5月鑑賞の映画感想

■『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』 -Bridesmaids- ★★★★★(万人向けではないです)


[ストーリー] 30代の独身アニー(クリステン・ウィグ) は、開業した手作りケーキ店が潰れ、オンボロの車に乗り、シェアしている家賃も払えない。彼氏には捨てられ、結婚する気のない男(イケメンの陽気なバカ) の都合のいい女も止められず、恋も仕事も八方塞がりの日々。心の拠り所だった幼なじみで大親友のリリアンの結婚が決まり、アニーはメイド・オブ・オナー(ブライズメイドのまとめ役) を任される。


全員が初対面の他の4人のブライズメイド(花嫁介添人) は、新郎の上司の妻で超セレブ美人のヘレン(ローズ・バーン)、新郎の妹で行動が予測不可能なメーガン(メリッサ・マッカーシー)、3人の息子に手を焼く女盛りのリタ、新婚ホヤホヤのベッカという曲者揃い。親友のためにアニーは最高のウェディングプランを練るが、マイペースなヘレンのコネと財力に圧倒され、不運も重なり全てが裏目に出てしまう。そして結婚式当日。大事件が起こり、アニーはヘレンと協力し合うが・・・。ポール・フェイグ監督、125分。


[コメント] ブライズメイズの打ち合わせの昼食会、ベガスへのバチェラーパーティ、5人のお揃いのドレス購入(なんと1着8百ドル!!)、他にもガーデンパーティなんかもあって、なんて金がかかるんだ。ていうか、なんてめんどくさいんだ。自分の問題で周囲を振り回し、親友との仲もこじれ、毒を吐き大切な場を凍り付かせてしまうアニー。女性版「ハングオーバー」というより、「サンシャイン・クリーニング」に、お下劣ネタをてんこ盛りにしたような感じ。足踏みしていたアニーが勇気を出して一歩を踏み出すまでのストーリー。


中盤まではゲラゲラと笑って、高い自己評価と被害者意識で意地になるアニーの姿が身につまされて、不意をつく「キャスト・アウェイ」の映像にホロリときて(ウィルソ〜ン!! )、万事解決の爽やかなエンディング。腸が煮えくりかえるような意地悪な女性は出てこない。クリンゴン人ばりの眉間から額にかけての皺が怖すぎるヘレンが美人というのが相当ビミョー(失礼)。アニーとメーガンは独身なので続編がありそう。「マッドメン」のドンがイケメンのバカ男役でノンクレジット出演。個人的には今年ナンバー1のヒット。


■『捜査官X』 -武侠/WU XIA- ★★★★


[ストーリー] 1917年、雲南省の山奥の小さな村。10年前に身重の妻タユー(タン・ウェイ) を残し夫が失踪した後、ふらりと村へ現れ彼女と再婚した平凡で温厚な製紙職人ジンシー(ドニー・イエン)。その後、もう1人息子が生まれ、一家は貧しいながらも穏やかな暮らしを続けていた。


ある日、指名手配中の凶悪犯イエンとその相棒が、老夫婦が営む両替所に強盗に入る。その場に居合わせたジンシーは必死で応戦し、いくつかの偶然が重なり打ち所の悪かった彼らを死なせてしまう。街からやって来た警察はジンシーの正当防衛だと判断し罪に問わず、無法者を退治した彼を村は英雄扱いする。なぜ平凡な製紙職人の男が、武術に長けた強盗を倒せたのか。ジンシーは本当に平凡な男なのか。意図的に彼らを殺したのではないか。風変わりな天才捜査官シュウ(金城武) だけは彼に疑念を抱き、素性を調査させるとともに、自らは村へ残って事件の真相を探っていくが・・・。ピーター・チャン監督、115分。


