ネタバレ劇場 6月鑑賞の映画

1) インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国
2) アフタースクール
3) ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛
4) ラスベガスをぶっつぶせ
5) 幻影師アイゼンハイム


インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』-Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull-
[監]スティーヴン・スピルバーグ
[製]ジョージ・ルーカス 
[出]ハリソン・フォード/シャイア・ラブーフ/ケイト・ブランシェット/カレン・アレン 
2008米/パラマウント [上映時間] 122分


全世界待望──新たなる秘宝を求め、史上空前の冒険が始まる!


1957年、ネバダ州。核実験を前に退去封鎖中の米軍基地を、スターリンの秘蔵っ子イリーナ・スパルコ大佐(ケイト・ブランシェット) 率いるソ連兵一団が襲撃。長年の発掘仲間“マック”ジョージ・マクヘイル(レイ・ウィンストン) と共に連行された考古学者インディアナ・ジョーンズ博士(ハリソン・フォード) は、超常現象を軍事目的に利用しようと企むスパルコに強要され、倉庫内にある膨大な保管品の中から“1947年にロズウェルで回収されたもの”が入っていると思われる箱を見つけ出す。密閉保存されたミスター・グレイの死体がチラリ!!


マックの裏切りに遭いながらも隙を突いて逃げ出したインディが、核爆弾投下実験場へ迷い込んだと気づいた時には爆破10秒前のアナウンス。すんでのところで鉛製の冷蔵庫に飛び込み、爆風でブッ飛んだ冷蔵庫はガランゴロンと脳天カチ割りの勢いで叩き付けられるが、パカッと扉を開いて颯爽と立ち上がる。原子爆弾(ファットマン?) を冷蔵庫如きでやり過ごす、日本人総どん引き場面。


FBIにマークされ大学を無期限休職となったインディの元へ、青年マット・ウィリアムズ(シャイア・ラブーフ)が現れ、“クリスタル・スカル”を探し消息を断ったインディの旧友ハロルド・オクスリー教授(ジョン・ハート) と、助けに行って戻らないマットの母親を探す手伝いをして欲しいと、オクスリーのメモを手渡す。言い伝えによれば、黄金に輝き死者たちに守られている伝説の都市から盗み出されたクリスタル・スカルを神殿に戻した者は、神秘のパワーを手にすることができるという。オクスリーが彼に宛てたメモを読み解いたインディは、マットとともにペルーへ飛ぶ。


クリスタル・スカルを見つけ出したインディは、手掛かりを求めるスパルコに捕われていた、マットの母親でかつての恋人『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』のマリオン・レイヴンウッド(カレン・アレン) とオクスリーを救出し、マットが自分の息子だと知らされ驚愕。スパルコからクリスタル・スカルを奪い返し、マックの裏切りの誤解も解けると一緒に黄金都市を目指し、イグアスの滝を落っこちて、滝の裏側がアヤシイとあっという間に気づき、マヤの遺跡へ。


ガランゴロンとカラクリ遺跡を通過し、クリスタル・スカルを扉の凹みに当てて、ガランゴロンとカラクリ扉が開く。そこには13体の異星人のクリスタルの骨格が鎮座。そこへ、やっぱり裏切り者だったマックが残した追跡装置を追って、スパルコが現れ、1体だけ頭蓋骨がない骨格の上にクリスタル・スカルを乗せようと近づくが、シュポーンと勝手の乗っかって異星人復活。


何もやってないが復活したので、スパルコはちゃっかり知識を所望。クリスタル異星人はスパルコの脳ミソにどんどん知識を流し込んでやるが、人間ごときの器には到底収まりきれず、スパルコの目玉の穴から口から光が大放出。スパルコと部下たちは塵となって円盤へシュポーっと吸い込まれ、黄金の装飾品をくすねようとしていたマックも吸い込まれ、ガランゴロンと崩れる遺跡からインディたちは脱出。クライマックスはインディとマリオンの結婚式。インディの帽子がコロコロ〜とマットの足元へ転がり二代目襲名か? と思わせてマットが帽子に手を伸ばすと、インディが拾い上げて被り、おしまい。


