7月鑑賞の映画感想

■『リンカーン弁護士』-The Lincoln Lawyer- ★★★★


[ストーリー] 高級車リンカーンの後部座席をオフィス代わりに、L.A.の裁判所をハシゴする無名の刑事弁護士ミック・ハラー(マシュー・マコノヒー)。社会のはみ出し者を顧客に細かく報酬を稼ぎ、司法取引で刑期短縮に持ち込む戦略を得意とする。離婚した妻で検事のマギー(マリサ・トメイ) や娘とも良好な関係だ。


ある日、馴染みの保証金立替業者ヴァル(ジョン・レグイザモ) から“簡単に稼げる仕事”だと紹介されたミックは、女性への暴行事件の容疑者で資産家の息子ルイス(ライアン・フィリップ) の弁護を引き受ける。ところが、担当のやり手検事ミントン(ジョシュ・ルーカス) が、確実な証拠を押さえているにも関わらず、ルイスと息子を溺愛する母親は頑に司法取引に応じない。無実を訴えるルイスに困惑するミックは、親友で情報屋のフランク(ウィリアム・H・メイシー) に調査を進めさせる中で、過去にミックが司法取引させ服役中のマルティネス(マイケル・ペーニャ) の事件に辿り着くが・・・。マイクル・コナリーリンカーン弁護士』(講談社文庫刊) 原作、ブラッド・ファーマン監督、119分。


[コメント] 主演作品は数あれどパッと顔が思い浮かばない男、マシュー・マコノヒー!! ラシュモア山の胸像みたいな元イケメンの嫌な野郎顔が、ちょいワル・ちょい善・ちょい犯罪も厭わない異端弁護士にハマリ役。出番は少ないながらも強烈インパクトなのが、名前と顔は分かるのにパッと代表作が思い浮かばない男、ウィリアム・H・メイシー。粉ふきいもがとうもろこしの皮を被って出てきたかのような風貌にかなり驚く。職業倫理と正義との間で袋小路の主人公が、汚い手を使ってでも悪党を容赦しないというスタンスが面白い。やり手のはずの検事と犯人がショボイものの、ミックのキャラクターは魅力があるので続編に期待。ジェームズ・ウッズ主演「SHARK カリスマ敏腕検察官」が好きな人にお勧め。


■『メリダとおそろしの森』(2D日本語吹替版) -Brave- ★★★★☆


[ストーリー] 中世スコットランドのとある王国。愛馬アンガスで森を駆り、弓を射ることが得意の王女メリダ(声:大島優子)。好奇心旺盛で自由奔放の彼女は、母エリノア王妃に求められる王女としての素養に窮屈さを感じ度々衝突する。ある日、王国の伝統に従い選ばれた3人の結婚相手候補(うすらバカ、うすらぼんやり、うすらナルシスト) との話を進めるエリノア王妃に反発したメリダは城を飛び出す。自由を望み、鬼火に導かれるまま森の奥へと進む彼女は、熊の木彫りだけを作り販売している陽気な“森の魔女”と出会い、「母の考えを変えて欲しい」と願う。しかし、森と人間の間には、魔法を使ってはならないという掟が存在した。かつて掟が破られ、王国が滅びた伝説があるのだ。


森の魔法によって動物に姿を変えられたエリノア王妃は、人の心を失いつつあり、更には、やんちゃな幼い三つ子の弟たちまでが魔法にかかってしまう。2回目の夜明けまでに魔法を解かなければ、永遠に人間の姿には戻らない。メリダは魔法を解く鍵があるという森の奥深くへと向かうが、王国で恐れられる獰猛な熊モルデューが彼女に襲いかかる・・・。マーク・アンドリュース監督、100分。短編アニメーションを2本同時上映。「トイ・ストーリー3」のその後を描いた「ニセものバズがやって来た」、人知れぬ家業を知った少年の成長を描く「月と少年」。これがまたジ〜ンと胸に沁みる。素晴らしい!


[コメント] メリダの赤く長いカーリーヘアの表現力にびっくり。心情や状況で変化する髪のなんと繊細な事か。スクリーンに手を伸ばして思わず触ってみたくなる。「輝け! 2012年ベスト髪演出大賞」間違いなし。なんだそりゃ。森の魔女バァさんの木彫り作品がいちいちウケる。欲しい!! この魔女バァさんがとんだ食わせ者で、魔法は「アレ」に変えるだけ。2例しか描かれないけど、全く違う事を願っているのに「アレ」に変わるしかない。それだけならそう言ってよ、魔女バァさん!! メリダも危うく「アレ」になるとこだ。


