めいけん? ビンゴ
甥のふーちゃんが幼稚園に通っていた頃、月々購入していた絵本があるのだが、その中の1冊が非常に面白い。
シートン動物記 『めいけんビンゴ』
話はシートンが近所の名犬の子供を譲り受けるところから。で、その子犬の名前がビンゴ。ほんの数行で成長し、雌牛を呼び集める担当になったビンゴは、この仕事が気に入り過ぎて、シートンが頼みもしないのに雌牛を呼び集めてしまうはしゃぎぶり。しまいには1日10回も呼び集め、疲れた雌牛は、乳が出なくなってしまったのだ。
『ビンゴ、お前には頼むのは、もうまっぴらだよ!!』
いきなり名犬とはほど遠い出だしのビンゴ。これしか仕事がないのに、まっぴらされるとは、この薄い絵本の中でどう挽回するのか予想もつかない。
別の土地で暮らす事になったシートンは、知人にビンゴを譲り2年後に戻って来る。そこへ、森の中でコヨーテの罠に足を挟まれたビンゴが、仕掛けの木ごと引きずって家に帰って来た。ビンゴはコヨーテのように肉を好むため、罠に掛かってしまったのだ。
なにやってんだ、ビンゴ。2年の間にますます名犬から遠ざかってるぞ。
暴れるビンゴに今の飼い主が近づけず、シートンは元飼い主のワタシに任せとけ!! と近づく。
『がるるるるるるるるー!!!!!』
アンタ、忘れられてるよ。
ワタシを忘れたのかぁぁぁぁ、と強引なシートンに、唐突に思い出したビンゴはおとなしくなり、無事に罠は外される。名犬の兆し、今だ見えず。
戻って来てからのシートンは、家畜を殺すコヨーテの罠を仕掛け、お金を貰って生活していたが、ある日、罠をセットしスパナを放り投げたところで、『ガシャーン』と右手が挟まれてしまう。
アンタ、自分で今仕掛けたばかりの罠に挟まってどーする。
そんな一大事な状況にもシートンは動じず、「スパナで罠を外せばいいのだ」と落ち着いたご様子。おいおい、さっき放り投げてたよ。
『ハッ!! スパナはさっき放り投げたんだった!!』
さすがビンゴの元飼い主だけあって、大丈夫、大丈夫、足で引き寄せればいいんじゃないかと、シートンがウネウネと足を伸ばす。
『ガシャーン!!』
なんと、過去に仕掛けた罠に、左足まで挟まってしまった。
ビンゴどころか、もはやシートンもバカとしか思えん。
『ああ、なんて私はうっかり者なんだ』
さすが後世に名を残す男、シートン。うっかりも命がけだ。
夜になり、シートンの周辺にはコヨーテがうじゃうじゃ集まってきた。どうなる、シートン!! このシートン動物記未完の危機に、颯爽とビンゴが駆けてきた。ビンゴはコヨーテどもを蹴散らし追い払うと、シートンの指示通り、スパナをシートンの元にくわえて来る。たった2ページの間に、名犬になってるではないか!!
が、ここで話は終わらない。
相変わらず肉好きなビンゴは、コヨーテ対策の毒を塗った肉を食べてしまうのだ。コラ!! 危険を察知しろ。そして、ビンゴは毒に苦しみながら、今の飼い主の所ではなくシートンの家へ向かう。
ここで泣けるエンディングだと思ったら大間違い。
シートンはその晩、狩りに行っていて留守なのだ。
『いないのかよ!! 』 (ビンゴ 心の声)
ビンゴがシートン家のドアの外で息絶えている所へ、シートンが戻ってきておしまい。
誰もが名前くらいは知っているシートンの自伝で、半分くらいは本当の事らしい。半分ってトコが微妙で、うっかり者の自分や、ビンゴの話のどこまでが実際に起こったのか気になる所だ。
結局、ビンゴは名犬だったのか、バカ犬だったのか。名作絵本なので機会があったら読んでみよう。