『アフタースクール』
[監][脚]内田けんじ 
[出]大泉洋/佐々木蔵之介/堺雅人/常盤貴子/田畑智子/伊武雅刀 
2007クロックワークス [上映時間] 102分


甘く見てるとダマされちゃいますよ


朝。体調不良を理由に欠勤を続けていた経理部の木村(堺雅人) が、若い女性(田畑智子) と親しげにしている姿を、たまたま見かけた同僚が携帯で撮影。その画像を見た役員が社長に報告し、素性を隠してチンピラ探偵(佐々木蔵之介) に捜索を依頼。


翌日。情報を得るため木村の同級生を装い中学校を訪れた探偵は、木村の親友で母校で働く人のいい教師・神野(大泉洋) を利用する事を思いつく。昨日から木村と連絡がつかず、産気づいた木村の妻(常磐貴子) を病院へ連れて行き、無事出産の報告をできずにいた神野は、強引な探偵(とは知らない)のペースに巻き込まれ、木村探しを手伝うハメになる。


昼。神野に依頼主の役員を尾行させGPSで追跡を続ける探偵は、木村の勤める会社の社長がヤクザのボス(伊武雅刀) と繋がっている事を突き止める。金の匂いを嗅ぎつけ調べを続けると、ボスは半年前に姿を消した自分の愛人を密かに探しており、ナンバー1ホステスだったという愛人の元仕事仲間が言うには、木村と愛人は顔見知りに違いないというのだ。この超少ない情報だけで、ナンバー1ホステスには見えない田畑智子がボスの愛人だと探偵は確信、木村と愛人の一石二鳥の捜索に奔走。


夕方。木村が神野から借りて乗っていた車がレッカー移動された場所へ向かった探偵と神野は、昨夜遅く帰って来た木村と田畑智子を防犯カメラの映像で確認。マンション前で待ち伏せるが、木村の裏の顔を嘲る探偵に激昂し神野は帰宅。自宅では宅配ピザですっかり寛いでいる木村の姿。


夜。愛人を探すヤクザのボスの元へ、手下の1人が既に血まみれで死んでいた愛人の携帯画像を届ける。まったく顔は見えないが、ボスは自分が贈ったドレスを着ているので愛人に間違いないと死を惜しむ。どんなバカなんだ、このハゲボスは。木村から連絡を受けた社長は1人で指定された店へ。店内にいる客が全て刑事だと気づかない社長は、木村が何を掴んでいるか知らないまま大金と引き換えに封筒を受け取り、その後逮捕。封筒の中身は、生真面目な神野のバッグに探偵がこっそり入れて置いた裏DVD。


深夜。神野の車に置き忘れていた木村の携帯を調べた探偵は、自分が木村の友人ではなく探偵だと最初から神野にバレていたと知り、GPSで神野のいる学校へ。半年前、木村は中学校の時好きだった常磐貴子を偶然キャバレー見かけ互いに驚愕(2人は知人だったと同僚女性の証言の時)。親の借金のためキャバレーで働かされヤクザのボスの子どもを身籠っていた常磐貴子は助けを求め、彼女を神野のマンションへ匿い、神野と木村は近くのアパートへ。木村の会社の社長がヤクザのボスの取引を手伝っていた事を警察官の神野の妹へ話した事から、常盤貴子が重要参考人として保護の対象に。木村が一緒にいるところを撮られた田畑智子が神野の妹で、ボスが見た血まみれで横たわる写真も、常磐貴子の服を着た田畑智子の血のり。拳銃を所持していた探偵は逮捕。


朝。中学生の時、神野へのラブレターを木村に託し、夜逃げ同然で引っ越していった常磐貴子に、神野が一緒に暮らそうとプロポーズ。同じく常磐貴子を想っていた木村をなぐさめようと、田畑智子が自宅へ招いたのが、マンションの防犯カメラに映っていた一昨日夜の出来事。木村の会社と繋がっていた政治家も逮捕される。おしまい。


