12月鑑賞の映画

■『アバター』★★★★
下半身不随の元軍人ジェイク(サム・ワーシントン)は、死んだ双子の兄が携わっていた研究施設のある惑星パンドラへ呼ばれる。そこには、莫大な利益をもたらす希少な鉱物が地底に眠り、その上に独特の言葉と文明を持った先住民ナヴィ族が暮らしていた。彼らの文化を理解し友好関係を築くよう、地球人が作り出した彼らと同じ肉体“アバター”に精神を移す実験の継続に、亡兄と同じDNAを持つジェイクが選ばれたのだ。しかし、企業に派遣された傭兵を束ねるマイルズ・クオリッチ大佐(スティーヴン・ラング) は、野蛮な彼らの排除に手をこまねいており、ジェイクにスパイを命じる。アバターとなり再び大地を踏む喜びを得て、ナヴィ族へ潜り込む事に成功したジェイクは、族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ) から彼らの文化を学ぶうちに、地球人とナヴィ族との板挟みで苦悩する…。


格段にレベルの違う鮮明で自然な奥行き感と世界観の説得力に圧巻の一言。なにが現実に存在して、どこまでがCGなのか全然分かんなくて、視力が15.0くらいになっちゃった感覚。地球人と並ぶとジャンボマックスくらいひと回り大きい、蒼い半魚人みたいな超微妙のナヴィ族が、鮮やかな世界に映えて本当に美しい。ついでにウェストが細くて羨ましい。


日本語吹替え版で観たけど(ジェイクは「プリズン・ブレイク」のマイケル)、ナヴィ語訳が右横に出るので結局字幕を読むハメになり、最初からナヴィ語を自動翻訳できるアバターを造っとけと思う。3Dメガネの重さも鬱陶しい。私の旧式の脳ミソでは処理が追いつかないのか、鑑賞後に頭が痛くなった。あと、いちいち気になってしまったのは、出入り自由に近いアバターの設定。入ったら入りっぱなしじゃないって都合よすぎ。結局、叩きのめさなくては気が済まない後半も途端に大雑把。いい所をみんなジェイクに持ってかれちゃった新族長はお気の毒。ストーリーは定石通りで新鮮味はなく、大スクリーンの3Dで観なければ、評価は★2つくらい。


■『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』★
母星を失ったディンギル帝国の地球移住計画から人類を救うため('83年『宇宙戦艦ヤマト 完結篇(※)』)、ヤマトが回遊惑星“アクエリアス”に沈んでから17年後の、西暦2217年。移動性の巨大ブラックホール“カスケード”が太陽系に接近し、地球が呑み込まれることが不可避となった人類は、2万7000光年彼方の惑星アマールの衛星への移住を計画。そして、地球消滅まであと3ヵ月と迫った2220年。3億人を乗せた第1次移民船団が正体不明の艦隊の襲撃を受け、責任者の古代雪を含むクルーの消息は不明、第2次移民船団も別の艦隊の待ち伏せ攻撃を受けてしまう。宇宙科学局本部長の真田志郎は、宇宙貨物船で航行中の古代進を地球へ呼び、第3次移民船団の護衛として、密かに再建が進められていた宇宙戦艦ヤマトの艦長に任命、人類の未来を託すが…。


アマール住人(イスラム国家)と、圧倒的な武力で星間国家連合を従える“世界の支配に遣わされた”SUS(米国)の資源戦争に、抑圧された民衆は自国よりもヤマト(日本人)のために命を投げ出し、日本人が世界を救うタチの悪いストーリー。薄い、軽い、長いの退屈三拍子。武士道・自己犠牲・敵の殲滅と基本思想は変わっていないけど、単調な戦闘シーンが詰まらない。古代進と雪のティーンエイジャーの娘・美雪も興醒めなほど魅力なし。サーシャみたいなキャラクターにして欲しかった。石原慎太郎原案、伝説の艦長となっている古代進波動砲6連射可能の無敵のヤマトも衝撃的だったけど、エンドロール後の「第一部 完」に驚愕。ワープ時のお約束だったサービスシーンに★1つ献上。


(※)『宇宙戦艦ヤマト 完結篇』ネタバレ
水没したディンギル星から1人の少年を救出したヤマトは宇宙放射能を浴び、宇宙服(ヘルメット)を着用していなかった者の中で、古代進だけが地球へ生還。地球への移住計画を進めるディンギル帝国総督は、自国を滅ぼした回遊惑星“アクエリアス”を地球へワープさせて人類の殲滅を目論む。脳死には至っておらず密かに静養していた沖田十三艦長以下ヤマトクルーは、ディンギル帝国の基地を目指し地球を出発。


ディンギル帝国総督の息子だった冒頭の少年は、地球人の自己犠牲の精神に感銘し古代進を庇って死亡、古代進はその行為を讃える。20回目のワープでアクエリアスが地球へ到達直前、ヤマトはディンギル帝国の都市要塞を撃破するが、その戦いで瀕死の傷を負った島は、最後っ屁の告白をして死亡。ワープを止められず万事休すの窮地に、デスラー艦隊がヤマトの助っ人で参戦。地球へ向けて大量の水を放つアクエリアスとの中間地点で、沖田十三艦長1人を乗せたヤマトが波動砲を発射、アクエリアス本体は銀河の彼方へ去り、ヤマトはデスラー古代進らクルーに見送られながら、アクエリアスが残した海の欠片へ沈む。…ていうか、ディンギル帝国は、自分たちの星が水没する前にアクエリアスをワープさせとけば良かったんじゃ!?


■『THE 4TH KIND フォース・カインド』★★★
2000年10月1日、米国アラスカ州ノーム。2ヶ月前に夫を殺害された心理学者アビゲイル・タイラー博士(再現映像/ミラ・ジョヴォヴィッチ) は、夫の仕事を引き継ぎ、不眠に悩む住民たちに催眠療法を試みる。彼らは一様に、「白いフクロウが自分を見ていた」と語り、尋常ならざる発作を起こす。やがてアビゲイル自身にも不可思議な現象が起こり、亡夫が偽名で接触していたある分野の専門家を呼び寄せるが…。当時の記録映像や録音テープ、2002年の博士へのインタビュー映像、俳優による再現映像で構成されたモキュメンタリー(ドキュメンタリーを謳った虚構のドラマ)。


肝心な部分の映像がこれでは許さん!! 天井を通り抜けられるテクノロジーがありながら、扉を開けて訪れる律儀さを見せて、記憶は消すがドリルの跡と音声は残す、「あの者たち」が関わっているのではなく、PTSDか神父様を呼んだ方がいい系の精神疾患としか思えないどん引きの展開。それでも、実際の映像(虚構) にはスクリーンに釘付けにさせる迫力があり、俳優の再現映像との落差に観ているこっちのテンションも乱高下。冒頭で「衝撃的な映像があります」との注意があるものの、この映画で唯一の衝撃はインタビューを受ける博士の顔。ヨーダの如し目元と崩壊寸前の顎のリアルホラー度は『2012』の100倍の破壊力。ところで、リビングの床にゲロを吐いて放置したまま会話を続けるとは、恐るべし米国人。取りあえずゲロは片付けようよ。