2月鑑賞の映画感想

■『キック・アス ジャスティス・フォーエバー』-Kick-Ass 2-  ★★★

■『エージェント:ライアン』-Jack Ryan: Shadow Recruit- ★★★☆

■『マイティ・ソー ダーク・ワールド』-Thor: The Dark World- ★★

■『スノーピアサー』-Snowpiercer/雪国列車-  ★★☆


[あらすじ] 2014年夏、地球温暖化を食い止めるため、世界各国の大気圏上層部で人工冷却物質が散布された。その結果、地球は氷河時代に突入した。もはや地上に人類の居住できる場所はなく、ウィルフォード(エド・ハリス) が建造した、永久不滅のエンジンを持つ“走る箱舟”「スノーピアサー」に乗車できた人々だけが生き延びた。


それから17年後の2031年。スノーピアサーは雪と氷に覆われた地球を1年で周回し、前方車両の富裕層が地上と変わらぬ優雅な暮らしをする一方、無償で乗車を許された貧困層が、窓さえない最後尾車両で、飢えに苦しみ自由を奪われていた。


最後尾車両の男カーティス(クリス・エヴァンス) は、過去に失敗した2度の反乱である事を確信し、革命の機会を狙っていた。長老ギリアム(ジョン・ハート) や、地上の世界を知らずカーティスに憧れる青年エドガー(ジェイミー・ベル) に皆の運命を託され躊躇っていたが、少年2人が先頭車両の者に連れ去られた事でついに決断。車両毎の強固な扉を解放すべく、スノーピアサーのセキュリティの設計者ナムグン・ミンス(ソン・ガンホ) を探す。彼はこの列車独自のドラッグ“クロノール”中毒で監獄車両に収監されていた。


カーティスと利害が一致したナムグンと、不思議な力を持つ彼の娘ヨナ(コ・アソン) が仲間に加わり、エドガー、ギリアムの護衛グレイ(ルーク・パスカリーノ)、息子を連れ去られた少年の母親ターニャ(オクタヴィア・スペンサー) 、同じく息子と右腕を奪われたアンドリュー(ユエン・ブレムナー) らが前方の車両へ急ぐ。尊大なメイソン総理(ティルダ・スウィントン) が差し向けた暗殺者(ヴラド・イヴァノフ) との死闘を繰り広げ、カーティスは独裁者ウィルフォードのいる先頭車両を目指すが・・・。フランスのコミック「LE TRANSPERCENEIGE」原作、ポン・ジュノ監督。


[感想] 列車全体の74%を占める、無償で乗車が許された最後尾車両の者たち。そりゃあもう、食料か燃料しかなかろう。・・・と、思いきや!! 氷河期の地上を走り続ける列車という、ムチャな設定が面白すぎる。どこか地上の1カ所に住める場所を作った方が簡単だと思うが。色々なツッコミ所満載で、1年にいっぺんしか通過しない線路のメンテナンスは全くしない。巨大な氷の塊で塞がれた線路も、真正面からドカーン!! とブチ壊す。その名の如くスノーピアサー。脱線したらどうする!! 永久不滅のエンジンとは何だ。驚く事に説明はないのだ。


最後尾車両向けの膨大な食料の原料(かなり大変そう)、トイレが1度も映らず(ウンコ・リサイクルが不明)、労働者が極端に少なく、エンジンの交換部品の調達(すぐ使い物にならなくなりそう)、監獄車両の壁一面に並ぶ死体安置所の引き出しのような独房(列車の横幅はどんだけ!)、車両毎の扉の開閉は、配線をバチバチっとやるだけ。セキュリティ設計者を探したのに車泥棒レベル!! 水族館車両にはエイが泳ぎ、寿司カウンターにはマグロもふぐちりもワサビもある。