ナルニア国物語/第2章 カスピアン王子の角笛』-The Chronicles of Narnia: Prince Caspian-
[監][製]アンドリュー・アダムソン 
[原]C.S.ルイス 
[出]ジョージ・ヘンリー/スキャンダー・ケインズ/ウィリアム・モーズリー/アナ・ポップルウェル/ベン・バーンズ 
2008米/ディズニー スタジオ [上映時間] 150分予定


ナルニア死す――


ナルニア暦2303年。ナルニアが人間であるテルマール人の征服支配によって、魔法や自然の神秘はもはや存在しない時代。亡き王の弟ミラースに男子が誕生した夜、呑気に暗殺されそうになっていた正統な王位継承者カスピアン王子(ベン・バーンズ) を家庭教師のヒゲもじゃら博士が救出。この後に及んでもまだ事態が掴めないおぼっちゃん王子はグズグズしていたが、博士から“伝説の4人の王と女王”を呼び戻すと言われる魔法の角笛を手渡され、テルマール人が怖れて足を踏み入れない森へ逃れるよう促されなんとか城から脱出した。


森の奥深くに逃れてきた王子とバッタリ出くわしたナルニアの民は、ナルニア国の“救世主の証”である角笛を持つ人間に驚愕。取り返そうとするドワーフの敵意に怯んだ王子は、追っ手も迫っていたものだから「本当に危険が迫っている時に吹くように」博士から言われた角笛を速攻吹き、ブン殴られて気絶。


ペベンシー兄弟姉妹(※) が、ナルニアから戻って1年。うまいこと4人揃って地下鉄のプラットホームにいたところを王子が吹いた角笛に導かれ、気づけば穏やかなナルニアの海辺に佇んでいた。王子の近くへ出現するんじゃないのか。ていうか、なんで海辺なんだ。ナルニアに戻った理由を知らない兄弟姉妹たちは、イ〜ヤッホー!! 取りあえず水をかけあい無邪気にはしゃぐ。遊んでる場合か。

※英雄王の長男ピーター(ウィリアム・モーズリー)、優しの君の長女スーザン(アナ・ポップルウェル)、正義王の次男エドマンド(スキャンダー・ケインズ)、頼もしの君の次女ルーシー(ジョージー・ヘンリー)


自分たちがかつて王座についていたケア・パラベル城の廃墟に立った兄弟姉妹は、何者かの攻撃によって破壊されたと知り愕然。隠し扉から被害の及んでいない地下室へと降り、かつてサンタクロースにもらったもの(長男が剣、長女が弓矢、次女が万能薬と短剣) を身につける。やがて、テルマール人兵士に殺されそうになっていたところを助けたドワーフから、テルマール人の征服によって森の奥深くに逃れたナルニアの民が滅びつつあると知る。彼らがナルニアを離れてから1300年の歳月が流れていたのだ。テルマール人が襲ってきた時に角笛を吹いてくれよ!!


自分たちを呼び戻したのが王子とは知らないが、ドワーフの案内で取りあえずナルニアの民が集う森へ急ぐ兄弟姉妹は、上映時間のかなりの部分を割いてなんとか合流。王子はナルニアに唯一平和な時をもたらした伝説の4人の王と王女が自分よりも年下でびっくらこいたが、英雄王の長男を立てて若干引っ込んだ。年下に見えども、ボンクラ王子よりはよっぽどしっかりしてる。禁じられたナルニアの歴史を博士から教えられて育った王子は、ナルニアの民に共鳴し人間と共に生きる世界を望むが、圧倒的な兵力でナルニアの民を抹殺しようとするミラース軍を前に闘う事を決意。長男と王子の仕切りで、ナルニアの民が立ち上がる。


闇にまぎれて王宮に侵入する兄弟と長女、王子、勇敢なネズミの騎士リーピチープと部下のネズミたち。ナルニアの兵士を入れるための門を開ける役目を担う王子は、囚われのヒゲもじゃら博士の救出にまっしぐら。門を開けてからにしろ、バカ!! そして、博士もこの忙しい時に教えるなというのに、父王を殺害したのがミラースだったと言うもんだから、王子は怒りにまかせてミラースの寝室へ駆け込んだ。ていうか、フツーに考えればミラースがアヤシイを思うだろ。しかも、剣を突きつけ躊躇する王子の隙を突いてミラースは逃げ、急襲に失敗したナルニアの兵士は、長男の撤退命令の遅れもあり半数に減ってしまう。スッコトドッコイな王子のせいで英雄王も形無しだ。


