悪臭大放出

8月13日の朝、目が覚めた瞬間から歯の激痛に見舞われ、最初歯だと思っていたのが、触ってみるとどうやら歯茎が震源地と確信。三十路も半ばを過ぎ、ついに恐怖の口腔菌大王襲来!!? 悪性の歯周病? 急性歯槽膿漏? しかも、時はお盆休み。歯科も連休だぜ、チキショー!!

そんなワケで、その後3日間は、朝から晩までの24時間体制で予断を許さない、今夜が峠でご家族呼んでくださいなほど痛かった。くー

で、待ちに待った連休明けの月曜日。コンサートチケットを取るが如く9時半きっかりに電話をかけ、受付の人に「朝から夜まで、何時でも行きますっ!!」と勢いよくお願いしたところ、連休のため予約がびっしりで、金曜日まで空いていないときた。なんてこった、金曜日なんて果てしなく遠いじゃないのー。

そんなに待てるか!! と歯茎が私に訴えかけてきたので「もう4日間も朝から晩まで何もしなくても激痛なんです〜〜」と消え入りそうな声で全力アピールしたのだが、「はぁ〜」と“お気の毒に”な気配が漂ってきただけで作戦失敗。くそー、他のとこへ行ってやるぜ、チキショー!! と喉まで出かかったものの「じゃ、そうしてください」と言われたら引っ込みがつかないので、金曜日でお願いする。

ところで、一日中の鈍い痛みが4日間も続いていたため、さぞかし体重も減ったのではないかと思えば、自分を励まし、脳ミソを騙し、歯茎をなだめすかしつつ、なんとしてでも食い続けていたおかげか・・・体重増量!!? なんで増えてるんだ。歯が痛いクセに体重が増えるほど食ってどーするか、私。いやもう、食欲、恐るべし。まったく何があっても腹は減るよ。

そして、ついに金曜日。これから長ーーーく治療を続けて行かなくなったらどうしよう〜とビビリつつ、歯と歯茎の隙間に棒を突っ込んで、歯茎の後退具合をチェック。取りあえず歯槽膿漏ではないらしく一安心。レントゲンの結果、神経を抜いて銀の冠(?)が完全に被っている歯の根元に膿が溜まっているので、それを取り除けばすっきりします、という簡単な治療で済むようだ。ふう。

・・・と、安心しているヒマなどなく、混んでいるせいか、神経がないからか、はたまた先生の気が短いのか、説明後「では、外しましょう〜」とすぐさま冠外しの削銀開始!!

グガガガガ、ガガガッ、ガガガッ、ガガガッ、ガガガッーー!!

先生、先生、ココロの準備がまだです〜〜、グガガガ、ガガガッ、先生、お構いなしだよ。

ガリガリッ、クコーー(バキューム)、ガガガッ、ガリガリッ、クコーー(バキューム)、

死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬーー!!

いや、神経はないので痛くはないのだが、削る音が脳ミソで炸裂し、脳裏に浮かぶ削られてる歯の映像(見たことない)がイメージ的に痛い。ガガガッ、ガリガリッ、クコー!! これだけでもう、身体は硬直、両手は開いて伸びきって、なんだかもう、冷凍庫で凍らされたらこんな感じ? なほど力が入る私。痛みを想像するあまり、唾液も出てきやしねえ。カチンカチンに固まった姿に、痛みを我慢していると思ったのか、先生が聞いてきた。

「痛いですか?」(そんなハズはないのだが・・・)
「れんれん、ひたくないれす」(ららららー、全然痛くないのよ、これが)
「・・・・・」(紛らわしいんだよ!! )

いやもう、申し訳ない。
そうこうしているうちに無事、銀の冠もポコンと外れ、ふぅ、やっとガリガリが終わりだ、と身体の力を抜いた瞬間、ぷーんと膿の匂いが漂ってきた。クサッ!!

先生や助手の人たちは紙マスクしているが、そんなモンじゃ防げないのではないかと思うほどの悪臭が立ちのぼり、口の中にオッサンの足が入ってる!!? なほどクサーッ!!

それからは神経を抜く作業と同じく、クルクルクルピッ、クルクルクルピッ、クルクルクルピッ、を繰り返す事数回。無事にクサイ膿を取り除き終わると、あんなに痛かった歯茎の痛みが唐突に消滅。恐るべし、 膿パワー!!

治療は最後までまったく痛みはなかったものの、口の中で工事現場してるような振動と恐怖の音で、待合室への扉を開けた時には思考停止のポロポロピー。ちょうど目が合った治療前の男児が、魂の抜けきった私の姿に、目玉が飛び出さんばかりにギョッ!!

ははは、大丈夫、大丈夫、ぜんっぜん痛くないから。いや、ホントだって。