムジョルニア”を奪い、地球へと追放する。


異世界とのワームホールを研究していた天文学者ジェーン(ナタリー・ポートマン) と仲間たちは、嵐の空から突然現れたソーに困惑し、興味を抱く。力を奪われアスガルドへ戻る事が叶わないたソーは、人間としての暮らし方を覚え、ジェーンは彼に大きな影響を与えていく。その頃、オーディン不在の神の世界の征服を目論む者が、ソーの暮らす小さな町へロボット兵“デストロイヤー”を送り込む。アスガルドを救い、ジェーンや人類を守るため、ソーは立ち上がるが・・・。ケネス・ブラナー監督、115分


[コメント] “ソー”と呼ぶより、雷神トールの方がしっくりくる。近年、映画化が続く「神絡み」の大作映画の中では、笑顔がチャーミングのクリス・ヘムズワースが断トツ大成功。王位継承とか、親子の確執とか、結局のところ親馬鹿じゃんとか、敵の存在感が薄すぎるとか、物語などあってないようなもの。ソーのやんちゃで馬鹿正直、単純明快のキャラクターが痛快で、あっという間に皆の事を考えられる「素直な大人」へと成長する。ウィル・スミスの「ハンコック」だってもっと迷惑をかけてたというのに、神社会とのカルチャーギャップもそこそこに、米国生活に慣れるのが早くて勿体ない。「オレ様ヒーロー」の宣伝コピーは大間違い。


トンカチ1本の戦いはヴィジュアル的にどうかと思ったけど、飛ぶし、馬乗るし、マッチョだし、なかなか格好良かった。神々がやたら人間くさい。虹の橋の門番は面白い。今後の物語に絡むジェレミー・レナーカメオ出演。「アイアンマン」「ハルク」や、今後公開する「キャプテン・アメリカ」と共に結成されるマーヴェルのヒーロー軍団『アベンジャーズ』の一員となるソー。DCコミックのヒーロー軍団『ジャスティスリーグ』も地球人は少ないけど、さすがに神は別格。よっぽど強い敵を用意しないと。


■『ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える』 -The Hangover Part II- ★★★★


[ストーリー] 歯科医のスチュ(エド・ヘルムズ) の結婚を祝うため、フィル(ブラッドリー・クーパー)、自称“専業ニート”のアラン(ザック・ガリフィアナキス)、ダグ(ジャスティン・バーサ) そして、新婦の弟で医学生のテディ(伊藤淳史似) が、タイのリゾート地へ同行する。仲間に割り込んだテディを快く思わないアランは、子どもじみた嫌がらせをするが、一行は無事タイに到着。ラスベガスでの「最悪の二日酔い」の失敗を踏まえ、バチェラー・パーティを回避したスチュだったが、悪友たちとたき火を囲んで「ビールを1本だけ」酌み交わす。


そして翌朝。薄汚れたホテルの一室で、酷い二日酔いで目を覚ましたフィルは、テディのものと思われる切断された指を見つけ、アランは丸刈り、式を控えたスチュの顔にはタトゥーが彫られていたのだ。行方不明のテディの代わりに、お調子者の友人チャン(ケン・チョン) と、ベストを着た猿が1匹いるが、彼らには昨夜からの記憶が一切飛んでいた。唯一、ホテルに戻っていたダグは何も知らず、結婚式が翌日という状況の中、彼らは僅かな手掛かりを頼りにテディを探そうとするが・・・。トッド・フィリップス監督、102分


[コメント] 前作『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』は未見。どうやら全く同じ展開らしい。軽いノリの映画かと思いきや、記憶のない時の行動にいちいち納得のいく人物造形が完璧。悪ノリの匙加減も絶妙。これでR-15になるなんて厳しいなぁ。人間の哀しみと可笑しみを間で観せるザック・ガリフィアナキスが脇役最強。人生の哀愁を背中にしょってる猿も演技が上手すぎ。伏線をきっちり全て回収し、偏見による誤解と拒絶から互いを理解しようと歩み寄る、意表を突いて清々しいエンディングもウマイ。記憶の飛んだ時間の出来事を、写真で見せていくエンドロールには笑いっぱなし。


■『赤ずきん』-Red Riding Hood- ★★★


[ストーリー]狼と協定を結び、動物の生贄を捧げる事で平和が保たれてきた、深い森の中にある小さな村。満月の夜には決して出歩いてはならない。協定を結んでるんじゃないのか。村一番の美しい娘ヴァレリー(アマンダ・サイフリッド) は、「貧乏だがワイルドなイケメン木こりのピーター」と将来を誓い合っていた。しかし、うだつが上がらない夫との結婚を悔やむヴァレリーの美貌の母親(バージニア・マドセン) がイチ押しする、「裕福だが優柔不断のイケメン鍛冶屋ヘンリー」と結婚させられそうになり、駆け落ちを決意。その矢先、美人ではないヴァレリーの姉が惨殺される。姉はヘンリーに想いを寄せていたのだ。


狼の襲撃に脅える村人は、妻を殺された人狼ハンターのソロモン神父(ゲイリー・オールドマン) に退治を依頼する。部下とともに重装備で警戒する神父の隙を突き現れたバカでかい狼は、村人たちを次々と襲う。神父はこれはただの狼ではなく、普段は人の姿で村人に紛れている「人狼」だと断言する。そして、満月の夜に人狼に噛まれた者は死なず、人狼になってしまうと言うのだ。村人が互いに疑心暗鬼に陥るなか、神父は人狼に襲われないヴァレリーに不審を抱き、そして満月の夜を迎えるが・・・。キャサリン・ハードウィック監督、100分

[コメント] 果たして人狼の正体は誰だ? 伏線もばりばり張ってあったというのにヤラレタ!! という、私の読みが外れていたのとは関係なく、お化け屋敷のような悪者不在の甘さがどうも面白くない。下界と隔絶された村の設定も、閉塞感が感じられず、村人の疑念が伝わってこない。超絶妖艶美貌のカエル顔の赤ずきんちゃんが人々を惑わす、欲望渦巻くアダルト向けホラーサスペンスかと思いきや、思わないよ!! 同監督「トワイライト」の逆パターンを行く、なんだかんだで結局は清潔で美しい恋愛ドラマ。ヴァレリーをガツガツ奪い合う事なく、相手の気持ち最優先の弱腰の男2人はどちらも印象薄い好青年で、木こりでも鍛冶屋でもどっちでもいいじゃん勝手にやっとけという感じで。アマンダ・サイフリッドの赤マント姿の妖しさは、いちいち目を奪われた。