アスラン廟に退却したナルニア軍の前に、ミラース王に従うものすげーーー数の兵士が集結。
他の兄弟を含めナルニアの民の誰もがアスランの復活を疑う中、ただ1人アスランの救済を信じる次女が、アスランを探しに森へ行くと言う。ちなみにこの時は夜。次女がアスランを見つけるまでの時間稼ぎに、ピーターがミラースに決闘を申し込む。ボンクラ王子には任せちゃおけん。


そして翌日。決闘の始まりと同時に、とっくに出発しているものとばかり思ってた次女が出発。間に合わないだろうが!! 相当な頑張りでピーターが勝ち王子にミラースを差し出すが、産まれたばかりの従弟を思う王子はミラースを許す。負けた方は撤退の約束だったが、野望を秘めた臣下がサクッとミラースを殺害。ナルニアの裏切りを巧言し、王子も始末すべく戦闘開始。ナルニア軍が決死の闘いを続ける中、次女はアスランを探して森の中。まだ探してたか。ナルニア軍はアスラン廟の入口を投石機の巨石で塞がれ撤退もできない。圧倒的な兵力の差を前にした時、長男、長女、次男、王子たちがアスランを強く信じ、ついに次女の前にアスランが現れる。アスランに抱きついておしゃべりに夢中に次女。そんな事してる場合か。アスランナルニアを救うと次女に約束しガオーッとひと吠え。動きだした森の大木がテルマール軍の投石機を次々と破壊。LOTRもそうだったが大木が1番強かった。


アスランとともに唐突に戻ってきた次女が、逃げるテルマール兵を前にして短剣を構える。そりゃマズかろう。次男も充分少年だが、少女に人殺しはさせられないので、アスランのひと吠えで川の神が出現し兵士を丸飲み。大木軍団と川の神が最初からやる気になってれば、人間に征服されるような事態にはなってなかっただろうというバカ強さで、ミラースを裏切った臣下も飲み込まれ、テルマール軍は武器を捨て撤退。相当な数のナルニアの民が死んだが、次女が持つ傷を完治させる薬で治したのはドワーフとネズミの騎士の2人だけ。友達だけか!!


王位に即いた王子はナルニアの民との共存を約束。テルマール国民の前に立つアスランは、「テルマール人の祖先は兄弟姉妹と同じ島からきた海賊で、ナルニアの民との暮らしを望まない者たちは、ふさわしい場所へ行ける」という木の幹の穴を用意。なんじゃそら。この唐突な提案にミラースの妻と子ども、王子を殺さなかった側近、ジジイの4人手を挙げ、木の幹の穴に消えてった。最初に名乗りを上げた者には良い人生を用意してくれるそうだ。先に言ってくれよ!! テルマールの民が躊躇するのを見て、当初の予定通りにペベンシー兄弟が帰る事に。長男と長女は「この地で学ぶ事は終わった」ため、2度とナルニアを訪れる事はないそうだ。なんじゃそら。ピーターが王子にナルニアを託し、聡明な長女がこのボンクラを好きになるとは思えないが長女と王子がキスして別れを惜しみ、次女はドワーフと抱き合う。木の幹の穴をくぐった兄弟が、あの時の地下鉄のプラットホームに帰る。おしまい。


ベン・バーンズ(カスピアン王子) があまりにヘタクソで驚いた。『スターダスト』の時には出番が僅かだったから(主人公の父親の青年役で冒頭の3分くらい)、かっちょえぇぇぇぇー!! とスクリーンにかぶりつきで観たけど、オーランド・ブルーム以上にヤバイ。次作が相当心配。


『ラスベガスをぶっつぶせ』-21-
[監]ロバート・ルケティック 
[原]ベン・メズリック 
[製][出]ケビン・スペイシー 
[出]ジム・スタージェス/ケイト・ボスワース/ローレンス・フィッシュバーン 
2008米/ソニー [上映時間] 122分


