7月の読書感想

■『30日間世界一周! 1巻』水谷さるころ イースト・プレス 2009年4月 ★★★★
イラストレーターの水谷さるころ、企画発案者でディレクター兼カメラマンのノダ、プロデューサーで用心棒兼自由人ヤマモトの3人が、世界一周航空券を使い、30日間で10カ国14都市を旅する。2008年に旅チャンネルで放送した番組「行くぞ! 30日間世界一周」を、全三巻の単行本にまとめたオールカラー・コミックエッセイ。2009年7月から、テーマソングやスポンサーもついて若干パワーアップした「行くぞ! 30日間世界一周 2周目」を放送中。


「行くぞ! 30日間世界一周」は、ハードな移動(※)と厳しい予算の中で、主に下調べ不足によって続出するトラブルを、ど素人の如く成り行きに任せてやり過ごす、出たトコ勝負のゆるい旅内容が魅力の番組。ホントか。トラブルに動じない庶民的なさるころ、真面目だが大雑把で無責任なノダD、そんな2人に引きづり込まれてぼんくら3人組の一員となってしまう超マイペース山本の、怒濤の旅路が展開。この本の内容は番組と同じだけど、ノダDの言い訳コラムやこぼれ話があるので、番組を観ていても観ていなくてもお勧め。百円コーナーに並ぶ日を待って購入予定。取りあえず、購入無用、図書館で。
※成田→台湾→香港→デリー→ヘルシンキ→フランクフルト→(陸路)パリ→(陸路)ロンドン→カイロ→ロンドン→マイアミ→カンクン→ダラス→ラスベガス→ロス→サンチアゴイースター島→(日付変更線)→シドニーエアーズロックケアンズ→成田


■『最低賃金で1ヶ月暮らしてみました。』 最低賃金を引き上げる会編 亜紀書房 2009年5月 ★
低賃金で蓄えもなく、簡単に解雇され仕事を選ぶ事もできない非正規雇用者や、長時間の拘束によって法定最低賃金に近い状況で働かされる正規雇用者たち。1日8時間で20日間働いた場合、最低賃金の最も高い東京と神奈川の766円で122,560円、最も低い宮崎・鹿児島・沖縄の627円で100,320円、全国平均703円で112,480円となり、生活保護より低い賃金が問題視されている(2008年11月)。最低賃金での生活とはどんなものなのか。全国の組合・ユニオンの青年たちの、「1か月最低賃金で暮らす」という体験レポを通して、どうしたら最低賃金を引き上げる事ができるのか、「文化的で健康な社会生活」を求めてその窮状を訴える。


最低賃金は毎年夏に改訂されるため、つい最近、7円から9円上がっているが1,000円にはほど遠い状況。本書は決して不真面目な企画ではないのに、1ヶ月間の特殊な環境を健康な若者が体験するに留まり中途半端で軽い。本書を読む前も、読了後の今も、最賃1,000円を最低限の目標額とする問題への答えは出せず。購入無用、ザザッと立ち読みで。


■『この想いはただ苦しくて』-Forbidden- スーザン・ブロックマン ランダムハウス講談社 2008年4月 ★
ボストンの女性救援センターで働くケイラは、2年前に内戦の続く某国での取材中に、バス爆破テロによって死んだ婚約者のリアムが、4ヶ月前に政府収容所で拷問を受けていた、瀕死の米国人ではないかとの情報を入手。リアムの生死を確かめるため、両親の亡き後に5才のリアムを育て、弟の望むことを叶えるためにはどんな犠牲も厭わないという彼の兄キャルに協力を求める。果たしてリアムは生きているのか?


・・・当然、生きていて、ケイラに惚れたお兄ちゃんは静かに身を引くというパターンの、気軽なサスペンスだと思って図書館で借りたのだが、どこで勘違いしたのか実際は、


長身でスタイル抜群の美人ケイラは、求婚を断る返事の直前に死亡した“ただのボーイフレンド”が生きている可能性を知り、“ただのカウボーイ”である彼の兄に「軍事政権下の超危険な某国へ行って、2人で救出してきましょう! 」と頼むため、面識はないが断られるはずがないので、電話もせずにいきなりモンタナ州へゴー。ところが、到着後に呑気に散歩中に突然の雷雨に見舞われ凍死寸前。アホか!! ケイラの意識の遠退く中で救出の手を差し伸べたのは、長身でハンサムなカウボーイで、お互いに強烈に惹かれ合い一気炎上の一目惚れ。アホか!! その男がキャルと知ったケイラの気持ちは変わらないが、弟を愛する彼は罪悪感に苛まれ苦悩。ケイラへの思いを断ち切れず、某国でリアムの足取りを調べる中でも、事あるごとに彼女のナイスバディーを夢想し1人悶々とする話。アホか!!


何の特技があるでもない素人2人のスパイごっこはツッコミどころ満載で、一瞬の緊迫感もない驚愕のクライマックスが、知らないうちに終わっていた茫然自失のエンディング。恐怖や痛みを伴わないロマンス小説が好きな方にお勧め。購入無用、図書館で。