電池

シンクとバスルームの蛇口が固くなった。両方とも水の方だけ。ちゃっぽーん・・・・・・・・・ちゃっぽーん・・・・・・・・・と、ビミョーな間を開けて水が漏れてくる。ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ、ポタポタ、ポタポタポタポタポタポタ、うるせーよ!! くらいに、
もれなく垂れるようになったら電話しよう。と、思って放置したまま数ヶ月。


ある日、突然便座が割れた。U字型のプラスチック便座の片側の真ん中辺り。パリーン!! と派手な音がして、尻が5ミリくらい真下に落ちた。びっくりした、びっくりした、びっくりした。便器でフリーフォール体験!! 便座に尻を任せて脱力してる時だけに本気で驚いた。


私がこの賃貸マンションに引っ越してきてから15年。その時、便器は新品ではなかったから、最低15年以上は誰かの尻を乗っけてきた。あなたがちょうど10万回目のご使用です〜パリーン!! みたいな。ちょうど良かった。大家に頼んで蛇口と一緒に直してもらおう。


くまなく見た感じ便器は無事。便座を取り替えてもらうまでの間、片輪走行ならぬ片尻方式で用を足せるかなぁと本気で考えた。取りあえず、ダクトテープでぐるぐる巻きにして繋いでみる。巻いていた時から思ったけど、座った感じは割れた事に気付かないくらいしっかりくっ付いた。米国テレビドラマや映画で、拘束から車の修理まで何でも活躍するだけあってスゴイぞ、ダクトテープ。便座が割れた時のために、一家に1巻、買っておいて損はなし。そんな事態は滅多にないですか。そうですか。


あまりにもダクトテープ繋ぎの調子が良かったので、時々巻き直しては1ヶ月くらい使ってた。一時しのぎすぎだろ!! いい加減、交換しないとダメだなぁと観念し、2部屋隣に住んでいる大家へ電話した。大家は75歳くらいのジイさんで、何か頼むとすぐに対応してくれる。「水道の蛇口が2箇所と、便座が割れたのと、エアコンの調子が悪いんですよ〜」と、全部まとめて言ってみる。「壊れる時はいっぺんに壊れるって言うからね。」と大家。いやー、もろもろ5年くらい前から、順を追って調子が悪かったんだけど。あははははー。


数日後。大家が部品を持ってやって来た。大家が修理するのか!! 若干、心配になったので「その道の人」なのか聞いてみたら、誰でも簡単に修理できますよ、との事。そうなんだ!!


まずはシンクの蛇口から。手元が暗いので、シンクの真上にある電気の紐を引っ張る大家。カチャン、カチャン、カチャン、カチャン、カチャン、カチャン、点かねーよ(大家の心の声、代弁)。あ、ソレ10年くらい前に点かなくなってそのまま放置してました。「言ってくれればすぐに交換するのに。」と大家。そうなの!? ラッキー!! 大家が電球を外すと、ワット数が剥げて読めなくなってた。


暫くして大家がそれらしき電球を持ってきて、バッチリ点灯。おお、明るい!! それからやっと蛇口に取りかかる。大屋がシンクとバスルームの蛇口のパッキンを交換している間、私は外した蛇口の掃除をしていた。「最近、車に撥ねられて20メートルも飛んじゃった。でも怪我ひとつしなかった。凄いよね〜。」と大家。・・・ってホントかよ!! ちょっとちょっと、本当は死んでるんじゃないのか大家。あの映画か!!


トイレは大家が便座を買ってまた来る事になる。便器を見た大家は、「ああ、コレね。」と一瞥し、型番のメモも取らずに帰宅。やはり築30年。そこら中の部屋の便器も壊れてきているに違いない。数日後、大屋が2,730円の値札がついた便座を持って現れた。わーい、新品だー。か、しかし、箱のイラストを見た瞬間、こういうの音痴の私でも気がついた。形が全然違う!!


箱には返品不可の注意書き。時すでに遅し。大家さん、開けちゃってますけど!! 私が何も言わずに見守っていると、ダクトテープで繋いであった割れた便座を外した大家が、新しい便座を手に取った。「おや? もしかして合わないか? 」もしかしてじゃなくて、間違いなく合わないよ!!


便座に合わせてみるまでもなく、明らかに大きい。そして、蝶番の部分の幅が5センチは違う。大家は、買ってきた便座を丁寧に、丁寧に、丁寧に箱に戻すと、「ちょっと探してくる。」と出て行った。どこに探しに行く? 大家!!


10分後。明らかに昭和の香りのする便座と蓋を持って、大家が戻ってきた。ちょっと、ちょっと大家さん、自分の部屋のを外して持ってきたんじゃないよね? ね? 蓋には中古で落ちない汚れがついていたものの、ウンコとかじゃないよ!! 便座は未使用のようだった。良かった。無事、便座の交換も終了。


そして残るはエアコン。さすがに大家が作業員を連れてきた。言うまでもないと思うけど、私は機械オンチなので故障内容の説明がしどろもどろ。夏も冬も送風が出てくる事があって、1日くらい使わずにいると、暖房も冷房もちゃんと動いてる。と、いうような説明をした。


作業員と大家が揃って「コンセントは入ってるの?」と聞いてきた。そのレベルなのか、私!! 作業員がチェックする。「コンセントは入ってるね。」信じてないよ、この人!!


作業員と大家が揃って「リモコンの電池は大丈夫?」と聞いてきた。作業員がチェックする。ピピッ「スイッチは入るみたいだね。」本気で信じてないよ、この人!!


作業員「うーん、“冷房運転” にしてますか?」何を言うか!!
私「あはははは〜。ちゃんと冷房か確認してますよ〜。」作業員の目が完全に疑ってる!!


全身から故障より私を疑っているオーラを漂わせた作業員は、一応何かの機器を使って調べてた。
大家は何をするでもなくぶらぶらとしている。


「最近、車に撥ねられて20メートルも飛んじゃった。でも怪我ひとつしなかった。凄いよね〜。」と大家。


それ、一言一句違わず先週聞いたよ、大家!! そうこうしてる間に点検終了。「問題はないようなので、リモコンの電池を交換しておきましたから。」と作業員。まだ電池言うか!! 3年前から調子が悪いのに!!


私「また、調子が悪くなったら、その時にすぐに電話します。」
作業員「・・・そうして下さい(目がそんな事はならないだろう、と言ってる)」


チクショー!! 真夏の超絶忙しい時に「今すぐ修理に来て」って電話してやるから、ドライバー洗って待っとけ!!


ところが、それ時以降、エアコンから送風が出てくる事はなくなった。うそー!! それから1ヶ月くらい経つものの、1回も送風が出てこない。うそー!! 電池なの? 電池なの? 電池なのー!! 毎日、問題なく運転しているエアコンが、何かものすごく不満なんですが。頼む、ちょっと壊れてみて。