その戦略は、天才だけに許される。


ハーバード大医学部の授業料と生活費30万ドルを賄う奨学生の面接がうまくいかずに悩む、MITの秀才ベン(ジム・スタージェス) は、数学のローザ教授(ケビン・スペイシー) から、ブラックジャックで必勝するための研究チームに誘われる。密かに思いを寄せていた美女(ケイト・ボスワース) の説得もありチームに加わったベンは、瞬く間に使用済みのカードを覚え残りのカードを予測するカード・カウンティングを習得。5人の学生と教授とともにラスベガスへ乗り込む。


毎週末、ラスベガスで荒稼ぎを続ける教授のチームを、カジノの用心棒(ローレンス・フィッシュバーン) が目をつけた。時給800円でバイト(ちなみに「J.PRESS」安っ!!) していたベンは、ギャンブルの快感に30万ドルが貯まっても止められず、事情を話せない親友とは絶交。自棄になりカウントせず勘で勝負して大損したため教授に見放され、仲間とともに教授抜きで挑むが、マークしていた用心棒にベン1人だけ捕まってしまう。かつて、教授に1晩で100万ドル持っていかれクビになっていた用心棒から、頭が悪くなりそうなほどブン殴られベンは解放される。


ベンが寮へ戻ると、ドアには教授の口利きで欠席していた授業の単位が足りず卒業不可の通知。バカでも見つけられる天井裏に隠していた稼いだお金も全て奪われてる。愛し合う仲となった美女に助けを求めたベンは、教授に許しを乞い、再びラスベガスへ。表には出なかった教授もプレイヤーに加え全員変装。ガッポリ稼いだところで用心棒が現れ、チップをかき集めて全員逃走。教授がベンからチップ入りの袋を受け取りタクシーへ乗り込み、ベンと彼女を用心棒が追いつめる。


チップがチョコレートだったと教授が気づいた時には、タクシーの運転手もカジノの人間。
教授をカジノへ連れて来る条件であの日解放されたベンは、チップを渡せという用心棒に躊躇うが、美女の説得と用心棒がチラリと見せた拳銃に置いていく。「単位の足りない教授の事は任せとけ」と用心棒。用心棒に捕まった教授とベンは2度と会う事がなく、再び奨学金の面接で今回の出来事を語ったベンは認められ、無事入学。用心棒は引退し悠々自適の暮らし。ベンは絶交された親友に全て話して許してもらい、親友や仲間たちとともにカジノへ。おしまい。


『幻影師アイゼンハイム』-The Illusionist-
[監][脚]ニール・バーガー 
[原]スティーブン・ミルハウザー『幻影師、アイゼンハイム』(「バーナム博物館」所収) 
[出]エドワード・ノートン/ポール・ジアマッティ/ジェシカ・ビール/ルーファス・シーウェル
2006米・チェコ/デジタルサイト=デスペラード [上映時間] 109分


すべてを欺いても手に入れたいもの、それは君。


19世紀末のウィーン。大掛かりな奇術が一世を風靡する中、絶大な人気を誇る幻影師アイゼンハイム(エドワード・ノートン) のショーが始まる。観客で埋め尽くされた劇場は呼吸も憚られるほどの緊迫感に静まり返り、背後の壁には警官が隙間なく配置される物々しさ。ステージ上にぽつーんと置いてある椅子に、額にびっしりと玉の汗が浮かべ座っているアイゼンハイムを、皇太子に仕えるでこっぱち警部(ポール・ジアマッティ) が静かに見つめる。やがて、深い哀しみを瞳に滲ませるアイゼンハイムがそっと伸ばした手の先に、湯気のようなものが、もわわわ〜ん!! ステージ上に現れた幻影が人の姿を成す前に、警部がステージへ駆け上がりアイゼンハイムの逮捕を告げる・・・。


