3月鑑賞の映画

■新作『アンダーワールド 覚醒』の前に、1作目から3作目までのおさらい


1作目『アンダーワールド -Underworld- 7割くらいのネタバレあらすじ


ヴァンパイア族とライカン族(狼男) の抗争が1000年以上続く現代。ヴァンパイアは1世紀毎に3人の長老(ビクター、マーカス、アメリア) のうち2人が休眠するサイクルを行い繁栄し、リーダーを失ったライカンは弱体化していた。ビクター(ビル・ナイ) の寵愛を受け、600年間ライカンと戦ってきた処刑人セリーン(ケイト・ベッキンセール) は、ライカンが何者かの協力を得て武装強化し、人間の青年マイケル・コーヴィン(スコット・スピードマン) を探していると気付く。死んだと思われていたライカンのリーダー・ルシアン(マイケル・シーン) は、人類最初の不死者(疫病で死ななかった唯一の人間) アレクサンドル・コルヴィナスの末裔であるマイケルの血液で、両種族の力を凌ぐハイブリッドを誕生させようとしていたが・・・。


イカンに咬まれ変身の時が近づくマイケル、命令に背きマイケルの救出に向かうセリーン、ビクターの秘密、ルシアンの真の目的と戦争の始まりの理由が描かれる。「プリズン・ブレイク」のマイケルがチョイ出演。レン・ワイズマン監督、121分、2003年公開。★★★☆



2作目『アンダーワールド: エボリューション』 -Underworld: Evolution- 8割くらいのネタバレあらすじ


アレクサンドル・コルヴィナスから不死の血を受け継いだ双子の息子、兄のマーカスが蝙蝠に咬まれヴァンパイアに、弟ウィリアムが狼に咬まれ狼男となる。どんな兄弟だ。800年前、人間の姿へ戻る事はない狼男ウィリアムの殺戮を止めるべく、ヴァンパイアの兵士を率いるビクター(ビル・ナイ)、マーカス(トニー・カラン)、アメリアにより、彼は終世監禁される。


そして現代。仲間を裏切り両種族から追われる身となったセリーン(ケイト・ベッキンセール) は、初めてのハイブリッドであり無限のパワーを秘めたマイケル(スコット・スピードマン) を連れて身を隠す。休眠中にハイブリッドとなり目覚めた長老マーカスは、血の記憶で事態を察知し2人を執拗に追う。マーカスの目的が分からないセリーンとマイケルは、かつて追放されたヴァンパイアの歴史文献記編者を訪ね、人間の精鋭部隊を率いて両種族の戦いの後始末してきたロレンゾ・マカロに会いに行くが・・・。


ウィリアムの幽閉の理由、牢の場所を知る唯一の生存者、セリーンの封印された血の記憶、進化したセリーンとヴァンパイアの始祖でハイブリッドのマーカスの死闘、ハイブリッドのマイケルと制御不能の狼男の始祖ウィリアムの肉弾戦が描かれる。トラックを止めたり、爪を立て缶を開けて、開けて、開けまくる地味な活躍が哀しきハイブリッド男、マイケル。セリーンの子供の頃の回想シーンで、ケイト・ベッキンセールマイケル・シーン(ルシアン役の人)の実娘がチョイ出演。レン・ワイズマン監督、106分、2006年公開。★★★



3作目『アンダーワールド ビギンズ』 -Underworld: Rise of the Lycans- シリーズ2作の前日譚


人間の姿には戻らない狼男族が、ヴァンパイアの奴隷だった時代(セリーンが生まれる前)。獣と人間に自在に姿を変えられる進化した“ライカンの始祖”ルシアン(マイケル・シーン) が誕生する。長老ビクター(ビル・ナイ) は危惧するが、従順なルシアンは多くの狼男族とともに、ヴァンパイアの日中の警護を務めていた。1作目のネタバレになるので終わり。


