1月鑑賞の映画感想

■『ドラッグ・ウォー 毒戦』-毒戦/Drug War- ★★★★★


覚せい剤密造工場の爆発事故から、ひとり逃げた男テンミン(ルイス・クー) が病院へ運び込まれた。中国公安警察のジャン警部(スン・ホンレイ) は、テンミンの携帯電話へ執拗に掛けてくる非通知を調べ、別の街の刑事2人が追跡しているトラック運転手からだと知る。男は覚せい剤の原料を運んでいたのだ。


中国刑法で死刑を免れないテンミンは、ある情報と引き換えにジャン警部へ命乞いを始めた。互いに顔を知らない取引相手を引き合わせる、約束の時間が迫っていたのだ。急遽、貿易商の男になりすましたジャン警部の作戦は成功したかに思えたが、テンミンが隠していた姿を見せない本当の黒幕がいると聞き出す。ジャン警部の窮地を救い、仲間たちを裏切り、テンミンは警察への協力を続ける。彼を信用できないまま同行させ、黒幕との取引が始まるが・・・。2013年、ジョニー・トー監督。


■『奪命金』-Life Without Principle- (1週間限定上映) ★★★★

隣人を殺害し立て篭る老人の説得に当たる、香港警察のチョン警部補(リッチー・レン) は、妻に呼び出されマンションの購入を急かされる。金融商品の営業ノルマに追われる銀行員のテレサ(デニス・ホー) は、大口預金者の金貸し屋に断られ、堅実な中年女性にハイリスクの投資信託を売ってしまう。お人好しのヤクザのパンサー(ラウ・チンワン) は、喧嘩っ早い兄貴分の保釈金を工面するため奔走していた。ギリシャ債務危機による世界的混乱が香港に及び、彼らを取り巻く人々が窮地に追い込まれた時、思いも寄らない犯罪に巻き込まれていく・・・。2011年、ジョニー・トー監督、106分。


邦題の「奪命金」と書いて何と読む!? 「だつめいきん」でした。そのまんまかよ!! クライマックスの銃撃戦に惚れた「エグザイル/絆」「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」のジョニー・トー監督の新作公開前の1週間限定上映。ギリシャショックに端を発した市場の混乱により、それぞれの身に降り掛かる窮地への対応を迫られる。ピタゴラスイッチ的不運の連鎖のサスペンスというより、自ら飛び込む型と巻き込まれ型のとんだ災難という感じで。なりふり構わず本性をさらけ出す姿が滑稽で身につまされる。ありがちな展開を予想させる予告編はかなり上手い。バーコードハゲの金貸し屋と青年の駐車場バトルと、クライマックスの車中のシーンに笑いっぱなし。

エグザイル/絆 スタンダード・エディション [DVD]

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冷たい雨に撃て、約束の銃弾を [DVD]

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絶賛お勧め中!!


■『エンダーのゲーム』★★★★


高度な文明を持つ惑星外昆虫型生命体フォーミックの侵攻を受けた地球は、13歳の戦士メイザー・ラッカムの犠牲により、からくも人類絶滅の危機を免れた。それから50年、人口増加により第2子までの少子化政策が敷かれていたが、10歳の少年エンダー(エイサ・バターフィールド) は、政府が特別に出産を許可した、禁断のサード(第3子) だった。指揮官候補から落とされた優秀な兄と姉を超え、宇宙戦争を終わらせる使命をもって生まれたのだ。


ゲームセンスに優れた新世代[ニューカインド] が、迫り来るフォーミックの第二次侵攻に勝利するとし、世界中から集められた選りすぐりの天才児たちが、国際艦隊の養成機関で訓練を開始する。非凡な才能を見せるエンダーは嫉妬と妬みで孤立するが、高い戦闘能力を持つビーンや、成績優秀のアーライの信頼を得て友となる。指揮官となる少年の選出が急務のハイラム・グラッフ大佐(ハリソン・フォード) は、更なるエリートが選ばれるバトル・スクールへエンダーを移す。


配属されたサラマンダー隊で、射撃指導をしてくれた少女ペトラ(ヘイリー・スタインフェルド) と心を通わせたエンダーだったが、彼を脅威と感じ排除しようとするチビ隊長との諍いにより、自分の内にある兄と同じ暴力性に恐怖する。しかし課せられた使命からは逃れられず、最終訓練候補地である惑星エロスへ送られる。そこで待っていたある人物(ベン・キングズレー) がエンダーを導く。指揮官の最終試験の迫るエンダーは、共に訓練した仲間たちを率い、艦隊シミュレーション演習を続けていく。過密なスケジュールに思考が麻痺し、より直感的な戦術は研ぎすまされていくが・・・。