公爵家出入りの指物師の息子(後のアイゼンハイム) は、ある日、だだっ広い野っ原で出会った奇術師ジジイ(カール・ジョンソン) が、大木とともに忽然と姿を消す様に魅せられる。うそー!! やがて、独自にマジックの修行を始めたアイゼンハイムと、彼に興味を持ったテッシェン公爵令嬢ソフィが出会う。身分違いの2人は森の中での密会を重ね口づけを交わし、アイゼンハイムは手作りのカラクリペンダントをソフィに贈る。さすが指物師の息子!! ペンダントトップの中央を180度捻るとハート型になり、側面を横へズラすと青年アイゼンハイムの顔写真が入ってるのだ。すっげー!! 写真は要らないがこのペンダントは欲しい。このまま姿を消す事ができればという願望もむなしく2人の仲は引き裂かれ、アイゼンハイムは以後消息不明となる。


それから15年後。ウィーンで初めての幻影師アイゼンハイムのすんげーイリュージョンに観客騒然。オレンジの種を植木鉢の土に植えたら、みるみる幹が成長してオレンジの実がなるとか。ホントかよ!! 話題を聞きつけた皇太子(ルーファス・シーウェル) が婚約者を伴って観覧に訪れた。どんなトリックも見破れると豪語する皇太子に促され、舞台に上がった庶民の話題の的の婚約者がソフィ(ジェシカ・ビール) だと気づいたアイゼンハイムは、一度は諦めた初恋の女性との再会に心が揺れる。


皇太子に招かれたアイゼンハイムは王宮でマジックを披露。次期皇帝の資質を皮肉ったアイゼンハイムの行為に、シャレが通じない高慢ちき皇太子は、アイゼンハイムを潰すようでこっぱち警部に命令。マジック好きでアイゼンハイムに好意的の警部も皇太子には逆らえず、劇場は閉鎖。ペンダントを持ち続けていたソフィとアイゼンハイムは互いの思いを確かめ合い、2人が密会していると知ってしまった警部は皇太子に報告。皇太子が交際相手に暴力を振るい、発覚を恐れて殺害した過去を知る警部は、アイゼンハイムに「夢を現実にしてはならない」と、ソフィから身を引くように説得するが止められない。しかも、アイゼンハイムが口座を解約し大金とともに“液体入りの瓶”をトランクに入れ、ソフィと会っていたと部下から報告を受け頭を抱える。アイゼンハイムはホームで会っていた老人に「彼女と先に行け。自分は全てが片付いてから向かう」と言っていたのだ。


皇太子邸を1人で訪れたソフィは、改めて結婚を拒否。ソフィとの婚姻でハンガリーを味方につけ皇帝を退陣させようと画策する皇太子は、彼女の顔をブン殴り激昂。殴りやがったな、このヒゲチョビン!! 皇太子をシカトして急ぎ足で馬小屋へ向かうソフィを皇太子が追いかけ、短い叫び声に続いて、突っ伏したまま動かないソフィを乗せた彼女の馬が駈けていく姿を召使いの男が見た。やりやがったな、このヒゲチョビン!!


血がべっとりついたソフィの馬だけが発見された翌日。川に浮いていたソフィの亡骸を捜索隊とともに駆け付けたアイゼンハイムが見つけ、哀しみに泣き崩れる。皇太子の犯行に違いないと警部に詰め寄るが、証拠がない。ソフィの主治医に呼ばれた警部は、彼女の衣類に挟まっていたルビーの欠片を手渡されると、切り裂かれた喉や爪の間を調べようとするが、遠慮するように言われてしまう。皇太子邸の馬小屋の干し草の中に、キラリと光る何かがあったが調べる事なく、やがて犯人が捕まった。気になるだろ、なんか光ってたんだから!!


哀しみに暮れていたアイゼンハイムは、小さな劇場を購入して謎の中国人スタッフを雇い入れ、最高傑作となるイリュージョンを発表。それは死者の幻影を呼び出すというものだった。いやいや、唐突に胡散臭い展開になってきた。触れる事はできないが確かにそこに存在し言葉を交わす死者を前に、アイゼンハイムの人気は絶大なものとなる。映写機を使ったトリックを考えた警部も、劇場内を歩き回る鮮明な死者の姿を再現できない。ていうか、現代でもそれ無理だから!!


