排便仙人、降臨

いきなり言うのも何だが、便秘になった。
普段は毎朝きっちり迷わずつるーんと5秒で快便の私が、突然便秘になってしまったのだ。最初は、2日分くらいのウンコは溜めても良かろうと甘く考えていた。

食物繊維は良く聞くところだけど、ゴボウは臭い屁がトコロ構わず出て自分に迷惑なだけで、効果はいまひとつ。ちなみに今まで経験した中だと、ルッコラスカトールアタックは周囲にいる人間を、本州から海へと弾き飛ばすほどの威力なので注意されたし。

と、いうワケで、排便ストップとなって3日目。恐ろしい事に、便が出る気配のカケラもない。
そして、便詰まり4日目ともなると、唐突に腹回りが苦しくなってきた。しかも、便が出ないからと言って食欲が減退するワケもなく、秋が近づくせいかいつも以上に食べまくっていた量が、分かりやすいほどに腹が膨れてきた。

5日目。もう出さなきゃマズイだろ、私。しっかり働け、大腸!! 思いの丈を吐き出すのだ、肛門!!
私の気迫が大腸に伝わったのか、この日は気合いで1日分の便が出た。 が、腸の許容量を超える便をどこに収納しているのか、残り4日分の便たちはまだ、出口を求め、ミステリーゾーンを彷徨っている。

元々、毎晩ウンコマッサージは欠かさないのだが、とりあえず念入りにやってみる。これは、下腹部分を大腸に沿って時計回りに、ふん、ふん、と力を入れすぎず、呼吸に合わせながら押すというもの。“マニピュレーション”という小洒落た名前があるのだが、そんな覚えられない名前よりウンコマッサージにしなさい、と言いたい。って、誰に?

このマッサージは、翌朝に控えているウンチの感触も確かめられるのでオススメ。で、この日の感触は、固い、固いぞーーー!!!

まさに『ストロング便!! 』

翌朝、自分の腹を上から観察してみると、ビールっ腹のような、妊婦のような、と言ってもどちらの腹もナマで見た事はないが、ぷく〜とパンパンに膨らんでおり、我が腹ながら恐ろしい光景と化してきた。屁のクサさも尋常じゃない。でも大丈夫、今日はストロングが出るからっ!!

ところが、待てどくらせど出る気配なし。あの合図待ちだったストロング便はどこにー!!? どうやら動く気はサラサラないようで、下腹の同じ位置に居座っている。何してんだ、お前は!! とっとと出てこい!! ああー、ところてんのように大腸の入口から、全便を押しだしてしまいたいー!!

その夜。ううぅ〜腹が重苦しい〜、と思い目を開けると、私の腹に手をかざす小汚い老人の姿が!! 誰だジジイ!! ジジイの手の平から何やらビームが出て、下腹がウネウネと激しく波打ってるではないか!!?

も、もしや、あなた様は“排便仙人”

私の心の叫びを聞いて下界へ降りてきて下さったのですね。驚異の蠕動運動で苦しかった腹はフッと軽くなり、ピコンピコン、ウンチ警報発令!! 肛門にウンチの圧力がきた、きた、きたー!!

ここで、パチッと目が覚めた。 夢かよ!!

さすがだよ、排便仙人。ありがとう、排便仙人!!
とにかく、布団を蹴り飛ばしトイレへゴー!! さすがだよ、排便仙人。ありがとう、排便仙人!!

・・・が、しかーし、排便仙人も腸が大暴れしていたのも夢なので、まったく出なかった。出ねえじゃねーか、排便仙人!!

深夜3時、意気消沈で布団へ戻り、遂に6日目に突入。さすがに切羽詰まってくると、ウンコマッサージも真剣になってきた。ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、ふん、押すべし、押すべし、押すべし!!

仕方ない。このまま便と共に生きて行こうと決意も新たに目覚めた8日目の朝。栓を弾いたように、唐突にストロングがポロ〜ンと出た。出たか!!

パンパカパーン、イヤッホウ〜!!