そして、魔女のメッセージを聞いて「アレ」を修復すれば、母の魔法が解けると思い至るメリダ。そんなワケがなかろう!! どうしてそんな考えになるんだ。ところがコレが大正解。ホントか。ホントに「アレ」の修復でいいのか。それも相当ざっくりで。やんちゃな三つ子の弟たちが、あるモノで熊の影を見せる場面が楽しい。ただ、三つ子は魔法にかからない方が良かった。母とは違いどうやって魔法を解くのか考えながら観ていたら、どさくさで万事解決しているってどうなんだ。悪者不在でも冒険にワクワク、アクションにハラハラ、物語のテンポもいい。エンドロール中にメリダがお買い上げした熊グッズの続きがある。


■『ネイビーシールズ -Act of Valor- ★★★☆


[ストーリー] 南米の麻薬王クリスト(アレックス・ヴィードフ) と、東南アジアの国際テロリスト、アブ・ジャバールとの関係を探るため、CIAエージェントのモラレス(ロゼリン・サンチェス) が、コスタリカで医師に扮し潜入捜査をしていた。何者かの襲撃を受けCIAエージェント(ネストール・セラノ) が殺害され、モラレスが拉致される。急を要するモラレス奪還の任務に、ネイビーシールズのローク大尉率いる“チーム7”が就く。その際に入手した情報から、米国を標的としたテロ計画が明らかになるが・・・。ウサマ・ビンラディン暗殺を遂行した米海軍特殊部隊「Navy SEALs」の全面協力の下、本物の兵器、本物の戦術、本物の装備、現役SEAL隊員を起用した、最強の精鋭による新感覚戦闘アクション。スコット・ウォー、マウス・マッコイ監督、トム・クランシー製作協力、110分


[コメント] 小型偵察機レイヴン搭載のカメラ映像、水上船からの大口径のマシンガンの連射、映画「ブラックサンデー」チョッキバージョンの、全方位型の対人兵器の破壊力(伏せただけで無傷なのは驚いたが)、正確無比のスナイパーの命中シーンなど、全ての映像が極めて鮮明、全ての状況をもれなく堪能、全ての作戦シーンがサービス満点!!


隊員たちの日常のドラマ部分も若干あって、現役隊員たちがフツーに地味な俳優くらい自然な演技なので驚いた。なんと言っても、作戦遂行シーンのホンモノ感はホンモノ!! 動きが簡潔で的確で無駄がない。制作者の狙い通りに本当カッコイイ。隊員がモラレス(エレナ・デルガド役でお馴染み)に質問する場面には、「いいから早く連れていけ」と心の中でツッコミまくるほど心拍数激速!! 心底緊張した。クライマックスはゲームのようで、前半の任務の方が興味深い。潜水・水上作戦をもっと見たい。手榴弾のエピソードは実話らしい。例によって余所の国で無茶苦茶やるというか、なんだかんだで皆殺し。


■『崖っぷちの男』-Man on a Ledge- ★★★★


[ストーリー] ニューヨーク、マンハッタンのルーズベルトホテル。21階の眺めの良い部屋へ偽名でチェックインした男ニック・キャシディ(サム・ワーシントン) は、窓枠を乗り越え地上60メートル、幅35センチの庇に降り立つ。飛び降り自殺を期待する野次馬たちで騒然とする中、NY市警の交渉人ジャック(エド・バーンズ) が説得を試みるが、ニックは女性交渉人リディア(エリザベス・バンクス) を指名する。彼女はその前月に説得に失敗し、警官を飛び降りで死なせたばかりだった。


ニックの素性が明らかになる頃、特殊部隊の突入を指示する市警官ダンテ(タイタス・ウェリヴァー)、ニックの元相棒マイク(アンソニー・マッキー)、スクープを狙うTVリポーター(スージー・モラレス) が、それぞれの思惑を胸に動き始める。ニックの弟ジョーイ(ジェイミー・ベル) とその恋人アンジー(ジェネシス・ロドリゲス) は、破産の危機を免れた実業家デイヴィッド・イングランダー(エド・ハリス) の所有するビルへと向かうが・・・。アスガー・レス監督、102分


[コメント] 予告編を観た時には全く期待していなかったが、これは単純に面白い!! ストーリーは至って単純明快なんだけど、分かっていても目が離せない。コリン・ファレルが電話ボックスから出られない映画「フォーン・ブース」と同じくらい極狭スペースを舞台に、ラスト20分くらい前まで興味を引き続ける。いきなり大雑把になるラスト20分が相当惜しい。そして崖っぷちの男ならぬ、庇っぷちの男サム・ワーシントン。彼は映画のほとんどをこの場所から動かないものの、ありえねー!! とどん引きの驚愕アクションを1度だけ披露。


なんといってもジョーイ(「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル。いつの間にこんなイケメンに!! ) とその恋人がスゴイ。お前たちは何者なんだ!! もっともらしい背景は綺麗さっぱり説明はないけど全然オッケー。「プリズン・ブレイク」の天才弟と違って、こんな弟が欲しい!! と熱烈応援させる善良なキャラクターがすごく魅力的。エド・ハリスのくそジジイぶりも腹が立つだけに痛快。


■『アメイジング スパイダーマン』-The Amazing Spider-Man- ★★☆