[コメント] ドニー・イエンが平凡な男のワケがないのだが、正体を暴こうとする捜査官シュウの持論による無茶な攻撃が「平凡な男」ジンシーに襲いかかる。金城武が予想外に面白い。愚鈍を装い強盗の攻撃を紙一重で受け流す冒頭のシーン、シュウの脳内推理により再現される完璧なアクション、二刀流の女暗殺者(クララ・ウェイ) との「牛」を交えた狭い屋内対決、クライマックスの残忍なマスター(「片腕ドラゴン」のジミー・ウォング) との死闘、果たしてジンシーは本当に「平凡な男」なのか。が、しかし!! 超絶アクションのドニー・イエンよりも、極悪非道のハゲオヤジよりも、歌っただけかよ! のジンシーの強面兄よりも、誰よりも強かったのは、武術家ではないある人物。いやはや、誰がこのオチを予想できようか。予想しなくていいのか。


捜査官は真相が分かっている。犯人も知られている事が分かってる。橋の上、森の中で静かに言葉を交わす2人の間合いが絶妙。生と死のどちらへ転ぶか分からない緊張感にどきどきする。麦わら帽子を被り丸メガネをかけ飄々としたシュウは、ありがちな設定とシリアスなテーマを上手く動かす、ユニークなキャラクターを生み出した。何とかしてシリーズ化しないものか。あらゆる分野に精通したシュウの丁寧な推理から一転する後半、ドニー・イエンのアクションが炸裂。ストーリーもアクションも堪能できる。かなりピントのズレた天然男を演じても金城武は美しい。“2階の屋根の上”で草をはむ牛の姿の素敵さには完璧ノックアウト。後、チ〜ン♪と澄んだ音が1回鳴るこの目覚ましでは自分は起きられないな、と2度ツッコミを入れた。


■『テルマエ・ロマエ』 ★★★☆


[ストーリー] 古代ローマ帝国。実直で誇り高き浴場設計技師ルシウス(阿部寛) は、テルマエ(公衆浴場) で急流に呑み込まれ、現代日本の銭湯へタイムスリップしてしまう。ローマより遥かに進んだ機能的な浴場設備に衝撃を受けるルシウス。彼は古代ローマ現代日本(の風呂限定) を幾度となくタイムスリップし、平たい顔の民族(日本人) たちの風呂文化をテルマエに再現していく。ルシウスの斬新な浴場は評判となり、時の皇帝ハドリアヌス(市村正親) から、「ヴィラ・アドリアーナ(別荘)」の浴場の設計を任される。


ルシウスは漫画家志望の山越真実(上戸彩)、彼女の親で温泉旅館経営者(キムラ緑子笹野高史)、その宿の湯治客たち(竹内力など) から温泉の効能や活用法を学び、古代ローマではハドリアヌスの側近アントニヌス(宍戸開) と信頼関係を築く。しかし、ハドリアヌスに次期皇帝ケイオニウス(北村一樹) の為のテルマエ設計を命じられた事から、歴史が変わろうとしていた・・・。武内英樹監督、108分。


[コメント] 原作未読、テレビアニメのみ鑑賞。アニメとほぼ同じ展開だった前半はかなり面白い。映像化大成功。冒頭の銭湯のシーンに出てくる「ガイジンさ〜ん」の丸顔のオジイちゃんの表情が素敵すぎるので、予告篇必見。このオジイちゃんは「輝け! 2012年のチョイ役男優賞」に決まり。この平たい顔族のご老人たちの中に居れば、阿部寛も堂々の古代ローマ人。ホントか。相当頑張ったんだろうなぁと伺わせる肉体美が目を奪う。設定を変えて出番が多い上戸彩と、後半の強引な展開が酷い。前半5点、後半2点、阿部ちゃん5点、他俳優4点、上戸彩マイナス5点、締めて3.5点。どんな計算だ。

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)

■『バトルシップ』-Battleship- ★★
■『タイタンの逆襲 2D字幕版』-Wrath of the Titans- ★★★☆
■『ジョン・カーター 2D字幕版』-John Carter- ★★
■『ドライヴ』 -Drive- ★★★★
■『アーティスト』-The Artist- ★★★★☆
園子温監督特集上映『冷たい熱帯魚  ★★★★★