エンダーのバーチャル操作の反応反射の恐ろしく速い事!! 「マイノリティー・リポート」の時のトム・クルーズより一段と速くなってる。さすが、ニューカインド!! 映画の原作となる長編版が刊行されたのが1985年。多くの作品に影響を与えたとされる、この超有名小説を未読の私は、クライマックスで見事に驚いた。エンダーのゲームなんですけど!!!!!!!! ビックリマーク8個くらいの衝撃。だからゲーム世代の天才児が選ばれたのだと思い知らされる。各キャラクターの背景と訓練が省略されている感じるくらいで、2時間でうまくまとまっていた。ベン・キングズレーの出番がもう少し欲しい。


■『大脱出』-Escape Plan- ★★★


全米各地の刑務所の警備の不備を指摘するB&Cセキュリティ社へ、CIAの仕事が舞い込む。場所を含め一切の情報が明かされていない、その存在すら知られていない、民間運営の極秘刑務所へ潜入してほしいというのだ。外からサポートする仲間たちが懸念を示す中、脱獄のスペシャリスト・ブレスリン(スタローン) は仕事を引き受ける。


仲間との連絡手段を断たれ、拉致されたブレスリンは独房で意識を取り戻す。そこは、冷徹な刑務所長ホブス(ジム・カヴィーゼル) が、ブレスリンの著作を参考につくり上げた、“墓場”と呼ばれる究極の監獄だった。何者かの罠に嵌められたと悟ったブレスリンは、所長が欲しがる情報を握る囚人ロットマイヤー(シュワルツェネッガー)、イスラム系囚人のボス・ジャベド(ファラン・タヒール) を仲間に引き込み、医師カイリー(サム・ニール) の協力を得ようとするが・・・。ミカエル・ハフストローム監督、116分。


スタローンの脱獄スペシャリストぶりを見せつける冒頭のシーンがスゴイ。懲罰隔離房にぶち込まれたスタローンが、食事用の穴から手を出してキーパッドを押して扉を解錠、初めて触れるであろうアレやコレらを難なく無効にし脱獄する。どんだけゆるい警備なんだ。ていうか、中から開けられる扉って何だ。脱獄スペシャリストじゃなくても逃げるだろ!!


というワケで、堂々と大雑把なオープニングで掴みはオッケー。スタローン&シュワルシェネッガーの共演とくれば、それはもう必見。ハナから期待値が低いだけに、評価は甘口になるというもの。邪魔者を生かさず殺さず、社会から消し去る極秘の刑務所。大金と引き換えに送り込まれた奴らとは何者なのか。うーん、他の刑務所と何ら変わらない極悪人ヅラの平凡な囚人たち。「ブリズン・ブレイク」のティーバックみたいに、面白い人たちに入っていて欲しい。ホブス所長の右腕の看守(ヴィニー・ジョーンズ) も、何かやってくれそうだったが雰囲気だけ。


レスリンの著書にあった警備の弱点と思われる要素を、全て取り除いた究極のハイテク監獄。独房は高床式の全面ガラス張り。5つの独房が放射状に接しているため死角がなく、ウンコしてる姿も丸見え。床も壁も天井にも向こう側がない。細工を施すにも材料が手に入らない。囚人服にもハイテクな仕掛けがある。偽りの素性で入獄したブレスリンは、その本を書いたの俺、俺だから!! と思ったか思わないか。ここからどう逃げ出すのか。


なんと、厳重なのはスケスケの独房だけ。囚人同士が自由に会話できる場があり、必要なモノも辛うじて手に入る。まるで逃げられないような設定が、後だし続出で逃げ出せそうな状況に変わっていく。ちゃんと本を読んだのか、所長!! 「檻の中の眠り」のゴル○13なら簡単に脱獄しそうだ。


スタローンが脱出を試みる中盤はハラハラしたし、なかなか面白い設定だったと思う。ところが!! 鑑賞後にCMで流れていた予告編を観てびっくり。唯一の興味をそそる要素である刑務所について、完全にネタバレしてる。アホか!! それを見せるか!! 配給会社のバカちんが!! クライマックスのシュワちゃんの目ヂカラに大受け。プチ豪華の脇役たちの活躍がなく勿体ない。サム・ニールなどそれだけ!? と驚く。B&Cセキュリティ社CEO役で、L&Oクリミナル・インテントの凄腕変人刑事ゴーレンがアホ丸出しでチョイ出演。