クシャミ星人の侵略

父が風邪を引いたらしい。
熱を測ってみると、『39度5分』あると言っている。

おいおい、呑気に言ってる場合じゃないよ。

父『間違えた。29度5分だった』

アンタ、そりゃ死んでるよ。

父『うーん、35度9分か?』

か? じゃないだろう。結局平熱だよ。
うちの父はクシャミ10発体質で、ふぇふぇふぇ…と始まったが最後、1回や2回で終わったためしがない。ティッシュやタオルを求めて移動を初め、少しずつ位置を変えながらもクシャミ続け、だいたい10回は止まらない。

父のくしゃみが何回だろうが知ったこっちゃないのだが、相手がなかなか出ない電話のベルと一緒でついつい数えてしまう。

多分、侵略してきた異星人が、“こより”の姿をしており、しかも透明。地球人の鼻の中へ侵入して身体を乗っ取ろうと企んでるに違いない。全然知らない他人様でも、こういうクシャミが止まらない人達を見かけるので、予想以上に侵略が進んでいると思われる。恐るべしクシャミ星人。目的は何だ。ああ、侵略だっけ。

もう1人、我が一族の中でクシャミ星人にマークされているのが姉で、姉のくしゃみはなんと、「ほ、えふっ」だ。ふぇ、ふぇ、ふぇ…、ときて「ほ、えふっ」とくる。

クシャミが出る瞬間の口のカタチは「は」だと思うのだが、何故に「ほ」になる??
普通、『ほ』からは始まらんだろう。

カゼをひいた時などは「ほ、えふっ、ほ、えふっ、ほ、えふっ」。終わったと油断させて「ほぉぉぉ…、えふっ!!」

1撃必殺、クシャミ1発に全てを込めた時などは、片足を上げて全力で「ほーー、えふっ!!!」と、ほえふもデカイ。片足上げて「ほえふ」。そして、「くしょん」が「えふ」へと変貌する謎。

『ほ』から『えふ』まで間がある時などは、いきなり『えふっ!!!』と叫んでいるのでビックリだ。何故だ。何故「くしょん」が「えふ」になる?

姉がハクション大魔王だったら「ほえふ大魔王」になるところだった。

クシャミの常識をうち破った驚異のクシャミ。これはもう、クシャミ星人に乗っ取られてるとしか思えない。

こうして異星人の侵略は密かに進むのであった。