冷酷で厳格なビクターがセリーンを殺さず仲間に迎え入れた理由、ルシアンが反逆に至った悲劇、クライマックスの狼男族の怒りの大虐殺に気分爽快。1作目の時に、ルシアンの血の記憶でマイケルが見せられたシーンをわざわざ1本にした内容ではあるけど、ルシアンの哀しみが共感を呼び、尊大なビル・ナイに腸が煮えくりまくり、前2作品とは違う剣とボウガンの攻撃が格好いい。ヒロインは女戦士ソーニャ(ローナ・ミトラ) 。パトリック・タトポロス監督、90分、2009年公開。★★★★



■新作『アンダーワールド 覚醒』 -Underworld: Awakening- ★★★


[ストーリー] ついに人類が2つの闇の種族の存在を知る事となり、巨大バイオ企業アンディジェン社のレーン博士(スティーヴン・レイ) が掲げる粛清の名の下に、ヴァンパイアとライカンへの一斉討伐が始まった。宿敵ライカンとのハイブリッドであるマイケルを愛し、反逆者として追われる身となったヴァンパイア最強の処刑人セリーン(ケイト・ベッキンセール) 。闇に紛れこの国からの脱出を図ろうとするが、マイケルは深手を負い、セリーンも意識を失う。


それから12年後。アンディジェン社で低温睡眠から目覚めたセリーンは、マイケルの痕跡を追い、自身が昏睡時に産み人間の実験体として育った彼との娘イヴ(インディア・アイズリー) に辿り着く。長老と上層部を失い、いまや絶滅寸前に追い込まれたヴァンパイアは地下に隠れ住んでいた。セリーンを尾けていたヴァンパイアの青年デヴィッド(テオ・ジェームズ) は、人間に対抗するべく、経験豊富なセリーンに協力を仰ぐが、彼の父親でリーダーのトーマス(チャールズ・ダンス) は種の存続を最優先しようとする。過去に存在しなかった進化したライカンの出現でイヴを奪われたセリーンは、人間の刑事セバスチャン(マイケル・イーリー) の協力を得て、娘の救出に向かうが・・・。モンス・モーリンド&ビョルン・スタイン監督、88分


[コメント] 「進化したヴァンパイアの母親」と、「不死者の末裔で、ライカンの始祖とヴァンパイアとのハイブリッドの父親」から生まれた、究極のサラブレッドのイヴ。最強の遺伝子を受け継いだこの娘の何が凄いってもう、顔が凄い。ハイブリッドはライカンには変身しないものの、真っ黒けの眼、鋭く尖った黒い爪、一昔前の宇宙人みたいなメタリックグレーの肌になる為、少女イヴの顔がひとりホラー映画。華麗にアクションをキメる美しいセリーン母の隣で、娘は「エクソシスト」ばりのホラー顔で咆哮するのでいちいち笑える。


2作目で進化し紫外線が弱点ではなくなったセリーンは、今作品では心臓マッサージや、マイケルやイヴとの共有感覚など新技を披露。ごく普通のナイフを鍵穴に突っ込んで回し、車のエンジンをかけた時には驚いた。あまりの堂々ぶりに同乗者デヴィッドのツッコミもなし。どうやったんだ!! 銃を連射し天井に穴を開ける場面は、1作目の方が断然カッコ良かった。ヴァンパイアが血を吸う場面はほんの僅か。内容は「バイオハザード」に近くなり、ライカンも超進化した“ウーバー・ライカン”が登場する為、前3部作とはかなり印象が違う。女性がライカンに咬まれると死ぬものだと思っていたけど、ハイブリッドのイヴはライカンに咬まれても大丈夫らしい(※)。


※ヴァンパイアもライカンもウィルス感染。ライカンに咬まれた人間はライカンに。ヴァンパイアが人間を咬めば死に、血を飲ませた人間はヴァンパイアになる。ヴァンパイアはライカンに、ライカンはヴァンパイアに咬まれると死ぬ。ハイブリッドになるにはコルヴィナスの血筋でなければならない。