やがてアイゼンハイムは、ステージ上にソフィの幻影を蘇らせた。出たー!! ウワサを聞いた皇太子は、全身くまなく変装し余計に怪しすぎる姿で劇場へ。その日もアイゼンハイムはソフィの幻影を呼び出し、彼女は「ここにいるある人に殺された」と話す。なんだその中途半端な内容は。名前を言え、名前を!! そして、犯人の名前は言わず「ペンダントがなくなっている」と言い残し、スーッと消えていく。なんだその不自然な会話は。が、しかし、劇場内で聞いていた皇太子は激しく動揺。警部にアイゼンハイムを逮捕するよう命令する。


そして冒頭の場面。
アイゼンハイムのショーが始まる。伸ばした手の先に、もわわわ〜んとステージ上に現れた幻影が形を成す直前、警部がステージへ駆け上がりアイゼンハイムの逮捕を告げる。ところが、アイゼンハイムには触れる事ができず、そのままスーッと消えてった。うそー!! 劇場内のどこにもアイゼンハイムの姿は見つからず、自宅兼作業場を捜索した警部は、1番興味をそそられたオレンジの木のネタ帳を見つけ開くが、中にはペンダントのカラクリが書かれたメモが1枚だけでガックリ。


しかし、幻影のソフィがペンダントがなくなっていたと言っていた事を思い出し、皇太子邸の馬小屋へ。干し草を探るとペンダントがでてきて、メモの通りに開き、若き日のアイゼンハイムの写真を見つける。そして、干し草の中にもう1つキラリと光るものが。エメラルドの宝石を拾い上げる警部。よく落とす犯人だ。馬の背で動かないまま屋敷を後にしたソフィを見た召使いが皇太子の剣を警部に手渡す。ルビーとエメラルドの飾りが取れていた。


警部が剣を調べさせたと知った皇太子は激怒。便宜を図るという申し出にも警部の心は変わらないと知り拳銃を向ける。皇太子が皇帝の退陣を企てていた事は知られており、皇帝の側近たちが皇太子邸へ。どうにもならないと悟り、皇太子は自らのこめかみを撃ち抜く。


辞職した警部に見知らぬ少年が封筒を手渡す。中にはオレンジの木のトリックが書かれていた。植木鉢の底に滑車が仕込んであって、幹がどんどん伸びていく仕掛け。なんだそりゃ!! 少年がアイゼンハイムに頼まれたと聞き警部が見渡すと、ポケットに入れてあったソフィのペンダントが消えており、変装したアイゼンハイムの姿が。追いかけるがホームで見失った警部に、「ソフィと先に行け。自分は全て片付いてから行く」とアイゼンハイムが老紳士に話していた記憶が蘇る。


アイゼンハイムがソフィに預けていたトランクに入っていた液体の瓶、ソフィの主治医(かつて大木とともに姿を消した老奇術師とホームにいた老紳士の1人3役)、晩餐会で皇太子の剣を触っていたアイゼンハイム、ソフィが殺された日に酔っていた皇太子、様々な出来事の断片が凡人警部の脳ミソをかけめぐる。


あの夜、皇太子邸を訪れたソフィは、皇太子のグラスに何かの薬を入れ、覚束ない足取りで馬小屋へ追いかけた皇太子は昏倒。ソフィは用意しておいた血液を皇太子の剣にふりかけ、叫び声を上げて馬の背に突っ伏して馬小屋を後にする。川に浮いていたソフィの死体を見つけたのはアイゼンハイムで、主治医だと名乗ったジジイが彼女の服についていたというルビーを警部に手渡した。その後、仮死状態だったソフィは息を吹き返したのではないか、と。なにひとつ証拠はなくとも、警部は全てがアイゼンハイムのイリュージョンだったと悟り笑みを洩らす。うっそ、全然気づかなかったよコンチクショー!!


明るい日差しの下、草原にポツーンと立つ小さな小屋へ向かってアイゼンハイムが歩いていく。馬の世話をしていたソフィが出迎える。おしまい。