おかわり娘、出動

立川の駅ビルレストラン街にある、とんかつ屋「Kくら」が美味しい。
トンカツもそれなりに旨いが、チキンカツは肉汁まで旨い。一緒に付いてくる漬け物が、また素晴らしい。みそ汁は死ぬほどマズイので飲まない。

行く度にチキンカツばかり注文していたのだが、最近は火の通りを早くしようという魂胆か、バシバシ叩かれた、痛々しい姿になってしまった。仕出し弁当の中に入っている、くたびれて何の肉かも分からないわらじカツのような有様だ。

仕方がないので、先日はコロッケを注文してみた。で、運ばれてきたコロッケを食べ始めた途端、背後にぴったり貼り付いていた若い女性店員が、

『キャベツのおかわりはいかがですかぁ〜』

と、キャベツをこんもり乗せたザルを抱え聞いてきた。
キャベツとみそ汁と麦入りご飯は、おかわり自由なのだが、お前は、皿を見てから聞け。いま、食いはじめたばかりだろ。いやいや、こんなマニュアル店員を気にして、コロッケタイムを無駄にしちゃいかん。

丁重にお断りすると娘は定位置へ下がり待機姿勢へ。私はといえば、コロッケは2個しかないので、コロッケ、ご飯、キャベツ、ごはん、ご飯、ご飯、キャベツ、ご飯、漬け物、ご飯、コロッケ、ご飯と、配分を間違わないよう、箸の動きも目まぐるしい。

半分くらい食べた頃、さっきのキャベツ娘が、

『ご飯のおかわりはいかがですかぁ〜』

と、今度も愛想よく聞いてくる。ヒマなのか?、ヒマなのか!!?
ご飯は最初に山盛り入ったミニおひつをテーブルに置いていかれるので、おかわりしてる人を見かける事は滅多にない。蓋がしてあるからご飯の残り具合が分からないとはいえ、無くなったら呼ぶから、お前はそこで待っとれ!!

再度丁重にお断りすると娘は定位置へ下がり再び待機姿勢へ。私は再びコロッケ、ご飯、キャベツ、ご飯、ご飯、キャベツ、ご飯、漬け物、ご飯、コロッケ、ご飯とバリバリ食べる。コロッケも美味しい。残り3分の1くらいになり、今度からコロッケを注文する事にしよう、などと考えていると、さっきとは別の娘が来た。

『キャベツのおかわりはいかがですかぁ〜』

ブブーッ!! あんまり可笑しいので、思わず吹き出してしまった。ここは、わんこそば屋か。

必死に笑いを堪えながら、おかわり娘にお断りすると、隣の席の客に『キャベツのおかわりはいかがですかぁ〜』、壁際のテーブルの客に『キャベツのおかわりはいかがですかぁ〜』、反対側に回って『キャベツのおかわりはいかがですかぁ〜』と聞いて回っていた。
訂正、マッチ売りの少女かも知れん。
配り終わらなければ帰れないのか、何かに取り憑かれているのか、恐るべし、おかわり娘たち。

食べ終わって茶を飲んでいる時に、期待通りもう一度聞いてくれたので本日4度目のお断りをして、店を後にした。