■『ヒューゴの不思議な発明』-Hugo- ★★★★☆


[ストーリー] 1930年代のフランス、パリ。リヨン駅の時計台に隠れて暮らす孤児のヒューゴ・カブレ(エイサ・バターフィールド) は、時計職人だった父(ジュード・ロウ) との思い出である「機械人形」の修理を心の拠り所にしていた。駅構内のおもちゃ屋から部品となる商品を度々盗んでいたが、ある日、老店主ジョルジュ・メリエス(ベン・キングズレー) に見つかってしまう。


大切なノートを取り上げられてしまったヒューゴは、孤児たちを孤児院へ送り込む鉄道公安官(サシャ・バロン・コーエン) の追跡をかわしながら、ジョルジュのおもちゃ屋で働く事になる。そして、探し求めていた機械人形に必要な“ハート型の鍵”を、ジョルジュ夫妻の養女で読書家の少女イザベル(クロエ・グレース・モレッツ) が持っている事に驚き、彼女と2人で秘密を探り始めるが・・・。ブライアン・セルズニックユゴーの不思議な発明』原作、マーティン・スコセッシ監督、126分


[コメント] まず、予告編と邦題が酷い。しかし、ジョルジュ・メリエスの名前を聞いただけでピピーン!! ときたアナタはこの映画を勘違いしない。なんだそりゃ。予告編のイメージでは、機械人形の歯車が動き出した瞬間に非日常の世界への扉が開く、少年の成長を描いた冒険ファンタジーだと思っていた。だって春休み公開だし。主役は少年少女だし。タイトルは不思議な発明だし。映画は少年の眼を通して、不幸な時代に呑み込まれ消え去った映画監督の半生と再生が描かれる。原作は読んでいないが、この映画ではヒューゴは何も発明していない。


ジョルジュ・メリエスの名前でピピーンとこない私は、言わば「茶運び人形が、湯のみ茶碗を茶托に載せて定位置へ戻って制止」した場面になってやっと、己の勘違いに気が付いた。どうでもいいが、機械人形の高性能にはびっくりした。ここはツッコミを入れること間違いなし。そんな私のような勘違い野郎は少ないでしょうが、予告編を観た大人が鑑賞を止めてしまうのは心底勿体ない。逆に予告編の楽しい雰囲気を期待して鑑賞した子どもには、とても地味な作品かも知れない。人間ドラマも渋い。暴力場面は一切排除してある。


駅構内をカメラが一気に駆け抜けるオープニング、鉄道公安官&ドーベルマンとの目まぐるしい追跡劇、大きな歯車が複雑に絡み合う時計台の裏側の世界、そこをアリエッティの如く縦横無尽に移動するヒューゴの姿など、その場で体感しているようなワクワクする臨場感。ヒューゴとイザベルが映画館に忍び込む場面が好きだ。マジックとイマジネーションで、人々を別の世界へ連れて行った、ジョルジュ・メリエスの作品が出来上がるまでの過程が本当に楽しい、びっくりするほど面白い、もっともっと観たい。過去を抹殺するほどの深い心の傷を、その才能を愛した者たちが静かに見守る姿に胸が熱くなる。大人にはできない事を、素直で勇敢な子どもの純粋な思いが解放する。商業映画創成期のパワーはとんでもなくスゴイ。そして、フランスのクロワッサンはデカーイ!! 駅構内の人々の交流は控え目で、トム・ハンクス主演映画「ターミナル」的な一致団結の高揚感はなかった。短い出番ながらもクリストファー・リーが印象深い。


リュミエール兄弟の映画「ラ・シオタ駅への列車の到着」で、迫り来る汽車を観て観客たちが避けたという有名な話。ちなみに私はある映画で、手紙が風で飛ばされてしまう場面で「あっ!! 」と声を出し、スクリーンに右手を伸ばして立ち上がりかけた経験あります。拾えないよ!!


ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)


■『顔のないスパイ』-The Double- ★★☆ 二転、三転、四転のスリリングな展開かと思っていると、一転で。
■午前10時の映画祭『ブラック・サンデー』-Black Sunday- ★★★★★ 見逃し厳禁、劇場へ行くべし、スクリーンで観るべし!!
■『三国志英傑伝 関羽』-関雲長- ★★★☆ ドニー・イエンの超絶アクション目当て。チョイ期待外れ。