クリス・エヴァンスのキャラクターは魅力がなかったが、アカデミー賞女優2人を含む豪華な脇役はこの世界観にバッチリ。ティルダ・スウィントンの高慢ちき女は完璧で、入れ歯を外す場面には笑った。意表を突きすぎて。なぜ外す!? カーティスらの行く手を阻む兵士が、手斧で魚の腹をかっ捌く様を見せつける場面もビビらされる。食糧難だというのに!! ワイルドでセクシーなイケメン青年グレイが、イ・ビョンホンばりにシャツを脱ぎながら猛ダッシュかまして戦闘に加わる姿は無駄にカッコイイ。何でわざわざ上半身裸に!! 彼の格闘シーンよりも見せ場を作るのが、ブルジョワな不死身の暗殺者 。このチョイ小太りのオッサンが壮絶強くて興奮する。ハリウッド映画とはまるで雰囲気の違う映画で中盤までは好き。クライマックスの直前のカーティスのひとり語りが長過ぎた。希望のエンディングなど、地上最強の肉食動物を前に絶望にしか見えず。


■『ウルフ・オブ・ウォールストリート』-The Wolf of Wall Street-  ★★★


[あらすじ] 80年代のウォール街。学歴もコネもなくLFロスチャイルドに入社した22歳のジョーダン・ベルフォート(ディカプリオ) は、株式ブローカーの資格を取得した当日に“ブラック・マンデー”で失業。美容師の妻の支えもあり小さな投資家センターへ転職した彼は、人の心を掴む天性の話術で、無価値のペニー株を売り捌き手数料を荒稼ぎしていく。月収が8万ドルを超えた26歳の時、初対面のジョーダンの収入に明け透けに興味を示すドニー(ジョナ・ヒル) をパートナーにし、投資に疎いがセールスが得意の男たちを仲間に引き込み投資会社を設立。大富豪に狙いを定めたビジネスモデルを武器に、瞬く間に社員700人を抱える大企業へと成長させていく。


欲望の赴くままドラッグとセックスに明け暮れるジョーダンは、パーティで美貌のナオミ(マーゴット・ロビー) に一目惚れし、妻を捨て再婚。刺激と欲望の乱痴気騒ぎは際限なく続く。やがて、年収4,900万ドルを稼ぎ出す億万長者へと上りつめた彼は、“ウォール街のウルフ”とマスコミにもてはやされ時代の寵児となる。そんなジョーダンの不正の尻尾を掴もうと、FBIの堅物捜査官デナム(カイル・チャンドラー) が動き出すが・・・。「ウォール街狂乱日記ー「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生」原作、マーティン・スコセッシ監督、179分。


[感想] 実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの回顧録を基に映画化。超特急で成功し、過激に遊び、豪快に浪費し、派手に転落するまでの10年間を描く。上映時間の3時間の間、女の裸(ボカシ)、セックス、札束、ドラッグが延々と、延々と、延々と!! 延々と続く。22歳で既に結婚していた貯金のない生活や、ナオミの家族、仕事外の友人知人が一切登場せず、ベルフォートの人間性や、彼がどこを目指していたのかは皆目分からない。


豪邸、ヘリコプター、高級車、クルーザー、馬など、形に残る浪費は面白くなかったが、再婚前のバチェラー・パーティ1回では、行きの飛行機から後始末まで締めて2億円と大暴れ。この映画の中のジョーダンは、血が下半身に集まり脳みそカラッポのアホ。その変態エロガッパ姿を演じるディカプリオも大暴走。法律を犯すが悪人ではない、自分の欲望を隠さない、弁解もしないという自由奔放の魅力的なロクデナシ。


ドラッグで朦朧としながら、ヘリを操縦をして豪邸へ帰宅してしまう。ドラッグを止めるか、ヘリの操縦を止めるか、野原を目指して不時着しようとか、そんなしみったれた常識など考えない。幾度となく訪れる本気でまずい状況に際して、迷わずドラッグをキメて立ち向かう。やってる場合か!! 事態が好転するか更に悪化させるか、どちらへ転ぶか予測不能。バカだなーと笑って、心底ドン引きして、悲壮感もない。


光り輝く人に惹き付けられてしまうのが凡人の性。ジョーダンに対して「(親の影響はなく)自分で選んで悪事を悪事と思わなくなった。よくやった、と褒めてやるべきなのか?」と、当てこすりを言っていた公僕デナム。逮捕しても全然嬉しそうじゃない。地下鉄通勤のデナムの目に映る、日々の暮らしに疲弊した人々の姿。刑期を終えたジョーダンのセミナーは満席で、欲の眼差しを向ける人々のエンディングの余韻が効いている。僅かな出番ながら強烈な印象を残すマシュー・マコノヒーが面白い。